朝日新書 飯間浩明著「知っておくと役立つ街の変な日本語」って本読みました。
街中で見かけた変な看板をたくさん紹介する本でした。
昔「VOW」って本があったのを思い出しました。
VOWってのは「新聞雑誌や街中の変なものの目撃情報」を主に扱う読者投稿本のことです。
昔流行ったけど今でも活動してるのかな?
公式サイトの更新頻度はかなり低いみたいですが。
それはさておきこの本は、「三省堂国語辞典」の編纂者である作者が、独特の着眼点で、変な日本語の看板の写真コレクションを紹介してくれます。
VOWのような例えば「落ち込んでる」を「おちんこでる」って誤植してるのが面白い……みたいなそういうノリとは全然違う面白さで。
読んでて笑うというより感心しまくるタイプの本でした。
私なんかが一見しただけでは「特別おかしいとは思わない」「よく見る表現」「気になるところは別に何も無い」な看板が、この作者にとっては、特筆に値する「変な日本語」で、解説を読むと「なるほど言われてみれば」と納得させられることが多くて感心しまくります。
何より読んでて好感が湧くのは、作者が変な日本語を楽しんでるところです。
文法とか用法とかが「間違ってる」「正しい日本語ではない」と批判する意識がないところに、懐の深さを感じます。
あくまで純粋に客観的に日本人の日頃の言葉の使い方の変化を観察してそれを楽しんでる人って感じです。
これは私も結構同感で、そうありたいと思うところです。
正しいかどうかではなく、嫌いな日本語ならいろいろありますけどね。私は。
電話かけてきて「今お時間よろしいですか?」って聞くこととか、レジで袋がいるか聞かれて「大丈夫です」って答えることとか。
アカウントを「垢」って略すこととか。
あ、いやこういうのは今は関係ないか。
さてこの本では目次を見ただけで「言われてみれば」の嵐です。
こうやって変な日本語の紹介として並べられると、どこが変なのかは察しがつきますが、町中でその看板を見ても何も疑問に思わなそうなのばっかりです。
「平面駐車場」とか。
昔は駐車場は平面なのが当たり前だったけど、世の中に立体駐車場が浸透したら、駐車場が立体か平面なのかを区別する必要が出たのでこういう言葉が新しく生まれた……とかいった経緯に思いを馳せることに、作者はなんかロマンを感じてて、私もちょっと分かるような気がします。
スマホの広告の「学割ってる?」も感心しました。
「学割」とかのなんかの単語を動詞に見立ててるのなんてキャッチコピーとしてはありふれるから、何も気に留める要素なんか無さそうに見えるのに、作者は「学割」という言葉がそもそも「学生割引」「学生に割り引くサービス」の略語であり、 もともとの「割る」という動詞が略語化され動詞でなくなったのに、「学割ってる?」と応用されたことで動詞として生き返ったことに感動をしています。なるほどなあー。
面白い本でした。
私は最近はニンテンドースイッチのスカイリムをずーっと遊んでて、暇な時間はゲームしまくりたいと思ってるのですが、同時に「なんか読書もしたい」という欲求も出てきて、こんな風な気楽に読める本の存在が、読書欲を満たすのに超ちょうどいいです。
ちょーちょーどいー。
ただこの本、タイトルの「役立つ」は嘘だと思いました。
役には立たないです。
「新鮮な視点や教養が身につくことは、どんなことでも有意義である」って意味で言ってるとしたら、「役立つ」はちょっと拡大解釈ですね。