ヤンマガのマイホームヒーロー150話読んで驚きました。
まさかまさかの最終章。よもやよもやのバリよもや。
私は最近の話を読んでて、完結に向けてまとめに入ってるんだろうなって完全に思い込んでました。
完結しませんでした!
でも話そのものはすごく最終回っぽかったです。私が漠然とイメージしてた最終回とそう違いませんでした。
最終ページの「第2部 完結」が「完」だったとしても全然おかしくないです。
いやまーこれで本当に終わりだったら物足りないってのも間違いはないのですが。
クライムサスペンス漫画でよくある最終回といえば。例えば。
哲雄が退院して5年後。
家族は平和に暮らしていた。
ある夜自宅にピンポーンと来客が訪れる。
哲雄がインターホンを見ると、窪が立ってて「よお」って言っていう絵で終わり、みたいな。
私自身はこういう終わり方はむしろ嫌いなんですけど、そんな感じで完結したとしても何もおかしくはなかったわけです。
しかし終わりませんでした!!!
まだ物語が続くという。一体何を描くというのか。
それこそまさに窪が「よお」とまた哲雄の前に現れる物語を描くわけですよね?
いや違うかもしれません。全然予想外の物語になるのかもしれません。
なにしろ予想材料が全然ありません。
どんな物語になっても全然不思議じゃありません。
どうなることやら!
さて、「二部」最終回までの話を振り返ってみますと、「二部の第1話(49話)の冒頭」に描かれた場面に物語は収束していきます。
哲雄は自分の計略で敵対するカルト宗教の村人が大虐殺されたことの罪の意識に苛まれて、でもそれはいつもの精神パターンで、やっぱりまたいつものパターンですぐに平静を取り戻します。本当に毎度の描写です。
で、「窪を殺す」ことを本気で計画します。後から分かることですが彼の「計画」は本当にすごかったです。それも毎度のこと。
その前に月夜見が、哲雄が準備を完了させる時間稼ぎのために窪に立ちはだかりました。
月夜見は結局もう村が壊滅したから生きてても仕方ないって死ぬつもりだったんでしょうかね?教義に則って。
いや、彼は剣や武術の心得があるし、窪は肉体的に疲弊してるし、勝機を見てのことだったのかもしれません。
しかし勝てませんでした。割とあっさり窪にしてやられます。
そういえば月夜見は零花にも負けてました。
結局のところ彼は弱いってことなんだと思います。
閉鎖空間で生まれ育った二世信者で、外の世界の「本気」の人間には勝てないような精神性だったのかなってことを、読んでてちょっと感じました。
しかし彼は死の間際でそういう本質みたいなものに気づき、人間の価値を一面的に見ることの愚かさを叫びますが、結局それはこの村のカルト宗教も窪と同じくらいに狂ってるってことになってしまい、窪自身から嘲笑ながらに指摘されて、そのまま死んでしまいました。
愚かで少し可哀想な男でした。
彼は上に挙げたちょうど49話で初登場し、外の世界に任務として出向してて、ある意味若い頃の歌仙と近い状況だったのに、歌仙はすぐに村の異常に気づいて自分の人生を自分で作れたけど、彼はずっと目を逸らし、気づいたときには手遅れだった。と。
しかしそんな彼の物語もこの作品ではただの前座。
本命はこの後の哲雄と鳥栖の直接対決です。
このへんはなかなか心憎い演出で描かれてて面白かったです。
読者に先に「哲雄には銃がある」ってことだけを見せて、しかし発砲しても全然窪に当たらず、哲雄はあっさり失神KOされます。
この時点で哲雄自身も「武器はまだ隠してたのに通用しなかった」と絶望します。
本当に窪の勝ちです。ここで窪はすぐに哲雄を殺してれば決着でした。
しかし窪は哲雄にとどめを刺しません。
それは「舐めプ」してたこともあるのですが、窪にとっては哲雄と話すことが今この場では何より重要だからです。
私は前回書いた感想ブログでは「窪の心理はまるで分からないけど、彼が哲雄を認める気持ちだけは分かる」みたいなこと書きました。
そしてそこからの二人の会話はまさにそれで読みごたえありました!
自分の計画が失敗して絶望で涙を浮かべる哲雄に、窪は、めっちゃ穏やかで爽やかな笑顔で、「ありがとう」と礼を言ってきます。
窪はたぶんこれまで誰にも話したことがなかった自分の本当に素の本心を哲雄に語ります。
「初めて出会った自分の同類」に!
