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トマトイプーのリコピン感想 これはもしかして「なかったことにする」のをなかったことにするの?

世の中の漫画家が、一度以前に描いたことを「なかったことにする」というのは珍しいことではありません。キャラデザをちょっと修正するとか、矛盾する設定や言動を作中でもう本当に黙殺してしまうとか。

 

中には「ちょっと修正」どころではなく一度何ページも何話も執筆したものを大幅にリセットしてしまうような作品もあります。近年の例では「ワンパンマン」や「だれでも抱けるキミが好き」とかでありましたし、何より「トマトイプーのリコピン」でも一度それをやってるんです。

 

するのは作者の自由です。ただそういうことがあると読者は困惑します。そして困惑した上でその作品のリセット後の内容を受け入れて購読を続けるか、受け入れるのをやめて見限るかもまた読者の自由です。

 

私はリコピンに関しては受け入れて改変後の作品も割り切って楽しんで読み続けてきたわけですが。

 

しかし最近のリコピンでは、作者大石浩二は、そうやって自分が過去に一度なかったことにした設定を今になって拾い直してます。

 

はあ?作者何考えてんの~???

 

私は長年漫画ってものを読んでて、というか漫画以外の小説や映画とかでもそんなことをしようとした人を知りません。あまりにも前代未聞で呆れかえります。

 

しかし、そのことが、すごく面白いです。

 

私は大石に「何考えてんの?」と呆れるとともに拍手を送りたい気分です。

 

 

 

さて。

 

もともと「トマトイプーのリコピン」は週刊少年ジャンプの本誌に連載されてましたが、WEB漫画のジャンプ+に移籍した作品です。

 

移籍した理由は大石の腰痛などなどの健康問題だそうで、不人気だったら移籍以前の打ち切りになってただろうからそれは本当なのだろうし、今現に移籍後も連載が続いてるってことは(大人気作品ってほどではなさそうだとは感じてますが)人気は維持できてるんだろうと思います。

 

で、その移籍のときに「なかったことにする」をやってます。リコピンは。

 

 

移籍前の本誌連載ではめめちゃんのママはすでに亡くなってるという設定を匂わせてたのですが、移籍後ではママが普通に登場してきて、つまりママが死んでた設定はなかったこととなり、WEB移籍によって大石が言うところのβ世界線となりました。

 

 

もうずいぶん前の2018年ごろのことでした。私はこのときも唖然としつつも笑って受け入れました。

 

そしてその後も移籍後作「トマトイプーのリコピン」は普通に連載が続きました。

 

で、2024年の8月ごろに、ママの生死リセットとは別の、ママは昔キュートピアに行ったことがあるらしいという伏線に触れる話がありました。

 

 

で、このときは私は「もしかしてまとめに入ってる?」とちょっとドキッとしながらも普通に読みました。普通の伏線回収だと思いました。

 

 

しかしママはめめちゃん達に説明するのを逃げました。私は「おいおい伏線回収すると見せかけて引っ張んのかよ」と若干落胆しつつ、これも普通に読みました。

 

そして2024年11月になってようやくママが説明してくれる話がやってきました。

 

 

その内容が驚くべきものでした。マジでガチで「作者何考えてんの?」でした。

 

 

え~、端的に言えば、このリコピンの世界観では、あらゆる命や森羅万象はみんな常にあらゆる並行世界を行き来してるんだけど、みんなそれを関知することはなく、ママだけは幼い頃死にかけたせいでそれを関知する能力を得たと。

 

 

キュートピアも並行世界の一つであり、ママはそこで千代田区とキュートピアを行き来する技術を手に入れたと。

 

 

これはこれでキュートピアの謎が判明する立派な伏線回収なわけですが、問題は説明の中の並行世界の一つです。

 

 

「あたし自身が危険な目にあう世界もあった」んじゃん!その世界線では死んだんじゃん!本誌のα世界線なんじゃん!

 

 

ここは断じて伏線回収ではありません。作者大石はわざわざ一度なかったことにした設定の伏線回収をわざわざ自ら蒸し返してやってるんです。

 

つまりは大石は「なかったことにした」ことを「なかったことにした」ってこと?

 

こんなことする作家初めて見ました。

 

 

 

うーむ、これは後付け回収の一種なんでしょうか?

 

漫画家が、過去に一度出した不自然な場面・何の意味も無い場面を後付けで納得のいく設定に仕上げるってことはたまにあります。

 

例えば「進撃の巨人」で有名なセリフ「なんの成果も!得られませんでした!」と言った人は、当初は何の構想もなく何の意味も無いキャラだったのですが、作者諌山創は彼を後付けで意味のある人物ってことに仕立て直すことができたと後に明かしました。

 

今回大石がやったことはそれに近いようなことなんでしょうか?

 

やっぱりもしかしてものすごい前代未聞なことをやったんじゃないの???

 

 

分かりません。私が大げさにとらえてるだけなのかもしれません。

 

しかし、今回明かされた事実は真面目に考えれば考えるほど深い事実です。

 

本誌のαめめちゃんと+のβめめちゃんは別人で、ママだけがどっちの世界線でも本人……いや違うか、どの並行世界の人物も自覚ができないだけで全て同一人物で、ママだけが別の世界だと自覚できてるわけで……いやそれも少し違う、αめめちゃんはママが死んだあとの世界の子だからママはもうそこには行けなくてママの能力から切り離された言わば完全に見放された世界の子です……。

 

ひええ、これはかなりのSFです。

 

ちょっともうどんな感情でリコピンを読んでいいか分かりません。

 

でも、分からなくて別にいいんだと思います。私はこのことに笑ってて大いに賞賛したいと思ってるんですから、そんな感情で読めばいいんです。

 

 

 

 

 

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