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「カササギ殺人事件」感想 読んでて疑心暗鬼になり過ぎる~!!!

カササギ殺人事件 上下 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田蘭訳 創元推理文庫 って本読みました。

 

この本やばいです。私は事前に「トリックがすごくて、アガサ・クリスティリスペクトらしい」って情報を知った上で読んだのですが、その前提だと本に書かれてる文章をどこまで信じていいのか分からなくなってしまい、読んでる途中ではめちゃくちゃ疑心暗鬼になりました。

 

そんな状態になってしまったことも、この本の面白かったところの一つでした。

 

以下ネタバレあり感想。

 

だってねえー、クリスティっすよ?

 

しかも、この小説は主人公スーザンの一人称で書かれてる「手記」であり、彼女が「カササギ殺人事件」って小説を読み始めるところから始まってて、さらにそれは彼女自身が事件の2年後に振り返ってこの手記を書いてるって設定なわけです。

 

そんなん、もう、「じゃあスーザンが犯人なんじゃねえの?」って思いますって。絶対思いますよ。

 

もう下巻の途中あたりでは、そういう想像すら飛び越えて私はアランが死んだことすら本当なのか、つまりスーザンが自分で好き勝手に手記を創作してるだけなんじゃないか、とかまで思うようになってしまい、読んでてここまで疑心暗鬼になった本はそうそう無いです。

 

 

実際にはさすがにそこまで掟破りではありませんでした。いくらクリスティだからってさすがにそこまではねえー。私はクリスティをなんだと思ってるんでしょうね。

 

 

最後に真犯人がちゃんと判明したときにはむしろホッとしました。実のところ私は「トリックを見破ってやる」とか意気込んで細部まで読み込んでたわけでもなく、そのくせただ単に「クリスティだから」ってだけで変な疑心暗鬼状態になってただけでした。そんな自分に笑いました。

 

 

 

で、ホッとして胸中のモヤが晴れると、あとはもう私は、アラン殺しの真犯人、小説の中のサー・マグナス・パイを殺した真犯人、その二つの関連、それら全てが明かされたときにはひたすら素直に感嘆しっぱなしでした。

 

 

なるほどなあー。すげえなあー。本当にマジでこれはすごいわ。いろんな賞とってるだけのことはあります。もし誰かに「なんかすごい推理小説無い?」とか聞かれたら私は文句無しにこの本を推薦します。

 

ミステリー上級者ならこの本ですらも結末を読む前に二つの殺人事件の犯人を当てることができるんでしょうかね?

 

ミステリー初級者の私はこの本のミステリーの要素については謎解きに挑むとかもせずただ読んでただ感嘆しました。

 

 

 

あとこの小説の他の要素について、「嫌な奴が多い」ってのもかなり印象的でした。主人公スーザンですら、初対面の他人をやたらとしょっぱく値踏みして内心で見下しつつ丁寧に話す、みたいな慇懃無礼な人だし、二つの殺人事件の犯人どころか被害者も4人全員ろくでもない野郎でしたし。

 

他の容疑者候補たちもなんかもう微妙に不快だったり頭のネジがちょっとあれだったり、いい人でもスーザンとの会話シーンではお互いへの不満がにじみ出てるようなのばっかりで、しかもその描写が巧みなだけに、モヤ~ッとさせてくれます。見事です。

 

ラストでスーザンが大怪我するときなんか、彼女への同情心が全然湧かなかったくらいです。

 

一方で作中小説の名探偵アティカス・ピュントはかなり毅然としてて善意の人なのですが、しかしそれすらも作者アランの悪意の裏返しであることが判明して、ここまで悪意に満ちてるともう逆に笑えます。

 

そういう嫌な奴だらけの世界観も面白かったです。

 

いろんなところがいろんな意味で面白くてすごいミステリー小説でした。

 

 

 

あと全然関係無い余談。

 

作者ホロヴィッツはずっと昔にイギリスのYA(子ども?)向け小説「女王陛下の少年スパイ!アレックス」ってのを書いてたことがあり、私はこの作品のことは自分が好きな漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の作者荒木飛呂彦が装丁画&挿絵を担当したことで知りました。もう20年くらい前の話?

 

当時のチラシまだ持ってます。

 

 

ホロヴィッツと荒木が、リップサービスでしょうが、お互いを賞賛し合うコメントしてて、当時の私も子ども心にそれがなんか嬉しくてとっておいたのでした。

 

あれからホロヴィッツは本当ににすごい作家になってて感慨深いです。

 

で、この本は日本では全6巻だったのですが、なにやら原作は10巻まで存在するらしいってことを、今このブログ書くためにちょっと調べてたら知りました。

 

あれの続きがあるなら今からでも読みたいわー。翻訳してー。

 

 

 

 

 

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