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「いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?」感想 真面目な話をふざけて話す夫婦

科学同人 ケリー・ウィーナースミス&ザック・ウィーナースミス著 中川泉訳 「いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!? 気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」って本読みました。

 

久しぶりに「活字がいっぱいの頭の良さそうな本」を読みました。たまにこういう本読んで自分が賢くなった気分に浸りたいです。

 

まずチラ読みして、最先端科学の話をユーモアのある文章で教えてくれる本らしいと判断して読み始めたわけですが、予想以上に勉強になって予想以上に文章がふざけてる本でした。

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「活字がいっぱい」とは言いましたが、この本は挿絵の漫画も豊富で、そのおかげで読むのはかなり楽です。

 

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 そして何故か左綴じで横書きの本。数式がたくさん出てくる本とかなら横書きのほうがいいだろうけど、この本は横書きにする必要性は特に感じなかったので謎です。

 

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 さて。世の中には、「まだ実用化されてないけど、日々研究されてる最先端科学

」っていうものがあり、そのいくつかは私達もニュースとかで見聞きします。それらが今どんな感じなのかを、いろいろ解説してくれる本です。

 

著者のコンビ、研究者&サイセンスライターの妻ケリー・ウィーナースミスと、漫画家の夫ザック・ウィーナースミスが。ふざけながら。

 

  • 宇宙へ安く行ける方法
  • 小惑星採掘
  • 核融合エネルギー
  • プログラム可能な素材
  • ロボットによる建設
  • 拡張現実
  • 合成生物学
  • フレシジョン・メディシン(精密医療)
  • バイオプリンティング
  • 脳ーコンピューター・インターフェース

の10のテーマを。

 

どれもどこかで少しは聞いたことのある科学だと思います。

 

 

例えば第1章の「宇宙に安く行く方法」では、今地球から宇宙に人や物を飛ばすには、いかにとてつもなくお金がかかるのかをまず解説してくれます。

 

  • ロケットはほとんど使い捨て。
  • ロケットの中身は8割が燃料で、燃料自体が重いので、燃料が超大量に必要。
  • 保険料も高い。

 

と。

 

次に、じゃあどうすれば安くできるかいろんなアイデアを紹介してくれます。

 

  • 再利用可能なロケットを作る。
  • ロケットをやめて「飛行機のものすごいやつ」を作る。
  • ロケットに燃料を積まず、地上に大砲みたいなのを作って、地上で大爆発を起こして飛ばす。
  • レーザーで空気を熱して、その爆発力でロケットを飛ばす。
  • まずロケットを気球や他の飛行機とかで成層圏までゆっくり持ち上げて、そこから飛ばす。
  • 宇宙エレベーターを作る。

 

そしてこれらのアイデアの、どこかすごいのか、どこに問題があるか、どの程度安くできるか、そもそもできるのか、を解説してくれて、結局どれも、非常に困難だったり全然安くならなかったりして、つまりだからこそロケットを飛ばすのはなかなか安くできないんだなあーってことが理解できます。

 

そして、できたとして、どんな懸念があるか、世界はどんな恩恵を受けるのかもいろいろ考察しています。

 

今は無理でも、いつかはできるかもしれない。できたことで予想外の困ったことや素晴らしいことが起きるかもしれない。

 

そんな感じで、10のテーマをじっくり解説してくれてて、読んでて飽きませんでした。

 

 

 

そして、非常にふざけてる文章や漫画は、作者の夫婦が実際に頭が良くて勉強家だからこそできるんだなーっていう知性の高さを感じさせます。アメリカンジョーク?

 

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ただ一応言っておくとつまんないか意味が分からないジョークや挿絵も多いです。

 

 

 

私が読んでて一番興味があったのは、9章のバイオプリンティングでした。

 

本のタイトルにもある、3Dプリンターで人間の臓器を製造する科学。

 

 どの章のも実現すれば最低でも間接的に全人類に恩恵をもたらすものですが、これは、実現したら直接救われる人は世界にどれだけいるか想像もつきません。

 

そして私としては、「歯」の再生医療が実現する日を心待ちにしています。

 

もし虫歯になっても義歯じゃなくて自分の歯の替えが効いたらどんなに素晴らしいでしょう。

 

だいたい人体は爪や毛は損傷しても再生するのに、なんで歯は生えるのが人生に2回きりなのか、私は納得していません。私はサメになりたい。

 

iPS細胞とかで、私が生きてるうちに、歯の再生医療が一般化してほしいなあー。

 

 

 

あと終章で没になったアイデアをいくつか紹介してあって、私はそこの「宇宙太陽光発電」が面白かったです。

 

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宇宙空間にソーラーパネルを浮かべて太陽光発電してそれを地上にケーブルかなんかで送ったら、地上で発電するより圧倒的に効率がいいのでは?というアイデア。

 

しかしこのアイデアは考えれば考えるほど「やるメリット」が無いのだそうで。

 

  • まず宇宙空間にその装置を作るのにとてつもない費用がかかる。
  • メンテも恐ろしく大変。
  • だったら地上にソーラーパネルを置いたほうが結局圧倒的にコスパがいい。
  • 将来ソーラーパネルの性能が向上したらなおさら地上だけで十分になる。

 

という。とほほ。

 

宇宙船や宇宙ステーションに設置するなら有意義だとは思うんですけどね。

 

 

しかし、「いいアイデアかどうか」は実際にアイデアを閃いて検討しないと分からないわけで、この宇宙太陽光発電だって「無理っぽい」と判断できたこと自体が成果です。

 

世の中のいろんなことを研究してる科学者は本当に立派ですごいと思います。

 

この本の作者はかなりふざけながらも、そのことを読者に伝えようとしているので好感が湧きます。

 

 

面白い本でした。

 

 

 

 

 

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