「殺人は楽しい」「だから今回の村人虐殺の機会を得たのは嬉しかった」「ありがとう」という本心を明かしたあとに、次は哲雄のこれまでの3件の殺人の手口を聞いてきます。
奇しくもそれが両者にとってはこれまでの長い戦いの答え合わせとなるのがちょっと面白いです。
で、それを聞いた窪は笑い、哲雄の頭の良さを素直に賞賛してくるのですが、哲雄にとってはそんな彼のリアクションは困惑の極致。
で、で、で、ついに窪が哲雄の核心を突きます。
「お前もそうなんだろ?」
そうそう。これは私も本当に思ってました。彼の殺人の実行力は異常です。
当然哲雄は反論します。
「僕は家族を守るために」
そうそう。これもまた、哲雄にその道義があるのも確かだからこそ(法律は別として)この漫画がこの漫画として成立してるんだと思います。
しかし窪はその逃げ道をも封じるような発言を畳みかけてきてて、最高でした。
殺人が目的である窪と、殺人が手段である哲雄、そんなに違うか?
哲雄にとっては超重い問いでしょうね。私は「そうだろ」とも「違うだろ」とも言えません。
哲雄は異常性があるし、計画を冷徹に実行する言動にゾッとすることもある(この直後にもありました)けど、でもやっぱりやりたくてやってるわけじゃないことも確かですし。
で、哲雄自身は、自分がどう思ってるにしろ、今は窪と会話して油断させるのが不可欠なわけですから、話を合わせます。
「僕は自分の正体に気づいてなかった」が演技にしろ、本音にしろ。
そこからは哲雄の反撃のターン!
読者にも明かさなかった事前の仕掛けで窪を罠に嵌めていきます!すごいです。
このあたりでは、つまり哲雄は「銃で窪を撃とうとしてると見せかけて」「失敗して道ずれで共に焼け死のうとすると見せかけて」「実は一方的に窪を殺す」って計画を、瞬時に組み立てたってことになります。
この漫画ではこれまで哲雄は様々な策略を見せてきたけど、これが一番すごいかも。ウソ泣きのところとか。
そして改造トラバサミで窪の右足を封じて、あとは発煙筒を投げれば完全勝利。窪自身も「お前の勝ちだ」と。
その瞬間にパトカーが到着!
すごいなこの演出。
哲雄は発煙筒を投げる必要が無くなりました。
でも投げる!
その行為は、哲雄にとっては「僕達は同類ではない」証明となり、窪にとっては「俺たちは同類だ」って証明になったようです。
いいなあ。ナイスライバルです。
このへんを初めて読んだときは、そんな感じで二人の関係性の描写が見事だと思ったことでも、「これでこの漫画は終わるんだ」とも思うようになったのですが。
しかし終わりません。
なんと窪は逃げ切ります。
改造トラバサミで右足をひどく負傷したのに、改造銃の爆発で両手も痛めた筈なのに、疲労困憊なのに、哲雄の罠から完全脱出して、警察の捜索からも逃げ切るという。
化け物やなあ!
そして150話。第二部最終回。
哲雄は警察に保護され、自分の殺人が明るみにもならず、全ての事件の罪は組織に着せられて、生き延びて病院で目を覚まします。
この150話の長い物語はこれで哲雄の勝利。
関わった人間で生き延びたのは、恭一と、小沢と、鳥栖実家の与丞っておっさんくらいで、後はほとんど死んだという死屍累々の物語でした。
竹田も安元も信も甲斐も洋二も胡蝶もみーんなみーんな死にました!
しかし歌仙も零花も無事で、さらに零花に秘密を守ることもできました。
マジで完全勝利。
しかし哲雄は相変わらず罪悪感で苦しみ、でもそれでも歌仙と家族で「捕まるまでは生きていく」と決めて、めでたしめでたし。
……とはならないようです。
哲雄にとっては逃げ切った窪の存在がこれからずっとひっかかることになるわけで、やっぱりそこが第三部で描かれるんでしょうかね???
数年後零花が警官になり恭一が出所して、とか?
いやいや下手な予想なんか意味無いです。
どんな話になるか本当に楽しみです。
連載再開は来年の春とのことで、半年後くらい。待ち遠しいですね。
しかし「本当に予告通りに連載再開してくれるのか」って心配も湧きます。
でもそれに関しては、かつて第一部が終わって第二部が始まったときにはだいたい予告通りだったっていう実績があるので、私はこの漫画に関しては「作者が投げて未完で終わるかも」とはあんまり思ってません。
信じて待ちます!
期待してます!
頑張れマイホームヒーロー!!!