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「盗作小説」感想 盗作とかいう次元の問題じゃなくなるのが凄い

「盗作小説」ジーン・ハンフ・コレリッツ著 鈴木恵訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ って本読みました。

 

展開や結末に無理っぽさとありがちさを感じることはあったのですが、そこを良しとすれば全体的には面白い本でした。辻褄が合ってないってことも無かったですし。

 

今年の正月はこれ読んで過ごしました。新年一発目に読むようなもんじゃなかったかもしれませんが、そこも良し!

 

まずは読書感想とは関係無い話なのですが、ハヤカワ・ポケット・ミステリってちゃんと読んだの初めてかも。世の中には、なんでか知らんけど小口が黄色く塗られてるペーパーバックみたいな変な本があるなあ~ってのはボンヤリ知ってましたが、それを手に取ったことはありませんでした。なんか。

 

この本はタイトルに興味が湧いたので読んでみることにしたら、最初は黄色が目に飛び込んできて変な感じだったのですが、読んでくうちに慣れました。慣れるもんなんですねえ~。

 

しかしなぜ色を塗るのか、なぜ黄色なのか、(もし昔は保護のためとか実用的意味があったとして)なぜ今でも塗るのか、は、謎。誰か教えてください。

 

 

以下思いっ切りネタバレあり感想。

 

 

この本は、まず、主人公の小説家ジェイクが他人のアイデアをパクって小説を出版したらそれが超ベストセラーになるのがちょっと都合良すぎだと思ったし、さらに人気絶頂時期に知り合って彼女→妻となった女アナが実は盗作をされた本人だったことは、もっと都合が良くてなおかつ「大どんでん返しにしようとし過ぎてかえってありがちに感じた」って印象が強かったです。

 

でもこの2点以外は良かったと思いました。演出もトリックの仕掛けも、さらには女は正確には「小説のアイデアをパクられた」なんて単純な話じゃなくて超ややこしい真相だったことも面白かったです。なのでこの2点もそんなに気にならなくなれました。

 

 

 

いやーしかしパクリってのは怖いもんですね。

 

今の現実の世の中でも盗作問題はネットニュースの関心をひきやすいですよね。パクリが判明したクリエイターは基本的にみんな死にます。ちなみに最近ではパクったほうを「パク主」パクられたほうを「ラレ主」と呼んだりします。一度死んでも生き返るクリエイターもごく稀にいます。

 

私は大っぴらなパクリはしたことはありませんが、子どもの頃にラジオとかで聞いた面白いネタをさも自分が考えたネタかのように同級生に披露して得意になったようなことならあります。

 

そのときですら「それラジオのネタだろ」と知ってる奴から指摘されたときには、とんでもなくバツが悪い思いをしたものでした。

 

この主人公ジェイクの「盗作がばれるかも」という恐怖はそんなのの比じゃないわけです。名声が落ちるのみならず稼いだ印税も失うかもしれないわけで。

 

一瞬有頂天になってたときに謎のメールで「お前は盗人だ」と言われたときは、背中に嫌な汗がびっしょりしたことでしょう。しかもその指摘は正確だと判明していきますし。

 

 

ジェイクには斟酌する気持ちはゼロですが、彼が「人生何も問題無い」あるいは「謂れの無い誹謗中傷を受けてる」演技を必死で続けてる様子が、妙に巧みに描かれてて、読んでていたたまれなくてこっちの胃が痛くなるほどです。

 

 

 

それと同時に、この匿名糾弾者は一体誰なんや?という謎も膨らんできます。

 

ジェイクに小説のアイデアを披露した「ラレ主」エヴァンはとっくに死んでるし、仮にエヴァンがジェイク以外の人にアイデアを披露しててそいつが真相を知ってたのだとしても匿名でじわじわ糾弾する意味が無いです。糾弾したいならさっさと世の中に詳細を明かせば一発で彼を殺せるのに。目的も謎。

 

で、ジェイクが重い腰を上げて糾弾者が誰なのかを調べたら割とあっさり判明しました。エヴァンの妹ダイアナであり、そもそもエヴァンのアイデアは「我が妹が実際にやったことだった」という。自分の実の娘を殺して娘になりかわったという。

 

ジェイクがエヴァンからパクったのを狭義の盗作とすれば、エヴァンもダイアナから広義の盗作をしてたと言えなくもないです。「盗作とはなんぞや」をちょっと考えさせられたりも。

 

私はこのへんかなり感嘆しました。真相が判明するのと彼の盗作小説の内容が同時進行で明かされる演出も面白かったです。

 

ただまー実はジェイクの妻アナがダイアナだったっていう結末には、やっぱりちょっと冷めて「ん~」ってなったのですが、そこはまー、他が良かったからいっか!って感じです。

 

アナにとっては、ジェイクは「自分の人生の秘密を勝手に暴露して大金を稼いだ奴」であり、かといって自分は名を出してそれを糾弾できない立場だから、怒り心頭で許せなかったことでしょうが、それよりも、彼の大金と名誉を全部綺麗に自分にすることが重要だったっぽいですね。目的は純粋に金と。そこは腑に落ちました。

 

そして最後はその通りになりました。ジェイクは殺され、アナは愛する夫が自殺してしまった可哀想な未亡人となり、その印税も彼の名誉も全部自分のものになって、おしまい、と。

 

この「最後に悪が勝つ」という結末だったことも、この本の面白かったところの一つです。今の時代どんなメディアのどんなジャンルのどんな作品でも悪が勝つ結末なのは珍しいと思いました。

 

ま、ジェイクも全然正義なんかじゃなかったですけどね!

 

 

 

あと彼が発表した盗作小説のタイトル「クリブ」は、私は知らない英単語でした。

 

調べたら「crib」は「ちっぽけな家」「家畜小屋」「カンニングする」「不正コピーする」などなどの意味がある単語でした。

 

もうこの小説内小説のタイトルのためにあるかのような絶妙な単語です。超お見事なセンス。

 

面白かったです。

 

 

 

 

 

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