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「カタストロフィ 大惨事の人類史」感想 人類のそばには常に大惨事があって当たり前

カタストロフィ 大惨事の人類史 ニーアル・ファーガソン著 柴田浩之訳 東洋経済 って本読みました。

 

タイトルの通り人類がこれまでに遭ったいろんな大惨事を解説してくれる本です。原題はド直球の「DOOM」!

 

本来は最後の審判とかこの世の終わりって意味の単語です。ナイスネーミング。

 

で、読んだ感想をまず端的に言うと、「自分が今生きてるのはマジでただの幸運に過ぎないんやな~」でした。

 

分厚くて字がいっぱいで難しい話が多い本でした。私は間違いなく全本文に目を通したのですが内容がしっかり頭に入ったのかは全く自信がありません。

 

あとこの本を手に取ってみたとき最初に驚いたのは、巻末の原注(参考資料一覧とか)の多さ。この本は本体は厚さ3.1cmありうち原注が0.6cmです。1/5もあります。すげえなあー。

 

(原注が多い本はたまにあるけど、これは私が見た中では最高記録)

 

 

当然ながらこの本のメインは新型コロナウイルスです。ただし2020年9月に執筆されたものなのであくまでその時点までの知見であり、今この地球を現在進行形で揺るがしてる大惨事両巨頭の一つ、プーチンのウクライナ侵攻については扱われてはいません。

 

しかしそれが却って、本文中でたびたび「疫病と戦争は切り離せない」と語られていることが、まさにその通りになってしまってるわけですから、説得力が半端無いです。

 

ただし前書きの「日本語版刊行に寄せて」内では語られてます。

 

作者ファーガソンはこの戦争をかなり悲観視してて読んでて不安になります。ウクライナが力尽きる可能性やプーチンが諦める気が無さそうなことやロシアには化石燃料だなんだとお金や物資が入っていってることなどなど不安要素だらけだと。

 

確かになあー。でもそれらは確かにそうなんだけど、ロシアの中だって、実際にどれくらい消耗してるのかは想像もつかないとも、私は日頃から思ってます。

 

ロシア奥地の絶対に報道されることが無い田舎に住む人たちはいったい今どんな生活をしてるのか。私は電気も水道も機械類も医薬品も全く無い原始的な生活をしてるんじゃないかと思ってます。

 

ロシアは確かに資源が豊富だし、戦争を続けるための資金や物資は中国とかから調達もしてるっぽいけど、でも人はどうなんでしょうね。

 

ロシアの中の戦争以外の部分が、どこかの何かが、致命的な崩壊をする日もそう遠くないとも私は思ってて(願ってて)その日が来るまでウクライナが持ちこたえてくれて、様々な経済制裁や圧力や交渉を続けるのが大事だと思います。それしかない……。数年続くとしても。

 

なので私はウクライナが抗戦することに関しては「戦争賛成」であり、ウクライナに向けて「戦争反対」だなんてどうしても言えない気持ちがあります。むしろ戦争反対とかNO WARとかを曖昧なスローガンにする人に無神経さを感じます。

 

ってこれはこの本の感想とはほとんど関係ありませんでした。脱線しすぎました。

 

 

 

話を戻して、この本は読んでていろいろ勉強になります。

 

「灰色のサイ」「ブラック・スワン」「ドラゴンキング」って言葉がたびたび出てくるのですが、これは私は初めて知りました。

 

金融とか危機管理とかで使われる用語らしく、危険度を三段階で表現してる感じの比喩表現

 

一段階目の灰色のサイは、普通に存在してて軽視されがちだけどもし暴れ出したら危険なもの、二段階目のブラック・スワンは、常識では予測が困難で実際に大きな被害をもたらしたもの、三段階目のドラゴンキングはそれを遙かにしのぐほどの途方もない大惨事。

 

本の中で人類史上の様々な大惨事でどれがドラゴンキング級なのかを明確にランク付けしてるわけではありませんが、まー、第一次世界大戦黒死病(ペスト)やスペイン風邪(インフルエンザ)とかの、犠牲者が7桁8桁レベルの超大惨事であることはなんとなく察せます。

