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「アリス・ミラー城殺人事件」感想 2回読んで意味は分かったけど……

講談社「『アリス・ミラー城』殺人事件」 北山猛邦著 って本読みました。

 

最初読み終えたときは意味が分からずにポカーンとして、もう一度しっかり読み返して意味はなんとか理解できたのですが、そのトリックがどれほど凄いことなのかはあんまりよく分かりませんでした。

 

例えるなら、書道の達人が書いたなんかの作品が「これは素晴らしい!」と絶賛されてるんだけど、私は書道に関して全く無知で私の目には何がどう素晴らしいのか全然実感できない、みたいな感じ。

 

私は「推理小説、ミステリー」に関しても書道と同じくらい無知だから凄さが分からなかったのかも、とか思いました。

 

以下完全ネタバレあり感想。

 

さて。私は最近読書欲が少し高まってて「なんかいい本無いかな」と探して、このアリスミラーが「凄いトリックのミステリーらしい」という情報だけを得て、それ以上詳細は調べずに実際読んで確かめることにしました。

 

しかし今になって思えば私は最初の時点でこの本の「正しい読み方」、つまりこの本全て一字一句をしっかり疑いながら頭に入れるような読み方をしなかったのが敗因だったのかもしれません。

 

普段の読書と同じように寝転がって漫然と読んでしまいました。最初から注意深く読んでりゃ良かったと後悔。それが推理小説を読む作法なんでしょうかね。

 

 

で、この本の最大のトリック、島には実は10人ではなく11人いて、読者には隠されてた11人目は実は最初から普通にいて他の登場人物達からも存在も認識されてて会話もしてるんだけど、読者にはそういう「登場人物達と11人目との普通の会話シーン」とかがそうではないように見えるようにされていた、という一種の叙述トリック

 

 

私は初読ではクライマックスでの最後の生き残りの探偵无多と11人目の真犯人アリスとの会話シーンでは、ここでいきなりアリスとかいう女が初登場したようにしか見えなくて「誰こいつ?」とか思ってポカーンと読み終えたのでした。

 

しかしまー、それまでの文中に「アリス」という人名は何度か出てたので、そういうトリックっぽいってことはなんとか察せて、頑張ってもう一度読み直しました。

 

 

それでようやくトリックの概要が理解できました。その後でネットの小説口コミサイトとかをチェックしてみたところ、私が理解した認識で間違ってないようです。

 

舞台が孤島のアリスミラー城という名前であることや、アリスミラーというお宝や、建物の趣向などなどが「鏡の国のアリス」にちなんでるから、たまに登場人物達が言う「アリス」って単語はそれらに絡んだことかと思いきや、実は彼らの中に普通にいる登場人物の名前を言っていたのだというトリック。

 

実際に島にいたのは全部で11人、招かれた客は9人、アリスミラー探しに招かれた探偵がアリス含め8人、探偵ではない客が1人(入瀬)、主催者側は2人。その全容をあの手この手でぼかして明言を避けて、アリスがその場にいないかのような文章で構成されてたと。でもよく注意して読めばそうであることは分かるようになってたと。

 

口コミサイトでは、そのことに対して「やられた!」「騙された!」「お見事!」と称賛が多くあったし、また逆に「アンフェアだ」「いろいろと粗い」という批判も見かけたのですが、しかし、私は、そんな人たちが熱心に評価してる部分についてはポカーンのままでした。トリックが理解できてもなお。

 

「これってどれくらい凄い事なの?」がよく分からなくて。

 

 

真犯人がアリスで、文中でも彼女の存在が巧みに隠されてて、最後の最後で明かされて、そのトリックはすごい趣向を凝らされたことであることは理解できても、感動には繋がらなかった、というか。

 

なんなんでしょうね。

 

例えば、書道の他にも何かで例えるとしたら、野球では右利きのバッターが左利きのピッチャーからの投球をライト方向にホームランにすることは難しくて、その場面があったとき野球ファンは「おお!すげえ!」と感動するけど、野球を知らない人には何がどう凄いのか分からなくて、説明を聞いて理屈を理解しても感動まではしない、みたいな?

 

推理小説をよく読んでる人ならこのトリックは凄い技術が要ることだと感動できるけど、全然詳しくない人だと「だからなに?」とか思っちゃうもんなのかもしれません。

 

推理小説上級者向けの本?

 

 

 

しかしこの本はつまらなかったのかというと決してそんなことはなく、初級者の私でも「すげえ!」と感動した部分も多いことも間違いないです。

 

例えば密室。

 

 

この小説では2件密室殺人事件が起きて、その二つともが、「どうやって殺して、どうやって密室を成立させたのか」と「なぜわざわざ密室にする必要があったのか」、その謎解きの両方ともに私は「なるほどおおお」と感動しました。

 

一つ目の密室では、密室な上に被害者鷲羽は顔を酸で溶かされてて「被害者は本当に彼なのか」と疑うように仕向けられてたこと、密室であること自体が密室トリックを解こうとする探偵をおびき寄せる罠だったこと、二つ目の密室は実は一つ目のちょうど階下にあって連動してたこと、などなどに、私はマジで感動しました。

 

メインの叙述トリックにはポカーンでしたが、こっちには私は舌を巻いて膝を打って頭を垂れました。

 

これだけでもこの本は値千金で「読んで良かった」と思わせるものでした。

 

密室の図解が載ってるのも良かったです。

 

確かに図解があると「これぞ密室殺人推理小説」って感じがします。

 

 

そして図解と言えば、被害者の一人観月が残したダイイングメッセージの絵にはちょっと笑いました。

 

 

これはどう見ても「4」であり、「A」には見えませんて。

 

今にも死にそうな人が最後の力を振り絞って書いたってことを差し引いても、Aを書こうとしてる人がこんな、4にしか見えへん書き損じの仕方はせんやろ~。

 

ここは笑えて面白かったです。

 

 

というわけで、この本は私にとっては「ポカーン4:感動4:笑った2」って感じの本でした!

 

 

 

 

 

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