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「ねじれた文字、ねじれた路」感想 救いはあるほうがいいのは間違いないんだけど……

ハヤカワ・ミステリ文庫 トム・フランクリン著 伏見威蕃訳「ねじれた文字、ねじれた路」って本読みました。

 

読むの辛かったです!

 

主人公の一人ラリーの半生が可哀想で気の毒で悲惨すぎる小説でした。読んでて悲しいったらなかったです。

 

辛かったけど頑張って最後まで読みました。それは小説の出来が見事なのとラリーが最後どうなるのか気になったからだと思います。そういう意味では読ませる小説です。

 

ちょっと古い2010年のアメリカの小説です。「なんか紙の本を読みたい」と思って無作為に選んだ本です。いくつかの文学賞をとった名作らしいけど作品や作者については全く無知でした。

 

 

裏表紙のあらすじで興味を持って読んでみたけど……予想以上に辛い話でした!

 

 

 

舞台はミシシッピ州の田舎、主人公は白人おじさんの自動車整備士のラリーと、黒人おじさんの治安官(≒警官)サイラス。

 

治安官って言葉初めて知りました。保安官とは別らしいです。ぐぐってもよくわかんないけど、本文中の情報で察するに保安官より役職は下っぽいけどバッジと銃を持って取り調べや逮捕する権限を持つ公安職っぽいです。

 

サイラスのほうは1980年代の露骨な人種差別や貧困とかに苦しんだことはあるし、今の職業にもあんまり満足してないようだけど、青春を謳歌したり今も彼女がいたり、それなりな人生を送ってきました。

 

一方ラリーのほうは、もう、本当に、いたたまれないほどに不幸な人生を送ってます。作者はよくもまーここまで可哀想なキャラクターを創作したものです。

 

少年時代はいじめられっ子、16歳で同じ町の美少女シンディを殺した容疑をかけられ、証拠不十分で逮捕はされなかったけど町中から疎外されて25年間孤独に暮らして、そしてさらに2010年の今また別件の女性の殺人の容疑をかけられてしまいます。人生で二度の濡れ衣。ひでえ。

 

 

 

で、この小説は彼の2件の殺人事件の冤罪の真相が少しずつ明かされてく話なわけですが、その合間合間に彼が受けてきた偏見や迫害の描写がこれでもかと続くので読んでて本当につらいです。つらすぎます。彼に私自身を重ねたりもしました。

 

読み始めてそういう物語だと理解したときにはもう読むのやめようかとも思ったけど彼がどうなるのかを見届けたくて最後まで読むことにしました。

 

 

最後には2件とも真犯人が判明し彼の潔白が証明されるのですが私は「彼が救われて良かった」と思うと同時に「本当に救われるのか?」と疑問に思ってモヤモヤしたりもしました。

 

ラリーは16歳から41歳までの間、本当に辛い生活を送ってて、友達もいなくて住人から嫌がらせを受けて恋も結婚もできずに整備士の仕事もろくになく、親が持ってた土地を売って時代に取り残されて孤独に生きてきて、人生を取り戻すことは不可能なわけで。

 

「冤罪」ってのは現実でもフィクションでもそういうものですが、彼の不幸や苦労ばかりを背負うばかりで喜びの無い人生の様子が本当に念入りに描写されて、私はかなり打ちのめされました。

 

読んでる途中で、彼が救われない超バッドエンドになることを少し予想してそうはならなかったことに安堵しましたが、でもいっそ徹底的に救いのない超超超バッドエンドだったら逆に気持ちが突き抜けて気持ちが吹っ切れたかもしれません。

 

いや、そんなことは無いかなあ。無いですね。彼が救われたほうが良かったに決まってます。

 

彼の冤罪が晴れたこれからの人生が、友人や恋や娯楽などなどの「人並みの幸せ」を得られるのは間違いないでしょう。でも単に人並みなだけの幸せを享受できても割に合わないんじゃないか、って気もどうしてもします。

 

これまで散々偏見を浴びせた街の人々と仲良くなれるんでしょうか?あとサイラスにもラリーが不幸になった結構重い責任があって、本当に水に流せるんでしょうか?

 

いやいや、私がこう忸怩たる思いを抱えようが、ラリー本人は彼の性格からして穏やかに全てを水に流すのかもしれません。それはそれでいいのかもしれません。

 

てゆうかこうやって感想ブログ書いてるうちに私の中のモヤモヤがちょっと晴れたかもしれません。彼がいいならそれでいいのかも、と。

 

 

 

 

 

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