背筋著「近畿地方のある場所について」 カクヨム ってネット小説読みました。
面白かったです。ガチホラーです。
私はオカルトは全く信じてません。「信じる/信じない」って言い方自体をアホらしいと思ってるほどです。(でもこの言い方が一番手っ取り早くニュアンスが伝わるからなあ~)
そんな私でも読んだ直後にはなんか自宅の暗闇がおっかなくなるくらいにビビりました。
スピリチュアル盲信者やフィクションと現実を混同する人を馬鹿馬鹿しいと思うことと、良質なホラー小説を読んで恐怖を感じることは同時に成り立ちますよね?
世の中に「近畿地方のある場所について」というホラー小説があることは前から知ってましたが、ネット小説であることと、読んだ人が大げさに騒いでるっぽい感が逆に興味をひきつけなくて読んではいませんでした。
しかし前に近所の本屋に行ったら本が並んでて、あ、書籍化されたんだとその時初めて知り、そしてすぐに店頭から消えてたので面白いのかなとちょっと気になってきて、それならもうカクヨムでオリジナル版を読んじゃおうと思った次第でした。
カクヨムにぱぱっと会員登録して。あ、でもしなくても小説最後まで読むのはできるんでしょうかね。まーいいや。また何か読む機会があるかもしれませんし。
2日くらいでサクサク読めました。以下ネタバレあり感想。
この「近畿」は過去のいろんな名作ホラーの要素がミックスされてる感じです。ブレアウィッチプロジェクトとかリングとか不安の種とかムラサキカガミとか、ホラーに詳しくない私でもいくつか作品名が思い浮かぶくらいです。
なので、読んで早々でこの作品の主旨が「呪いの感染拡大」系だと察しがついたし、オチが「語り手自身も実はキャリアで読者に呪いをばら撒いてる」であったことも、驚きはしませんでした。
このへんは昔リングとか死国とかを観賞したおっさんおばさんはそう思うだろうし、でもそれらを知らない若者にとっては新鮮な恐怖だったんじゃないかと思います。
なので若者が騒ぐのは大いに理解します。我々だって昔はそうでした。
しかし、そんな、ひねくれて冷めた視線のおっさんでも読んでる最中「不気味だなあ~」「すごいなあ~」と素直に恐怖したのだから、作者背筋の純粋な筆力が素晴らしいのだと思います。マジで。
ペンネームが変ですけどね。これもなんか深い意味があるんでしょうかね???
うーむ。背筋もこの作品の登場人物の一人でもあるので、「背筋」ってのが意味がある名前なのか、それともなろう系作者によくある素っ頓狂なペンネームにすぎないのか、よく分からなくてひっかかってしまい、ほんのちょっとだけ、作品への没入の妨げになってる気がしないでもないです。
他にも不可解というかひっかかるところも無くも無かったです。
「嫁探しが役割の人」がネットの違法アダルトサイトや00年代2ちゃんねる的掲示板や現代の個人のSNSに即レスでコンタクトをとってくるところは、そのあまりのデジタルネイティブっぽさ、ネット監視万能即レススパコンっぽさが日本古来の土着的悪神や明治時代の村八分の少年の哀れな性欲とは対極に感じて、ちょっと笑ってしまいました。
あとは私自身が考察しようとか考えず無心で読んだからもあるのでしょうが、本編にちりばめられた謎が分からないままのもいくつかありました。
なぜ目次に『近畿地方のある場所について』4がいくつもあるのか、「るきえましらむどじえうずめ」などなどの意味不明な文言はそもそも何なのか、なぜ食事の味がしなくなるか、とか。
そのあたりは結局ほんとに謎のままでした。これらはちゃんと考察すれば「ああ、こういうことなのか」って分かることなんでしょうかね。
んーでもそれはそれで、謎のままでも雰囲気だけのままでもいいのかもしれません。私は読んだその時には確かに恐怖を感じたのでそれこそがホラー小説として素晴らしいことの証明のようなものです。
それに、読んだあとで細かい粗探しをしようとするのって、なんか、読んで怖かったのが悔しかったから「よく考えたら怖くないし~粗が多いし~」みたいに怖かったことを認めない強がりムーブなような気もして、かっこ悪いかもしれません。
ここはやっぱり、付け焼刃な考察は抜きで、怖いと思ったんだから怖い、怖かったことはこの作品の素晴らしいところだ、と、素直に認めるほうが、私なりのホラーを楽しむ者としての流儀かなと。
これは逆に言えばもしちっとも怖いと思わなかったホラー作品だったら、遠慮なく粗や欠点を指摘しまくってどんどん酷評すればいいってことで、つまるところホラーはとことん娯楽であり最も大切なのは怖いかどうかに尽きるってことです。なので私には近畿は大満足の作品でした。
ところで書籍化されたやつはオリジナル版よりも加筆されてるとか。それにもなんかちょっと興味が湧いてしまいました。いつか読んでみようかなあー。
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