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「ホテル・ネヴァーシンク」感想 イラチには向かない年代群像物語

「ホテル・ネヴァーシンク」アダム・オファロン・プライス著 青木純子訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ って本読みました。

 

気軽に読むにはいい本でした。さくさく読めました。

 

ただまー、この本はまー、殺人事件が起きて犯人は誰なのかって話なのでジャンルはミステリーなのは間違いないのですが、それがこの本の主題かというとそうじゃなかったです。読む前はそれを期待してたのでそこはまー、違ってましたが。

 

主題は一軒のホテルが建ってから滅びるまでの約100年間の物語のほう。いろんな時代でいろんな人の視点での小さい章がいくつも集まってできてる年代記のようなもので、私は最初に手に取って目次を見て、それぞれの章で殺人事件の謎解きのパーツが少しずつ集まっていく物語なのかなと予想したのですが、そういう感じではなかったです。

 

いろんな人の人生とか感傷とかホテルの栄枯盛衰のほうに重点が置かれてるって感じました。

 

なので、殺人事件の謎解きを期待して読むと、イラチ(せっかち)な人だと「もうそんなんどうでもええから殺人事件の話してや」ってなりそうな気がします。

 

私自身そうなりかけて「そういう感じじゃなさそう」と察してからは切り替えて「これはホテル物語なのだ」と意識して読みました。以下一応ネタバレなし感想。

 

 

 

 

ニューヨーク州の田舎に1900年ごろから一人の偏執的な男がでっかい屋敷を建てることに人生を費やし、1931年に4階建て93室の洋館になったあたりで彼は自殺し、負債だらけだったので競売にかけられ、落札したのはこれまた偏執的な男でそれでホテル経営を始めたらうまくいって、1950年ごろには由緒ある人気ホテルになりました。

 

しかしその年に宿泊客の幼い少年が行方不明になり、事件は未解決のままとなり、それがこのホテルのケチのつき始めになったのか、人気はじわじわと落ちていきます。

 

創業者の娘や孫息子が経営を受け継ぐも1996年に廃業、2012年に屋敷も滅びます。

 

って感じの話。

 

 

で、1950年から2012年までにホテルの経営者やその家族や従業員の視点で時代ごとに語られるのですが、その間にホテルではまた子どもが襲われる事件が起き、犯人は見つからず、最初の子どもの死体がホテルの中で見つかって、さらに周囲の町では7人行方不明になってて、それ全部が同一犯によるものかは知らんけど未解決であることは周辺住民にとっては不気味だろうし、ホテルの人気が落ちるのも単に時代の移り変わりだけじゃなくそれのせいも大きいだろうし、いつしか事件も起きなくなり(犯人が老いた)ホテルも廃業されて、その事件はすっかり「忘れられたもの」ってなってったようです。

 

しかし2回目の被害者アリスは生き延びてて、大人になってもトラウマに苦しんでて自分の人生の区切りのために「あの事件はなんだったのか」を2012年になってから調べ始めます。

 

しかしやっぱりこの本は最初と途中数か所と結末はそれなのですが、それ以外の多くの部分は事件とは関連の薄い人の人生とかお気持ちとかで埋まってます。それがこの本です。

 

アメリカの20世紀前後約100年間での都会と田舎の間の世界と、そこで暮す人々の生活の物語がこの本の大部分です。

 

それはそれで栄枯盛衰物語としてよく語られてる感じでした。

 

 

でもこの本はエドガー賞最優秀ペーパーバック賞を受賞しててそれは探偵小説系らしいから、やっぱりこの本のジャンルはミステリーでしょうかね。裏表紙にも「ゴシック・ミステリ」って書いてますし。

 

犯人はめちゃくちゃ予想通りでした。普段は超にぶい私でも分かるってことは、やっぱりフーダニットは重要ではない本なんだと思います。

 

 

 

 

 

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