早川書房「三体」 劉慈欣著 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 って本読みました。
全5冊の1冊目を読み終えて、すごく面白くて早く全部読み終えたい気持ちです。
でも読むのは大変でした。かなり集中して読まないと何の話してるのかすぐ分からなくなる難しくて油断できない本でした。
しかも400ページ以上あるし、密度もすごい。
さらに私は中国の文学をまともに読むのは初めてで、まず人名を覚えるのとか世界観を把握するのとかに手こずったのですが、でもそれ自体も新鮮で楽しかったりもしました。
たぶん主人公は汪淼(ワン・ミャオ)っていう名のおじさん。でも汪も淼も読めねえしどう漢字を出しゃいいのかもさっぱり。この漢字はアマゾンの商品ページからコピペしました。
あ、汪は「おう」で変換できました。淼は「びょう」と読むらしいですが環境依存文字みたいで、完全に未知の漢字です。
汪は「王」、淼はなんか「森」ってイメージなので、頭が勝手に「おうもり」って読んでしまったのですが、でも別に頭の中でだけならどう読もうと勝手なので、そのイメージで最後まで読みました。
もう一人の主人公っぽい葉文潔(イエ・ウェンジエ)って名のおばあさんは三文字とも日本でも馴染みのある漢字なので、こっちは割とすんなり頭に入ってきます。素直に「ぶんけつ」って読みました。
私は普段本読んでて、登場人物の名前はカタカナなら頭に入りやすいので、これも文中で「ワン」とか「ウェンジェ」って書かれてたらそれを受け入れてたと思うのですが、中国の漢字があると戸惑って、勝手に変な読み方をしてしまい、それが自分で新鮮でした。
ちなみに文潔はおばあさんというよりも、彼女の少女時代からの現在までの人生まるごとがこの小説の物語でもありました。圧巻でした。
なんか、中国って、表現とか思想とかがアレな国だから「そんな国の小説なんて」と、忌避感も最初はあって、すごいって評判が無かったら読むことは無かったと思います。
でもその忌避感を上回る期待感もあって、試しにと読んでみたら、圧巻だったわけです。
しかも本当に「中国ならでは」「中国だからこそ」って世界観で、非常~に納得しました。これは中国以外の国では成立しない物語だわ。
まず冒頭が1967年の文化大革命。少女だった文潔はそれにひどく心を傷つけられます。私は中国の社会的事情とかも無知なので、文革が物語に出たことだけでも驚きでした。
(調べてみたら今の中国共産党的には文革を批判的に描写するのはOKみたいですね)
(でも今の主席とか天安門事件とかを描写するのは絶対不可能でしょうから結局「中国はアレな国」って印象は変わりませんけど)
(そこは今は置いときます)
で、文潔は全人類へ(「中国へ」ではないところがポイント)の失望を内心に抱えたまま大人となり有能な科学者となり、務めてる軍レーダー基地で、宇宙に向けて光速でメッセージを送る方法を発明して実行できてしまった、と。
そして地球から最も近い距離(4光年)にあるアルファケンタウリ太陽系にまで(片道4年かけて)届き、そこにいる異星人「三体人」が地球の存在を知ってしまう、と。
三体世界は過酷なので、彼らは喉から手が出るほど地球が欲しい、と。
三体人と、地球にいる文潔含む「人類に絶望した地球人の集団」が手を組んで侵略計画を開始する、と。
宇宙船だと地球に行くのに400年かかるけど、分子一粒よりも遙かに小さい陽子だけならすぐに送れる、と。
その陽子は三体文明の超テクノロジーのロボットだ、と。それが地球にやってきた、と。
こうあらすじを書くと大雑把ですが、私は読んでて、汪淼の周囲で不可解な事件が起きてその謎が解けていく過程とか、地球人と三体人がお互いに異星人の存在を知っていく過程とか、めちゃめちゃ面白かったです。超すごいと思いました。
これらの設定、「宇宙にメッセージが発信できる」「アルファケンタウリに異星人がいる」「そこは三体問題に苦しむ世界である」「スーパーロボットの陽子」などなどは、現実的な科学とか事実とかとはかけ離れてて、SFマニアにとっては荒唐無稽に感じるらしいのですが、私にとっては超面白いSF世界です。天才です!
そしてその超科学異星人文明と、文革以降の中国の世界観、文潔の人生とが、密接に絡み合ってて感心しまくりでした。
一点だけ、私でも「ここは粗いなあ~」と思ったのは、「人類に絶望した地球人の集団(地球三体協会)」が組織を作って活動するには莫大な資金が必要なのですが、その問題を「ちょうど莫大な資金を持ってる人が仲間になった」って展開で解決させてるところです。都合いい~。
それはともかく私は文句無しに圧巻でした。
特に読んでて思ったのは「これは一体どういう物語なの?」ってのは半分以上読み進めても分からなかったのですが、分からなくても面白くて惹き込まれたことでした。
読んでる途中は汪淼を襲ったゴーストカウントダウンとかが何のことか分からないし、三体人とかいう宇宙人が本当にいるのかすら不明だったのですが、分からないままでも汪淼が恐怖する緊迫感とか、地球三体協会の怪しいゲームとか政治劇とかがそれだけで面白かったです。
この三体は全5冊。(5巻ではなく2巻と3巻が上下分けされてる変な構成です)
最初のたった1冊目だけで凄くて、これから4冊がどんな物語になるか想像も出来なくて楽しみです。
全5冊はもう1時間のドラマ100話ぶんくらいの密度があるんじゃないですか?
続きを読まねば。
ところで、陽子のロボットの名前は、智子(ソフォン)って名前ですが、ここも私は日本語的に「ともこ」って読んでしまいます。
そうなると陽子も「ようし」ではなく「ようこ」って気がしてきて、なんかどうしても「女の子のロボット」をイメージしてしまいます。身長10^-15mの女の子。