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「ナイフをひねれば」感想 シリーズで一番面白かった!

創元推理文庫「ナイフをひねれば」 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田蘭訳 って本読みました。

 

ホーソーン&ホロヴィッツシリーズもこれで第4弾。これでやっと現行に追いつけました。

 

で、4冊読んでこれが一番面白かったです!

 

そして、シリーズで最悪に嫌な奴がいました!

 

私はこのシリーズ4作と「カササギ殺人事件」「ヨルガオ殺人事件」を含めこれまでに読んだホロヴィッツのミステリーは「嫌な奴ばっか出てくる」のが大きな特色だと思ってるのですが、嫌な奴度ぶっちぎり最悪1位の嫌な奴が出てきました!

 

以下ネタバレあり感想。

 

 

 

今回の殺人事件の被害者、劇評家ハリエット・スロスビーがもう本当に読んでて眩暈がするほど最低な人間でした!

 

私はフィクションの物語でなら人が殺されたりしても「こんな奴死んで当然」「殺されてざまあ見ろ」と感じたのなら、素直にそう思うことにためらわないタイプです。なので今回も大いにそう思うことにしました。ざまあ見ろ。いい気味だ。と。

 

ハリエットはそれほどに本当に信じられないくらい悪意に満ちた嫌な奴でした。

 

 

これまで読んだホロヴィッツミステリーで嫌な奴1位はカササギ殺人事件の被害者かつシリーズの重要人物アラン・コンウェイでしたが、彼は超天才であり嫌悪感と同時に感服する気持ちも持ったりもしました。でもハリエットはそういうこともなくただただ見下げた悪人でした。

 

あーもしかしてこれもホロヴィッツミステリーのある程度の共通点でしょうかね。殺人被害者が同情しにくい人間なのが多いこと。何の落ち度もない善人が殺されることは少ない印象。

 

殺人が起こる作品においては、何の罪も無い人が無残に殺されたりするとそのことに心がかなり持っていかれるものですが、そうでないなら割とフラットな感情のまま、ミステリーだったら心置きなく犯人探しに集中できたりしますから。

 

 

その一方で、この作品ではそのボケカス女を殺した真犯人チリアン・カークのほうに、事件解決後、ホロヴィッツが複雑な感情を吐露するところがとても印象的でした。

 

今回ホロヴィッツは結果的にチリアンに濡れ衣を着せられて殺人の冤罪で逮捕されてしまったわけで、たまたま名探偵ホーソーンと知り合いで救ってもらえなかったらムショ送りになってたのは自分なわけで、ホロヴィッツから見たらチリアンはとても許せない相手な筈なのですが、物語終盤で彼が彼に思うことは、他人から踏みつけにされ続けた不幸な若者のつらい人生と、やっと掴みかけた幸せを悪意で破壊しようとするボケカス女を殺すしかなかった極限状態と、彼のような若者を救済できない社会制度とに「胸が締め付けられる」というのです。

 

 

うーむ、確かに。これはつらいです。この小説ではそういうつらく苦しい人間ドラマが謎解き最中ではなく終盤であったことがお見事な構成だと思いました。これなら最中は心置きなく謎解きに集中できるし、最後に登場人物への感情移入に浸ることもできます。

 

このへんが読み応えがあってとても良かったです。

 

私としても凶悪犯罪者は社会から隔離することが絶対必要だと思いますし、その上でできる救済ならあるべきだとも思います。できないなら死刑も賛成ですが。

 

 

 

あと今回私にとっては、ミステリー小説の犯人当てができたことも嬉しかったことでした。

 

私はいつもは犯人当てなんかしようと思ったって無理なことばかりなのですが、今回はチリアンが犯人で実はウェイン・ハワードなのではないかと、作中で真相が明かされるよりも前に察することができました。やったぜ。

 

そのこともこの本に好印象を持った要因の一つです。私には珍しいことでした。

 

 

もう一つ、「都合のいい偶然がよく起きるなあー」ってのを今作でもちょこっと感じたのですが、慣れてきたのかこれはもう気にならなくなってきました。

 

 

さて。私はこれでホーソーン&ホロヴィッツシリーズを既刊全部読むことができました。これからは全10巻ほどが予定されてるという新刊を待つ形になります。一体何年かかることやら。最短でも6年ほど?

 

ま、気長に待つか。この先の未来では、地球も作者ホロヴィッツも私自身も無事に健在であることを祈るのみです。読書をしてられる世の中であることをマジで祈ってます。

 

 

 

 

 

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