ヤングアニマルでtugenekoが連載している「上野さんは不器用」。こないだまでアニメもやってました。
アニメ化の前から存在は知ってて軽く流し読みしたことはありましたが、アニメをちょっと視聴してみたら意外と面白かったです。
しかしまー、本当に意味不明な作品だと思います。
ファンの人でも「この作品は意味不明だ」って言われても否定する人はまずいないかと思うけどどうでしょう。
意味不明っぷりを楽しむ作品だと、私は解釈しました。
でまー実際に楽しくて面白いわけですけど、やっぱり意味不明。
えー、主人公の科学部部長の中3女子、上野は超天才科学者でドラえもんレベルの超SF的発明品をなんでも作れるほどだけど、一つ下の科学部員田中(中2男子)に片思いしてる普通の女子中学生っぽい一面もあり、でも思いを素直に伝えることがどうしてもできなくて、毎回下手くそな色仕掛けをしては失敗ばかりしている、と。
ここまでは、理解できます。
あまりに超SF的な発明品はそういう漫画的世界観なので全くおかしくはないです。
恥ずかしがり屋なのになぜか色仕掛けしようとするのも、まー、「エロっぽいラブコメってジャンルだから」で納得できます。
上野の持つ複雑な恋する乙女の気持ちも理解できます。ここまでは。
しかし、その色仕掛けの内容が、本当に、他の数多のラブコメとはなんかもう次元が違い過ぎてて唖然とすることしきりです。
例えば上野はよく自分が身につけている下着を田中に食べさせようとします。
なぜそうなる。
どういう心理なのか、さっぱり!分かりません!
これはつまりは「真面目に考えたら負け」系のノリであることは、もちろん察してはいるのですが。
ちなみに下着は発明品で食べられる物質に変換されています。
また、色仕掛けのために食べさせるだけじゃなくて、彼女自身も食べさせたいという願望を持ってるような気もします。
自分のおしっこを濾過した水を田中に飲ませようとしたりとか。
ひたすら謎です。
上野が毎回作戦を決行して、でも全然うまくいかなくて、そのときの噛み合わないやりとりやワードセンスは面白いです。
「アレのやつ」とか、本当に独特で個性的なワードセンスです。
でもやっぱり私は見ててどうしても頭が勝手に「なんでそんな作戦なのよ」とつい思ってしまうわけです。
上野にとっては、田中にお菓子(下着)を振舞うことよりも、普通に「今度一緒に遊びに行かないか」とか誘うことのほうがよっぽど困難なんでしょうかねえ???
歪んでるなあー。
しかし田中のほうもまた、上野以上に歪んでる男です。
こっちもこっちで男としての彼の心情の理解に苦しむことばかりです。
どうやら田中は性欲が全くない男らしくて、上野の下着を見たり体を触れ合わせたりすることに何の感情も持っていません。
上野が必死に「お前私に触りたいんだろ!」みたいなこと言ったときでも、本当に「???」と意味を理解してない表情をします。
「僕は部長に何されても何も感じないけど、部長は色仕掛けをしてるのかな」という段階の認識すら持ってないようです。
性欲もないし、その客観的概念も察しない男。
もう「読者に感情移入などさせるものか」というくらいに徹底されていて、まー意図的にそういう演出にしてるのだろうことは理解できますが。
しかしそれは同時に、上野はこんな田中のどこが好きなのかも全く理解できなくもさせていて、猶更悩ましくさせている感もあります。
うーん、分からん!
また、田中は上野に全く気がないようでいて、実は憎からず思っているのではないかというふしもあるのですが、それがかえって田中という男の理解をさらに遠のかせます。
田中は本当に上野をどう思っているのか?
エロスがなくてアガペーだけで思っているのか?
しかし好意があるとしたら、普段の上野の作戦にあまりに反応つれなさ過ぎやしないか?
あと上野は何度作戦失敗しても毎回毎回同じような作戦を繰り返し、そして作戦前には妙に自信満々で、「学習能力ないのかよ」ってつい思ってしまいます。
マジで謎です。
読者の想像に任せているのか……。
アニメ視聴しててよく思ったことなのですが、これはこの作品に限らず世の中の全ての作品で言えることなのですが、ナンセンスとかシュールとかハイテンションとか、意味不明な世界を楽しむ系の作品は、「面白さ」と「意味不明さ」のバランスは難しいですね。
「意味不明だけど面白い」「意味不明なのが面白い」と思うこともあれば、「面白いけど意味不明」「意味不明過ぎてちょっとひく」って思うこともあり、本当にこの両者の危うい均衡の上に立っている作品だと感じました。
原作よりもアニメのほうが、ビジュアルの軽快さ、動きのかわいさ、声優の好演で「面白い」の度合いがかなり高まっているので、結構見やすかったです。
アニメがヘボかったら大爆死の危険も大いにありました。
ニコニコでは再生数がかなり多かったので、好評を得ているのだと思います。円盤の売り上げは知りませんが。
ただ、こういうノリ受けつかない人もいるでしょうし、特に女性だとハードル上がりそうですし、決して万人に勧められる作品ではないとは思います。
そういえばこの作品は下着だとかエッチなやりとりとかが多いけど、登場する女の子たちは、脱いだあとのパンツの絵はあっても、パンツをはいてるところの絵は全くなくて、そのへんの妙な匙加減は「みつどもえ」と同じ系統かも。
しかしまー面白いことは面白い。
サブキャラもみんなどこか変で、まともな人いません。
山下は一見常識人ですが、自分の(脱いだ)パンツを田中に見られても平然としてたり、やっぱり思考回路が不可解な面があります。
歪んだ男と女が織り成す謎ラブコメ、本当意味不明な作品ですが、もしアニメの続編とかになればまた視聴したいとちょっと思ってます。
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