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「メインテーマは殺人」感想 アンソニー・ホロヴィッツって江戸川乱歩の正反対だね

創元推理文庫「メインテーマは殺人」 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田蘭訳 って本読みました。

 

解説に「惚れ惚れとするフェアプレイ」とあり私もそれに同感でした。謎解き小説として本当にお見事。そしてそれ以外の面でもこの作者ならではな要素がいくつかあって、そこも結構楽しみました。

 

登場人物が嫌な奴ばっかで、その「嫌な奴っぷり」の描写がネチネチとしてるというか外国人や困窮者をナチュラルに見下してるというか、そういうノリは前に読んだカササギ殺人事件ヨルガオ殺人事件にも通じてて、これが初見だったらウンザリするんですけど、私はもう慣れました。今回もそういうノリがいかんなく発揮されてて苦笑いです。

 

これはそういうのを受け付けないって人はとことん受け付けないだろうし実際amazonレビューとかでもそういう感想がいくつかあって、この本はそこで損してるのかもしれません。

 

これは作者ホロヴィッツ自身が嫌な奴だからなんでしょうか。私はそうとも言い切れないと思います。

 

なぜなら彼のもう一つの顔である「子ども向け小説」のほうは、非常に正義でありまっとうであるからです。「女王陛下の少年スパイ!アレックス」のほうです。私がこれを読んだのはかなり昔なのでうろ覚えなのですが。

 

子ども向け小説では正義や輝きがあり、大人向け小説ではカスだらけの嫌味ったらしい世界を見せつけてくるってのが、彼の作風なのかなあー、って、私は、思ってます。

 

 

 

アレックスシリーズってまだ完結してないみたいですね。

 

今は次14巻が出るところらしいです。私はずっと昔に荒木飛呂彦が挿絵を担当したから読んでみてそれなりに楽しんだのですが、その日本版は6巻で止まってるのがちょっと寂しいです。

 

この本の中でホロヴィッツがアレックスシリーズの登場人物殺し屋ヤッセンが活躍するエピソードの構想があると語ってて、やっぱり全部を日本語版で改めて読みたいです。

 

 

(関係無いけど荒木飛呂彦デザインのヤッセン)

 

って話が脱線し過ぎましたが、まー要するにホロヴィッツは児童文学の大家でもあるってことです。日本で例えるなら「かいけつゾロリ」の原ゆたかのような人です。

 

そんな人が脚本家やったりして、そして本格ミステリー書いて大ヒット連発したんだから本当にいろいろとすごいです。

 

そこでふと思ったのですが、これって江戸川乱歩とちょうど逆ですよね。乱歩は最初は大人向け小説、それも日本のミステリーの元祖的存在だったのが、そこから明智小五郎ではなく少年探偵団が主役の児童小説に転向したわけですから。

 

どっちも本格ミステリーと、子ども向け(しかも少年スパイとか少年探偵団とかいかにも子どもウケする王道)の両方で成果を出してて、でも経歴の順序は逆。なんか面白い対比な気がします。

 

それにしても少年探偵団って概念は今でも人気ありますよね。きっと子どもは普遍的にそういうの好きなんですね。なあ江戸川よ。なあコナンよ。

 

(そういやホロヴィッツはコナンドイル財団公認のシャーロックホームズの正統シリーズも執筆してます)

 

乱歩も子ども向けではまっとうでも大人向けのほうでは偏執性や変態性が際立ってましたが、ホロヴィッツの場合は「嫌な奴」描写がそれなんでしょうかねえー。

 

 

 

で、今更ですがここから一応ネタバレありの作品の感想。

 

まずちょっと苦しいのが英語やアルファベットを使ったトリックは和訳された本だとすごく分かりづらいってところです。カササギやヨルガオもそうでした。あとこの本はシェイクスピアの知識もないと太刀打ちできなさそうです。イギリス人には最低限一般教養?

 

あとラストで主人公が命のピンチになり劇的に助けがくるパターンもカササギとかと同じだったことにも、ちょっとウーンってなりました。

 

そこ以外は本当にフェアプレイなミステリーだったと思います。

 

特に私が感心したのは、この本では、探偵小説によくある、探偵が事件の最初のほうから真相に気付いたのに助手達にはそれをもったいつけて話さない、という探偵ダメあるあるにもちゃんとした説明があったところでした。

 

ホーソーンは最初からクーパー夫人が自殺するつもりであったことに気付いてたのに、「自分が死ぬことをダイアナ・クーパーは知ってたんだよ」って言い方しかしません。ここは「ダイアナ・クーパーは死ぬつもりだったんだよ」と言うのが自然だろがい。

 

 

これはホーソーンは日払いで報酬を貰ってるから、働く日数を引き延ばすためにわざと伏せてたからで、私はここに論理的な理由があったことに妙に感心しました。同時にホーソーンのせこさにまた苦笑いでした。

 

 

本当にミステリー要素もそこ以外もいろんなところがいろいろと面白かったです。スピルバーグのところとかも。

 

さて。この本はシリーズ第1弾で、今は4弾まで出てます。今回読んでみて続きも読みたくなりました。読んでくぞ!

 

 

 

 

 

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