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「超新星紀元」感想 プロパガンダとステレオタイプが作品の良さを潰してる

早川書房 「超新星紀元」 劉慈欣著 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 って本読みました。

 

私には駄目でした。

 

三体」を気に入った人が劉慈欣の他の本に興味を持っても同じように楽しめるとは限らないってことを今回主張してみたいです。

 

三体三部作を読んで「面白いことは面白かったけど、たまにひっかかる部分もある」という印象を持った人は、世の中にそれなりにいると思うんですけどどうでしょうか。ロボット美女智子の残虐日本人ムーブとか。

 

私はそうでした。「ひっかかりもあったけどそれ以上に面白いところだらけだったから総合的には好印象」って感じでした。特に三体2はそれでも超すごい!超面白い!と思ったのですから、面白いところは本当に面白いんです。

 

 

で、私は三体三部作を読んでから、期待を込めて劉の他の本、「三体0 球状閃電」「流浪地球」「老神介護」を読んでみたのですが、なんか、読むほどに「面白い」と「ひっかかる」の比率が逆転してく感じでした。

 

三体0は三部作ほどじゃないけど面白いと思えました。流浪地球と老神介護は読んでも特にブログに感想を書き残したいことは良くも悪くも浮かばずに「す~ん」って感じでした。そしてついにこの超新星紀元はマイナスになってしまいました。オチもよくわかんなかったです。なんでいきなり地球外に移住してるん?

 

 

 

この本で劉が描いてる中国の社会と世界各国の情勢は、中国共産党が挙げているプロパガンダそのまんまです。

 

そりゃ~ね、中国はああいう国なんですから、当局の意向に背くような本が出版できるわけがないに決まってますから、中国共産党や中国軍や国家主席を少しでも悪く描写することがあったら劉の命にマジで関わりますから、こんな世界観になるのは仕方ないです。三体もそうでしたし。

 

しかしこの本では劉はむしろ率先してノリノリで「中国最高!中国以外の国最低!」の世界観を嬉々として描いてるようにしか見えませんでした。それに戦争シーンも書くの楽しそうに感じました。彼は対外的には反戦や平和を望むコメントを発してますが、この本から実際に受けた印象はそれと正反対でした。

 

 

作中の日本、日本人の描かれ方はそれはもうひどくて、そんなんでいちいち感情的になって読むのやめるほどじゃないけど「この本の良い部分を見るようにしよう」とかいう意志を挫くにはじゅうぶんでした。なので非常に冷めた目で読み終えてしまいました。

 

 

この本が正式に中国内で発行されたのは2003年で、つまりは中国が抗日ドラマとかでとにかく日本や旧日本軍をひたすら残虐な悪党と言ってりゃそれでいいって時代でした。そのノリをひしひしと感じます。智子の比じゃないです。

 

アメリカ人やイギリス人の描写も似たり寄ったりで、本当に悪いステレオタイプに凝り固まってるキャラ設定でした。

 

子ども同士で殺し合おうと戦争ゲームを提案してくるのもアメリカ側、戦争ゲーム中に先にルール違反をしてくるのも中国以外の国だけ。中国マジ立派でマジ偉大。

 

この本はきっともとから中国内で中国人が自慰をするためだけの本なんです。なのに三体がなまじ世界的にヒットしたせいで外国語訳されてしまった可哀想な本なんだと思いました。

 

 

私はこの本の世界観を肯定するのはいろんな意味で無理でした。でも日本人でも護憲派かつ反政権かつ反捕鯨の人だったら大いに楽しめるでしょうから、そういう人にはお勧めです。

 

(日本首相の少年の名前が大西「文雄」ってのは偶然ですか?)

 

 

あれですね。もしメガネが現代にいたら、日本が福島第一原発のALPS処理水を海洋放出したことに対して「やれやれ、日本は全く歴史に学んでいないね。いつも空気や海を汚してばかりいる」なんて皮肉を言ってくるんでしょうね。

 

 

ふう。ま、いろいろと勉強になりました。自分とは遠い価値観に触れて視野が広がったのはいいことでした。また、この本が駄目だったからって三体が素晴らしかったことを否定するようなこともしたらいけないな、とも強く思いました。そんなことしたらそれこそ坊主袈裟のステレオタイプ野郎です。

 

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