早川書房 ランドール・マンロー著「ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか」って本読みました。
これは漫談の本でした。作者は読者が投稿した科学質問に答える形で、ただ自分がギャグを言いたいだけです。
マーベル(ディズニー)のアニメ「ホワット・イフ…?」とは無関係です。
あれは今年2021年のアニメですが、これは2015年に出た同名なだけで全く無関係の本。
さて。原題は「WHAT IF ? SERIOUS SCIENTIFIC ANSWERS TO ABSURD HYPOTHETICAL QUESTIONS」。
直訳すると「不条理な仮説の質問に対する深刻な科学的回答」。不条理(笑)。
作者マンローは自分のサイトで棒人間漫画や理系オタクのための人生相談をやってる人で、変な科学質問に科学的屁理屈を以って回答するって活動をしてるらしく、それが本になったものです。
きっと読者も「変な質問をしてやろう」と投稿してるんだと思います。
理系&アメリカンジョーク的な62個の質問に、作者が科学的知識とアメジョで回答してる形式の本です。
質問が本当に変なのばっかでした。
タイトルにある「ボールを光速で投げたら」はこの本ではかなり無難なほうです。というかこれはありきたりですよね。
ありきたりなのは他にも「地球上の人間が全員同時にジャンプしたらどうなる?」とか、この手の科学質問コーナーではよくある質問もいくつかあります。
ちなみに野球ボールを光速で投げたら、スタジアムはクレーターになるそうです。そして打者は死球を受けたとみなされ、1塁に進めます。
変な質問の一例。
「モグラを1モル(6022垓1412京9000兆匹)集めたらどうなりますか?」
「Facebookの登録ユーザーで、死んだ人が生きてる人の数を上回る日はいつかきますか?」
「生肉を空から落として、地上に到達したときにいい焼き加減のステーキにするには、どれくらいの高さから落とせばいいですか?」
「女性が自分の幹細胞から精子を作って、それを使って自分が妊娠したらどうなりますか?」
「マリアナ海溝の最深部に四次元の排水口を作って、地球から海の水を抜いたらどうなりますか?」
などなどの不条理な質問に、作者が物理や化学や数学を駆使して回答と言う名の漫談を繰り広げます。
読んでてなかなか笑えて面白いです。
ちなみに回答は。
「モグラの死体でできた小さい惑星が一つ生まれて、数千年後に凍り付く」
「2060年か2130年あたり」
「高度250kmあたりから落とせば肉が加熱され始めるけど、木っ端みじんになるので無理」
「深刻な遺伝子損傷を受けたクローンが生まれる」
「生き物は絶滅するけど海水は半分くらいは残る」
漫談の合間にそれなりの回答を(こじつけとは言え)ちゃんと提示するところがすごいです。
中でも面白かったのは元素周期表でした。
「元素周期表を、その元素の実物を集めて同じ大きさのブロックにして周期表の通り並べたらどうなりますか?」という質問。
現在118種類ある元素のうち、80種類までは頑張ればその実物を集めることができるようです。
法や安全や健康をかえりみなければ90種類まではいけるそうで。
残りはあまりに放射能が強かったりすぐ消えてなくなるので集めるのは現実的には不可能。
しかしそれでも全種類を10cm3くらいの四角い固まりにでもできたとして、並べて積んだらどうなるか?
作者はそれを(空想で)実況してくれます。
元素数の少ない上の段から集めていくと、最初に出てくるやばいのは3段目のリン(P)。自然発火します。
さらに隣に硫黄(S)、塩素(Cl)、上の段にはフッ素(F)があり、高温で反応すると六フッ化硫黄とかやばい毒ガスが生まれるそうです。
その場にいる人は死に、建物は消失するでしょう。と。
しかしそれでも4段、5段、6段、7段と積んでいきます。
7段目の超ウラン元素は本来は粒子加速器の中で数分だけ存在するようなものなのですが、それを全部固まりにして並べたら……地球が滅びます。
並べた瞬間に爆発し、放射性降下物が降り注ぎ、核爆弾が爆発し続けるような状態が続くんだそうです。
そりゃそうだ。
でも実況を読むとつい笑ってしまいます。
62個の質問は全部が面白いというわけでもありませんし、中には無理に面白いこと言おうとしててちょっと苦しいのもあったりしますが、でも面白い本でした。
あと科学の知識もちょっとだけ勉強になりました。