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「怖いへんないきものの絵」感想 森羅万象をおちょくる早川いくを

幻冬舎 中野京子 早川いくを「怖いへんないきものの絵」って本読みました。

 

「怖い絵」と「へんないきもの」が合体した本です。どっちも有名ですよね?

 

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中野京子は私にとって「こんな文章書けるようになりたい」と思う作家の一人です。

 

昔「怖い絵」を初めて読んだときに感動しました。物知りで文章のセンスがすごくて。

 

真似したい由。

 

以来中野の本はちょくちょく読みたくなります。

 

それで見つけたこの本。

 

「へんないきもの」と「怖い絵」のコラボ本。

 

「へんないきもの」も昔読みました。

 

その時読んで早川については、中野と同じように博学だとは思いましたが、それ以上に、「物事をおちょくるような文章書く人だなあー」って強く思いました。

 

この本でもそれをめっちゃ感じました。

 

 

 

さて、この本読んでみたところ、共著にはなってるけど、執筆をしてるのは早川でした。

 

二人が指定の絵を題材にトークして、それを早川が文章に起こす形式だそうです。かなりの早川流の文章で。

 

中野が「ハカセ」役で早川が「ぼうや」役で会話をしているって感じで。

 

で、早坂はやっぱりおちょくるわけです。全てを。

 

絵の作者を、描かれてる動物や人を、描かれた時代背景とかを、そして中野ハカセをも。

 

私は読んでて一瞬「失礼なことしやがるなあー」とか思ったのですが、中野本人はこういうコンセプトを承知の上でおちょくられ役をやってる、というか早川に自由に自分を料理させているっぽいので、「あ、そういう感じなのね」と納得して読めます。

 

私には「博学でセンスがすごい作家」である中野も早川の手にかかると「魚のエイをやたら怖がる変なおばさん」です。

 

 

 

この本では13作の「怖いへんないきものの絵」が紹介されます。

 

たぶんそのほとんどを中野が選んだんだと思います。マジで引き出しが多い人です。

 

しかし、本のタイトルの「怖い」というのはちょっと強引すぎると思いました。

 

怖いところなんてなーんにも無いただただ「変な絵」もちらほらありました。

 

「怖い絵」でよくあった「絵そのものは普通だけど、それが描かれた社会的背景が不穏」みたいな解釈もちょっとできなさそうな、ただ変なだけの絵

 

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(ただ変なだけの絵の筆頭、「カニに指を挟まれる少年」)

 

しかしまーそのへんは割り切れば、読んでて楽しいし勉強になるし面白い本です。

 

 

 

 ちょくちょく脱線もします。

 

 

例えば蜂が出る絵の回では、蜂の生態の話を特に脈絡も無く解説してきます。

 

早川得意の生物学のウンチク。

 

 

私は個人的には脱線話って長くならなければ好きなのでそういうのも楽しめました。

 

 一番面白かったのは「ヘラクレスとルレネーのヒドラと蟹」の絵の話でした。

 

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伝説上の怪物ヒドラは一応「怖いいきもの」の定義に当てはまるし、実在の生物のほうのヒドラとかの再生能力のウンチク話もあるし、ヘラクレスの神話の紹介が例の何でもおちょくる早川劇場となっていて笑えました。

 

十二星座のかに座のあいつはこいつで、その神話は私も聞き覚えがあります。

 

あの蟹はヘラクレスがヒドラ退治するために戦ってるときに、ヒドラ側についてヘラクレスを襲おうとしたけど、あっさり踏みつぶされて死んじゃった蟹です。

 

よく考えたらただの蟹がヘラクレスに挑むなんて確かに無謀な話です。

 

でも果敢にも挑んだその勇気を女神ヘラに労われてお空の星座にしてもらえた、弱いけど勇気のある蟹なんですよね。

 

蟹を見直しました。

 

 

面白い本でした。

 

期待していた中野京子の文章は読めませんでしたが、結構楽しめて、そして蟹を見直せました。

 

怖いへんないきものの絵 (幻冬舎単行本)

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  • 発売日: 2016/03/25
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へんないきもの (新潮文庫)

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