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「さらば、神よ」感想 年末年始に読むにふさわしい「無神論のすゝめ」!

「さらば、神よ 科学こそが道を作る」 リチャード・ドーキンス著 太田直子訳 早川書房 って本読みました。

 

私はこの本を「なんでもいいから年末年始に読む本」として適当に手に取ったのですが、選んで正解でした。有意義な年始を過ごせました。

 

作者ドーキンスのことは知らずに手に取りました。すごい有名な人なんですね。利己的遺伝子とかミームって言葉の提唱者。読み終わってから知りました。

 

 

 

で、この本、原題「Outgrowing God A Biginner's Guide」(神から卒業するためのビギナーズガイド)はその名の通り「無神論のすすめ」でした。

 

こんな本を読んでみようと思うのは元々無神論者の気がある人だけでしょうね。私もその一人。そういや今年も初詣行きませんでした。何年か前から意味が無いと思うようになってきて。

 

いや私は無神論というより無宗教かな。宗教をリスペクトする気は失せてるのですが、でも、なんか、自分の努力や行動ではどうにもならないことに直面したときに「うまくいきますように!」って心中で祈るようなことは、することがあります。自分でも具体的に誰に向かって祈ってるのかよく分かってませんが。

 

それで鑑みれば私はドーキンスが唱えるような心境にまで至れてない未熟者です。でもまーそれは別にいいんです。私はしんどいときにカルト宗教にお金を払ったり似非科学に頼ったりしませんし。カルト野党に投票もしませんし。

 

この本はもともと私のようなそこそこの無神論者でいても大して困らない日本人に向けられたものじゃないです。それよりも一神教が社会に強く食い込んでるアメリカのようなに生きる人々に向けて「今の時代に宗教の原理主義でいるのって全然いいことじゃないよな」と啓蒙する本です。世界はそういう国のほうが圧倒的に多いわけですし。

 

アメリカ国内で、子どもに進化論を否定する教育を受けさせようとか、裁判所に聖書の十戒を掲示しようとかの、そういうキリスト教原理主義者が、信仰の名のもとに社会を停滞させる危険性を訴えてます。

 

ドーキンスはこの本で旧約聖書新約聖書の根本的に変なところや、インテリジェントデザインは人は支持しがちだけど進化論の理屈ではそうではないこと説いてて、私は読んでて非常にすんなりと腑に落ちるのですが、一神教の国に生きる「宗教って変じゃない?」とうっすら疑問に思ってても社会的になかなかそれを口に出せない若者たちにとってはこの本はまさに闇の中の光のような啓蒙の書になってるんだろうなあ~って気がします。

 

アメリカでは「私は宗教とか信じてませんし」と言うのは非常に勇気がいることらしいです。迫害されてもおかしくなさそう。

 

まードーキンスのように真っ向から宗教社会に対立しないにしても、アメリカとかにいる無神論者の気がある若者たちが、社会と適当に合わせて原理主義者とは適度に距離を置いて上手に過ごせるようになれればいいなと心から思ったりもします。

 

あ、ちなみにイスラムは論外。こういう本があっちの世界に届くことはないでしょうね。世界から宗教……せめて原理主義を失くす道のりは長く険しそうです。

 

 

 

この本で他に細かいところで面白かったのは「積荷信仰(カーゴカルト)」という概念。初めて知りました。

 

 

ニューギニアとかの島民は第二次大戦中に、自分の島を占領した軍隊が、空からいろんな物資を供給させてることが不思議で(魅力的で)ならなくて、あれは神様からの贈り物だと考えて、「積荷の神に祈れば飛行機がやってきて贈り物をもたらしてくれる筈だ」と考える新興宗教。超面白いです。

 

その島民を愚かだと笑うことなんて誰にもできません。でも笑ってしまいます。

 

「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」とは別方向でのこの世の宗教に対するカウンターパンチですね。

 

 

他にはエイブラハム・リンカーン大統領は黒人奴隷解放という功績を遺したものの黒人と白人が対等だとは思ってはない(なかった)人だったこともこの本で初めて知りました。

 

じゃあリンカーンは差別主義だと批判されるべき?そうじゃないよね?という話にも感心しました。

 

いろいろと面白い本でした。

 

昔は宗教が必要だった面はあるけど、今の時代にはもうなくなったほうがいいと、私も割とマジで思ってます。

 

 

あと、本の感想とは直接関係ないけど、この本で剣歯虎という超見慣れない単語を見ました。そこは普通にサーベルタイガーって書いたほうが自然じゃない?

 

 

 

 

 

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