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「辺境メシ」感想 高野秀行は本当に本当に変な人だ

文藝春秋 「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」 高野秀行著 って本読みました。

 

高野秀行は好きなノンフィクション作家で何冊か読んだことあります。

 

その時から思ってたことですが、この人は本当に変な人です。これ読んでさらに思いました。

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探検家なんでしょうかね。世界中のいろんな辺境に実際に行く人です。

 

私は昔「謎の独立国家ソマリランド」を読んで初めてこの人を知って、「恋するソマリア」「アヘン王国潜入記」とかを読みました。

 

あとスマホのキンドルにも「何かあってその場で読書でもして時間つぶしする必要がある時」用のために何冊か未読のを入れてあります。

 

どれも面白いです。

 

しかし本を読んでると「どういう人なんや?」と思います。

 

 

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(「豚の血」の料理を手に満面の笑顔の高野)

 

高野のまずすごいところは、世界中のアジア、アフリカ、中東、南米あらゆるところにせっせと行く探求心と行動力と、現地の言葉をマスターする知能です。

 

一体何カ国語を話せるんでしょう。超マルチリンガル。それだけで常人とはかけ離れた天才頭脳です。文章力も面白くてすごいです。

 

しかしその一方で、彼は本で自分の失敗談もよく書いてるのですが、それに「はあ?」ってなります。

 

例えば、どこかの国の市場で未知の食材を見つけて、店の人に何の断りも入れずに勝手に試食して怒られた、みたいな。

 

そんなの「ちょっと食べていい?」って聞けばいいだけのことなのに。様々な市場を見てきたならなおのこと試食のルールが市場によって違うことくらい分かりそうなのに。

 

他にも騙されたとか盗まれたとか同じ失敗を繰り返したとか、そういう少し気を付ければ防げそうな失敗が多いのが、なんていうか言葉が悪いのですが、脳の特定の分野が天才なかわりに別の分野がバカな人なのかなと思ったりします。

 

そして、それをありのまま本に書いてるってことは、彼自身もそれを自覚してるってことで、そこも自分のノンフィクション作品の個性の一つとしてる印象がします。

 

実際私は「立派だなあー」「間抜けだなあー」と両方思いつつ、そういうのに惹かれて彼の本を読みたくなってるのかもしれません。

 

今57歳?30年間世界中を旅してきたそうで、無事に生きているのが何よりです。どこかの国で誰かを怒らせて殺されても全く不思議じゃない人です。

 

(でも最近コロナに感染したとか)(これは対岸の火事か他山の石か)

 

 

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この本はそんな彼が世界中で変な物を食べてきたエッセイです。

 

なんてんでしょうね。私としては虫とかヘビとかカエルとかを食べる文化にはさほど拒否感はありません。

 

挑戦した経験はほとんどありませんが、もし自分が空腹で他に食べるものが無いなら食べると思います。あとその国ではそれが普通で合理的な食べ物だったりすることを否定する気も無いです。

 

コンゴでゴリラを食べるのも、アンデスでモルモットを食べるのも、タイでコオロギを食べるのも、ソマリアで謎の草「カート」を噛むのも。

 

ただ希少な種を食べることにはもちろん問題はあります。現代では。

 

しかしそれとて非科学や感情を排除して合理的に判断することが大事だと思うし、「この動物を食べるな!」と運動する人達の言動もまたしっかり見て判断材料にすべきだと思ってます。

 

まーそのへんはこの本にはあまり関係無いです。

 

 

 

 

さて。ぶっちゃけ世の中にはゲテモノ食の本はそう珍しくありません。

 

この本がそれらの中で異彩を放ってるのは、その題材のレアさ度合いそのものです。本当に私のような無知な日本人には国名以外何も知らないような国の、そのさらに辺境の、現地ですら食べる人がほとんどいないような物に、わざわざ突撃しに行ってるところです。

 

それが高野のポリシーだそうで。

 

しかも行った国の数が本当に多くて、きっと行ったことない国のほうが少ないくらいなんだと思います。

 

例えば、「川魚を竹の中に入れて火にくべて蒸した密林ならではの料理」は、ペルーにもミャンマーにもあるそうですが、ペルーのは手間をかける割にまずくて、ミャンマーのはすぐ作れる割に超うまいのだとか。

 

こんなのこの世で彼くらいにしかできない知見なのでは。

 

 

読んでて「うまそう」「食べてみたい」とはほとんど思わないのですが、感心したり呆れたり退屈しない本でした。

 

 

 

ただこの本はちょっと注意事項があって、「人間の胎盤」を食べるエピソードがあります。

 

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ここは読んでて絶句しました。

 

中国の女性が出産の際に新生児と一緒に排出した胎盤、を、食べるという。

 

昔は人間の胎盤やミイラや漢方薬になってたことは知ってましたが……。

 

また人は極限の飢餓状態になると人肉を食べてでも生き延びようとすることは否定できませんし。

 

野生の哺乳類は出産したらすぐに自分の胎盤を自分で食べることがあることも知ってます。

 

しかしそれでもこのエピソードは私にはちょっとショッキング過ぎました。

 

なんたって、胎盤の実物の写真がカラーで載ってるんですもん。

 

実際に食べても健康上のメリットは無く肝炎や溶連菌感染症のリスクがあるだけだとか。

 

私がもし高野や編集者だったらこれは本には載せないです。

 

その点でも、やっぱり彼は変な人だと思いました。つくづく。

 

 

 

 

 

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