原書房 クリス・フィッチ著 上京恵訳 「図説 世界地下名所百科 イスタンブールの沈没宮殿、メキシコの麻薬密輸トンネルから首都圏外郭放水路まで」って本読みました。
この地球上、じゃない、地球下にあるいろいろな名所を紹介してくれる本でした。
その中で一つ、「初めて知った!」「これはすごい!」「これが実用化されたら人類の未来は明るいんじゃね?」って地下施設があって、それを知れたのが大きな収穫でした。
とにかく「地下にあるもの」をテーマに、世界各地の40箇所の「地下名所」が紹介されています。
それぞれに文章と地図と現場写真が載ってるので、見やすい本です。
4部構成で、人の手が加わってない「自然の造形」、昔の遺跡とかの「古代」、20世紀までくらいにできた「近代」、21世紀以降建造されたのや現在進行形とかの「現代」にカテゴリーされてます。
「自然の造形」はその名の通りの自然の洞窟とか、「古代」は洞窟に古代の人が手を加えて住居や寺院などなどにしたもので、このへんは知ってるのも多くて「ちょっと面白い」って程度でした。
「スケールでかいなあー」ってのはありましたけど。
始皇帝陵とかね。
あと「世界で一番深い洞窟」とかね。深さ2212メートルの穴。
そして日本にある名所は1点だけ載ってました。
日本は島だし小さいし、大陸とかで何千万年もかけてできるようなすごい洞窟とかはありませんけど、人工物なら。
紹介されてるのは「首都圏外郭放水路」。
これは確かに特筆に値するのかも。
東京は地理的にめっちゃ水害が起きやすいのに大都市になっちゃったもんだから治水が大変で、超巨大な放水路や貯水槽を地下に作ったわけで、世界的にも珍しいっぽいです。
ただ、なにやら21世紀は、超超超ものすごい台風や洪水が発生したらこれでも対処しきれないのではないかって予想もあるようで、なかなか不安を掻き立ててくれます。
他にも、今人々が使ってるスマホには様々なレアメタルが必要で、その中でもコバルトはアフリカのコンゴのかなり危険な鉱山で採られてて、そこで働く鉱夫は劣悪な環境なのに賃金が低くて、人道的にアレなのに、スマホの需要のために世界中がこれを見て見ぬふりしてる、みたいな、耳の痛い話もちょくちょく載ってます。
しかし少ないながらも感嘆や希望のある話もありました。
スイスフランスにある巨大な粒子加速器が量子力学の発展を期待させてくれたり。
ただそれ載せるなら日本のスーパーカミオカンデも載せてほしかったですけど。
そして私がこの本で初めて知ったのはアイスランドにあるヘトリスヘイジと言う施設。
地熱発電所から発生した二酸化炭素を大気にまき散らさずに、捕獲して2年で玄武岩に変えてしまうという技術があるのだそうです。
二酸化炭素を石に変える技術。
めっちゃすごいです。
これが全世界でできたらCO2問題解決するんじゃないですか?
世の中にこんなすごいものがあったのか。
こういう情報もっと世界中に広めて、発展すればいいのに。
私は読んでて本当に感動すらしました。
教えてくれてありがとうって気分です。
いい本でした。
しかし一点だけケチをつけたい部分もありました。
文章の中で距離の数字が出てくると、メートルのあとにかっこでヤーポン法の距離をいちいち併記してるところ。
これは意味が無いしただ文章を読みにくくさせてるだけです。
この本を日本語で読もうとしてる読者で「ヤーポン法の併記があって助かるわ~」なんて人1%もいませんって。
原著がヤーポン法で書かれてたとしても日本語訳にはメートル法以外求められてないですって。
みんなが知りたい地下の秘密 洪水時のあふれた水を取り込む地下トンネルとは?地下鉄の上り線と下り線を同時につくる技術とは? (サイエンス・アイ新書)
- 作者:地下空間普及研究会
- 発売日: 2010/04/19
- メディア: 新書