 

 

 

ではコロナはどうかというと、死者の数(死亡率)は世界中全部足しても過去のドラゴンキング疫病と比べたら本当に小さいので理論上はブラック・スワンです。

 

しかし各国の政治とか人の行動心理とかに及ぼす影響は、過去の疫病とは比較のしようがない前代未聞な恐ろしさがあります。ねー。

 

 

ところで「灰色のサイ」「ブラック・スワン」「ドラゴンキング」って三つの単語ですが、なんか表記がいまいち統一感が無くて馴染みにくいですね。

「灰色のサイ」「黒い白鳥」「竜の王」

「グレーライノ」「ブラックスワン」「ドラゴンキング」

「グレー・ライノ」「ブラック・スワン」「ドラゴン・キング」

のどれかにすれば統一感あってすっきりするんですけど。

 

 

 

あとコロナ関連でこの本で初めて知って驚いたことが、世界の国々によっては感染者の追跡調査とかちゃんとした記録がしっかり残ってて、一人の感染者が1160人に感染させた記録があるってところでした。

 

 

韓国の61歳のすごい行動的な女性が2020年に、検査前や発熱後にあっちこっちに出歩いて1160人にうつし回ったという。

 

うーむ。私はその女性自身には罪は無いと思うと同時に、いや身勝手で罪は重いとも思い両方の気持ちがあって複雑です。

 

 

 

コロナ以外の、この地球でのかつての大惨事談も豊富です。

 

私は1912年のタイタニック号、1937年の飛行船ヒンデンブルグ号、1986年のスペースシャトルチャレンジャー号の事故の顛末がすごく興味深かったです。それぞれの事故をなぜ起きたのか調査すると人間の普遍的な怠慢や身勝手やデマが常にあるのが。だよなあー。

 

あと1979年のアメリカのスリーマイル島原発事故と、1986年のソ連のチェルノブイリ原発事故が、アメリカは権力が連邦と州と地方に分散され過ぎてて、ソ連は逆に中央に権力があり過ぎてることがそれぞれ問題だったことも、読んでてすごく納得感ありました。

 

日本はどうかというと、2011年の福島第一原発事故の最大の根本的要因は、そもそも活断層の上で密集して暮らしてることだと作者は指摘します。

 

それはぐうの音も出ませんが、でも日本は住める土地が狭いしなあー。

 

さらに日本は高齢化が著しいしいろいろと厳しいです。しかし作者の住むアメリカだってBLM運動がすごい社会不安を巻き起こしてるし、ヨーロッパだって移民問題が超深刻だし、決して偉そうなことは言えず、安泰な場所なんてこの地球にはありません。

 

 

 

そして、この本の特徴として、フィクションの映画や小説とかが豊富に引き合いに出されてます。

 

その中で私が超好きな小説「三体」がよく出てきたことが、意外でそして嬉しかったです。

 

 

作者ファーガソンの「三体」三部作の要約が、私が読んだ感想と解釈一致してて「そうだよなーそうだよなー」と快哉を叫びました。

 

あの本は本当に「中国はどんな国か」「中国は世界をどう見てるか」がすごく暗に真に描かれてます。

 

暗黒森林理論」がまさに今現在地球に存在するアメリカと中国の冷戦の弱肉強食世界観を端的に表現してると。

 

私も超同感です!

 

(ちなみに暗黒森林理論は三体2の核心ネタバレです)

 

 

 

地球には様々な大惨事があります。

 

例えば日本の阿蘇山やアメリカのイエローストーン火山とかのカルデラ火山が大噴火したとき、地球の環境はあっけなく壊滅します。ドラゴンキング。

 

今してないのは単に幸運なだけです。いつするかは誰にも分かりません。

 

他にも数えきれないほどの事例があります。この本には。

 

 

読むことで「諦めがつく」かもしれません。

 

まーもちろんそれで絶望しようってことではなく、ある意味の開き直りの心境で日々を懸命に生きてけばいいんじゃないかなと思います。

 

 

 

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