アンデッドアンラック最終回感想　リップの結婚以外は全部良かった

ついに完結。週刊少年ジャンプで戸塚慶文が連載してた「アンデッドアンラック」。本当に感心するところの多い素晴らしい漫画でした。

最後のほうは駆け足って印象もありましたが、それでも破綻や取りこぼしのようなものは見当たらなくて見事な物語の締め方だったと思います。

私自身は実はこの漫画の全ての情報がしっかり頭に入ってる自信は無いのですが、仲間の否定能力の救済、クエスト、神と絶対理、そもそもこの世界はなんなのかの謎、全ての問題をちゃんと消化したように見えました。

まー、アンディと風子の愛の問題に関しては、まー、まー、なんつうの、もちろんセックスシーンそのものを描けとは思わないものの、全ての問題が解決してお互いにただの人間同士として触れ合える幸せを噛み締めるシーンはちょっとあっても良かったのにって気持ちはあります。

が、二人の絆は物語の過程で既に揺るがないものとなったので、もろもろすっ飛ばしての結婚式で最終回ってことに納得いかないとまでは思いません。これでまー妥当だと思います。

最終回の扉絵も良かったです。風子がタチアナにコルセット締めを食らってるのは以前のネタを拾ってるからで、この漫画ってちょっとしたところで、背景の小さい絵とかで、過去の要素を回収する絵や言葉がちょいちょいあって、きめ細やかなフォローに満ちてたのも印象的でした。

で、この結末に至るまでのストーリーもお見事だったと思います。この漫画はもはやループ前に悲惨だった登場人物をループ後の世界で一人一人救う物語が主題だったって気すらします。

仲間たちを、ループ前ではすぐ消えたキャラをも、ステレオタイプな悪党だったキャラをも、大して重要でなかったキャラをも、ループ後では、学校だのアイドルだのラーメンだの遊びを挟みつつ、風子の尽力によって一人一人丁寧に救われていく物語は読んでて心地よかったです。

不出のバニーだけははしょられたいみたいですが。

他の全員は悲劇から救われてユニオンに加入するまで一人ずつじっくり描かれたのにバニーだけは1コマで完了でした。不遇でした。UNFORTUNATE。

あと絶対理の6人もそうでした。絶対理10人はソウルがボス格で、シック、ビースト、ランゲージはがっつりバトルがあったけど、あとのデス、ラック、チェンジ、ジャスティス、ウォー、タイムは見せ場らしい見せ場もあんまりないままラスボスの衛星扱いのまま退場。せっかく凝ったキャラデザだったのにもったいないことです。

これはやっぱりページの都合だったんでしょうかね？広義の打ち切り？

うーむ。アンデラはまがりなりにも売れて評価も実績も出した作品です。そんな作品でもジャンプでは打ち切りになる時はなってしまうんでしょうか？

狭義の新連載即死打ち切りなら「はい、あと10話で終わらせてね」ってもんなんでしょうが、この場合は「はい、あと1年で終わらせてね」みたいな感じだったとか？

そのせいで最後の仲間タチアナが揃ったら即ラグナロク開戦という駆け足になったのでしょうか？？？

いやこれは私の勝手な想像なので真相は分かりません。

とゆうか完結間際にもたびたび巻頭カラーや巻中カラーになってて、人気が落ちてたのならそんな待遇にはなりませんよね。完結記念のグッズ展開もあるし。「打ち切りだ」と思えるほどの打ち切り感は実は全然ありません。あくまで終盤が駆け足に見えただけです。

そのへんの話はこれくらいにしとくとして、作品全体の感想の話に戻ります。やっぱりいろんなところが良かった漫画でした。

作者戸塚は本当にアイデアの引き出しが豊富な人で、それだけでなく世界観や特殊能力の設定、それをどんな場面で活かすか、どの情報をどの段階でどの程度提示するか、そういう匙加減も非常に巧みだったと思います。そして暗示した伏線は全部ちゃんと回収しました（と思います）。本当にお見事です。

この漫画ではこの世界は全て神が創造したという設定で、本当に全て、性別も言葉も銀河も四季も寿命も、最初は何にも無い世界から、2柱の神があらゆる概念を一つ一つ足して作った世界です。宇宙の始まりは138億年前のビッグバンではなく4600億年前の地球46億年を100回繰り返したサンとムーンが「世界を始めた」瞬間だそうで。

私なんかは進化論や量子論をちょっと学んで「この世の成り立ち」はもうそれで観念が凝り固まってるので、それを無視できて自由に創作できる戸塚の想像力には本当に感心しきりでした。

あとはいかにも少年漫画という外連味、愛とか絆とかを恥ずかしくもなく叫べるその姿勢も堂々としたものでした。アポカリプスが死んだときなんか私もちょっとじーんとしました。

本当にいろんなところが素晴らしかったいいね最高だな漫画でした。リップの結婚以外は。