河合幹雄「もしも刑務所に入ったら」ワニブックス って本読みました。
元・嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長が「刑務所ってどんなところ?」を教えてくれる本です。
作者は全国の刑務所系「刑事施設」「矯正施設」を視察するのが仕事だった人だけあって、表紙やまえがきで「日本一刑務所に入った男」を自認しており、実際そうなのかも。
見てきたムショの数が違うと。
そういう視点がなかなか面白い本でした。
世の中には「刑務所生活がどんなものか」を紹介する本や漫画は割とあります。
一番多いのは受刑者の視点で書いたものでしょうね。元受刑者が書いた。
(そういうのでの最高傑作は花輪和一の「刑務所の中」だと思ってます)
あとは、刑務官の視点とか、受刑者を診察する医者の視点なんてのもあります。
この本の作者は、そういうどこか特定の一つの刑務所に深く関わった人の視点とは全く異なり、全国に59箇所あるという「刑務所巡り」をしてきた人の視点です。
「深く狭く」ではなく「浅く広く」の視点。いや、浅いって感じもしません。ムショの専門家?みたいな。
「◎◎刑務所は過ごしやすくてお薦め!」みたいな情報は載ってませんけどね。
つうかぶちこまれるムショを自分では選べません。
ムショ暮らしって興味ありますよね。
怖いもの見たさと、「もしかしたら自分もいつか入ることになるかも」なんて意識とで。
自分が入る可能性は、無い……とは思うけど、絶対の自信を持って「無い」は言い切れない、みたいな。
いや、無いかなあー。いや、 あるかなあー。
あ、いや、私は今なんかやらかしてるってことは何も無いんですけど。
とま興味あります。
実際、作者は大学教授で、学生に様々な見学会を企画してるそうなのですが、「刑務所を見学できる」会の時にだけは申込者が殺到するのだそうです。
そりゃそうだ。私も参加したいですもん。
興味のある人は世の中に割といると見ます。
さて。本の中身はというと、メインは目次のこんな感じで、受刑者の生活を各項でいろいろ浅く広く教えてくれる感じです。
その中のいくつかは「受刑者側」の本で読んで既に知ってることも多かったですが。
私が「なるほど参考になる」と思ったのは「入るまでのプロセス」でした。何の参考かはともかく。
何かをやらかして警察に捕まって、刑務所に送られるまでの詳細。
日本で今ムショ暮らしをしてる服役囚は5万人くらいなのだとか。(アメリカは220万人)(中国やロシアもたぶん100万人くらい)
よっぽどのことをやらないとムショ送りにはならないようです。
窃盗の累積程度ではそうそうなりません。麻薬でも一度目ならならないかも。
ほとんどは不起訴か罰金か執行猶予か。
捕まる(書類送検される)のは毎年220万人で、うち起訴されるのは10万人、実刑食らうのが3万人だそうで。ほぼなりません。
一発でなるとしたら、やっぱり、殺人……とか。
で、もし私が誰かを殺して捕まって、いろいろ細かい手続きを経て(そのへんも書いてます)、ムショに入れられるとして。
送られるのは大体自分の同じようなタイプの受刑者が入ってるところになるようです。
犯罪傾向や病気障害や教育の度合いで細かく分類されます。
いきなりガチのヤクザと同じ檻に入れられることはありません。
安心ですね。
独居と雑居はどっちがいいでしょうね?
個室か、5人くらいで同居か。
どっちにもメリットとデメリットがあります。
大体の人は雑居のほうがマシと思うそうです。
私はそれでも独居のほうがいいかなあー。
日本では今は建て替えとかで独居のほうが増えている傾向にあるそうです。こういう情報はこの作者にしか書けないことでしょうね。
高齢化や医師不足は深刻ですが、「部屋が足りない」「過密」は解消してきてるそうです。
やっぱり入りたくはないものです。刑務所なんて。
でも思いますよね。
世の中には「刑務所のほうがマシだ」という世界もあると。
私も、ムショ暮らしの恐怖よりも、自分がある日地獄の生活になって、どうにもならなくなって、何かを決行して捕まってムショ暮らししたほうがマシだと思うような事態になる恐怖のほうが、より恐ろしいかもしれません。
ムショも怖いがシャバも怖い。
ってことを、読んでて一番強く思いました。なんか。