などなどブログログ

漫画の感想や日記などなどを。

「奴隷のしつけ方」感想 痛烈な皮肉の本……というわけでもなかった!!!

奴隷のしつけ方」 マルクス・シドニウス・ファルクス著 ジェリー・トナー解説 橘明美訳 太田出版 って本読みました。

 

西暦200年ごろの古代ローマの奴隷について解説してくれる本です。かなり変な本で読んでていろんな意味で面白かったです。

 

まーそもそも奴隷なんて題材、道徳的にも心情的にも笑って楽しむ気にはちょっとなれないもので、そういう意味の面白さではなく、視点の斬新さに感心するって感じの。

 

この本の変なところはとても一言では説明できません。

 

古代ローマ人の貴族マルクスが、奴隷のしつけ方を、奴隷を持ってる人やこれから奴隷を持つ人に向けててレクチャーする、という体裁の本。

 

古代人マルクスが謎技術で現代人研究者トナーと通信してローマ人のみならずその文化を知らない全ての人に向けて奴隷のしつけ方の本を共同で製作したという。

 

 

実際に執筆してるのはマルクスではなくトナーです。

 

マルクスなんて人は実在しないそうな。訳者橘が後書きでそう言ってます。

 

トナーがマルクスというキャラを創作して、当時の奴隷うんちくを彼の口から語らせるというのが実際の体裁。

 

ひたすら変な本です。

 

 

 

まー、この本がこういう本であることは、最初に手に取って冒頭をパラ読みすればすぐ察せることなので別に混乱とかはしません。

 

それより私が気になったのは、で、実際に奴隷というものをどう描写するわけ?ってことでした。

 

昔は奴隷が普通に合法で一般的なものでした。古代も近代も。

 

アリストテレスとかはつらい労働を全部奴隷にやらせたから自分は悠々と学問に打ち込めたわけですし。

 

でも現代では奴隷はめちゃくちゃ人権侵害です。さらに今も実際に奴隷状態になってる人は世界中に普通にいるわけで。

 

うまく言えないんですが、「この本はそのへんについてどう折り合いというか落とし前をつけてるわけ?」みたいな興味が湧いて、読んでみることにしました。

 

 

で、読んだところ、この本は元からそういう本ではありませんでした。

 

架空の奴隷制支持者の口から奴隷論を語らせることで、逆説的に当時の奴隷制の欺瞞とか非道を浮き彫りにする、という本ではありませんでした。そこは正直肩透かし。

 

 

でも私は読んでて特に失望はせず、この本が奴隷制の是非は別として当時の奴隷制の実態を、むしろ色眼鏡無しに描写することに力を入れてることが理解できて、そしたらそれはそれでそのことは素直に「なるほどね」と思えました。

 

 

トナーは現存する数少ない古代ローマの歴史資料から、当時の社会や奴隷主や奴隷が、実際にはどんな感じだったかを、かなり真に迫って考察してます。

 

 

虐待暴力差別もあれば信頼愛情救済もあった、と。ま、それはそうでしょうね。

 

それで言えばマルクスはかなり奴隷に温情的で合理的で、なんつうか理想的な奴隷主様です。

 

奴隷は財産なのだから、奴隷を無意味に傷つけたら結局は自分の財産を減らすだけの行為だから非合理的だよ、と、マルクスは、「正しい奴隷の扱い方」をレクチャーするわけです。

 

当時の奴隷を無闇に虐待する他の奴隷主に比べたら、マルクスの奴隷になれた人は、主人ガチャに恵まれた、ってわけですねー。(だから奴隷は良い主人に感謝すべき、ってか?)

 

 

あとこの本には直接は書かれてないことなのですが、読んでると、もし自分が奴隷になってしまった場合には、どんな風に振舞えば少しはましな生活が送れるか、ということも、想像できるようになってる感じです。

 

結局のところ、「主人に気に入られる」「ほどほどに真面目に労働する」のが一番だよ、と。

 

反乱を起こしたって仮に最初多少はうまくいっても最後は討ち死にするだけだよ、と。

 

うーん、でもなー、私だったら、奴隷になるくらいならスパルタクスとなって戦って死んだほうがましかもなあー。

 

そこまで勇敢な戦士になれずとしても、カス主人を殴り殺して、捕まって拷問される前にその場でさっさと自害するというのも選択肢の一つかも。

 

いや、たとえ無残な奴隷になっても生き抜いて生き延びることのほうが大切か???

 

ま。やっぱり想像するとしたら、「自分が奴隷を持つとしたら」より「自分が奴隷にされそうになったら」のほうが、よっぽど有益かもね!万一の用心のためにもね!

 

 

スパルタカス [Blu-ray]

スパルタカス [Blu-ray]

  • カーク・ダグラス
Amazon

 

 

 

スポンサーリンク