アニメのどろろ、面白いです。
手塚治虫の原作はずっと昔に読んでほとんど覚えてなかったんですけど、アニメ視聴してるとそこそこ記憶が戻ったりもしてます。
それで昔原作読んだときの素朴な疑問も蘇ってしまいました。
鬼神にとって百鬼丸の体のパーツってどれくらいの価値があるもんなの?
今のアニメは原作とはかなり改変されていて、ぶっちゃけ別物と言ってもいいくらいです。
それでもアニメは面白いから「原作改変はクソ」の定番を見事に打ち破れてると思います。
ひきこまれます。今のところ。(「結末がクソ」になる不安が無いわけではありません)
原作では百鬼丸が鬼神に奪われた体のパーツは48個だったのがアニメは12個に改変されてましたが、数が違うだけで基本設定は原作踏襲でした。
えー、戦国時代のある時期、飢饉に見舞われて民が苦しんでるのを見かねた醍醐の国の領主、醍醐景光は、仏に祈っても何にもならないのでついに鬼神と契約をし、おかげで土地は潤い国は豊かになったけど、その代償として息子の百鬼丸は体のあらゆるパーツを奪われてしまったわけですが。
鬼神ってのは一般的な悪魔と解釈してよさそうな存在っぽいですね。
景光が自分の野心のためだけではなく、国を考えての現実的な領主の判断も含めて契約決行したのは原作とは違うらしいです。
このテーマをアニメはガッツリ提示してきてて見応えあります。
一人を犠牲にしてそいつに地獄を味合わせれば他のみんなは安寧に豊かに生きていられる。
自分が「みんな」の側なら「一人を犠牲にしよう」って思うのは人間無理もないです。
しかし自分が「そいつ」の側ならたまったもんじゃないって思うのももっともです。
(自己犠牲で受け入れるのも選択肢の一つですが、百鬼丸はそれを選ばなかったと)
またもし「そいつ」が我が子なら?
もし自分が「みんな」を政治する責任のある立場だったら?
ズシンと重苦しいテーマに、どろろの親が残した財宝も絡まって、どんな結末になるか不安で楽しみです。
しかしまーそういうテーマとは別に同時に思ってしまうのが、百鬼丸の体のパーツの価値問題なわけです。
鬼神どもは一人の赤ちゃんの体のパーツを貰っただけで、小国を五穀豊穣にするくらいの見返りを与えてくれてるわけです。
戦や飢饉や病などなどでそのへんの人々が簡単に死にまくる世の中で、人間一人が虫けらのように扱われる世の中で、なんで鬼神どもは赤ちゃん一人の手足とか感覚とかの断片程度のものをそんなにありがたがるのでしょう???
だったら、例えば、エグい想像になりますが、景光はそのへんの弱者を100人誘拐してきて地獄堂に連れて行って、体をバラバラにするなり責め苦を負わすなり殺すなりして、100人分の肉体とか魂とかを鬼神どもに差し出せば、醍醐の国はもっともっと豊かになりそれこそ天下取れるくらいの国力を得られるんじゃないかって思ってしまいます。
「悪魔と契約する」っていうんならこれくらい極悪非道なほうが感じ出ます。
史実でも、暴君が大勢の赤ちゃんとか無垢な乙女とかをアレするっていうの、そういうのいくつも実例ありますよね。
というかアニメ本編でそんな話ありました。小さな村が旅人を妖怪に食わすかわりに村を豊かにしてもらってた話。
でも景光が生け贄に捧げたのは百鬼丸一人の体のパーツだけ。
えらくコスパがいいです。
納得がいく解釈として今ぱっと思いつくのは、「百鬼丸が特別」か「景光が特別」かのどっちかかなあー。
原作の百鬼丸はテレパシーとか何かすごい超能力的なものを持っている人間でした。アニメの百鬼丸はそういうのは無いものの、人間性が無い(無かった)ぶん、何か「特別な人間」感があります。純粋な運動能力が超すごかったりとか。
百鬼丸は体や感覚を奪われたことで特別な能力を得たのではなく、もともと何か物凄く特別な人間だったから、鬼神どもにとっては百鬼丸の体のパーツ一つだけでも、そのへんの人間100人の命よりもずっと価値がある、とか。
あるいは鬼神どもの狙いは景光のほうだとか。
自分のエゴのために我が子を差し出すような物凄い業を背負った人間の魂が、鬼神たちにとってはご馳走だから、景光の願いを叶えたり苦悩させたりといろいろ刺激して揺さぶっておいしく育てて、最後景光が死んだときに、熟成された極上の魂をいただくつもりでいる、とか。
こんな想像って、どろろの世界観においては些末な問題でしょうかね?
原作の記憶が朧げだから私がなんか勘違いしてる可能性も否定できません。
でも私は今回のアニメに「なぜ鬼神は百鬼丸の体のパーツ程度の生け贄で、国を豊かにするほどの見返りを与えるのか」の謎の答えを提示してくれるのをほんの少しだけ期待しているところがあります。
そういう面でもどんな結末になるかすごく、気になります。
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