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「55」感想 主人公を可哀想だとなぜか思わない不思議な小説

「55」 ジェイムズ・デラーギー著 田畑あや子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 って本読みました。

 

良かったです。なんか妙に不思議な読後感だったところが。

 

私の読書感想ブログはいつも普通にネタバレありなのですが今回は特に感想が核心に関わるのでいきなりネタバレから始めます。

 

 

 

 

ラストのラストで主人公チャンドラーの幼い娘サラと息子ジャスパーはどうやら死んでしまったようで、チャンドラーのそれまでの言動には落ち度はほぼ無くてあまりにもむごい仕打ちな筈なのに、私はなぜか彼を気の毒だとはあんまり感じませんでした。

 

読み終えてこうやって考えをまとめて感想ブログを書こうとしてる今の時点でもなんでなのか自分でよく分かりません。わかんないまま書いてます。

 

なんでこんなにチャンドラーにシンパシーを持たないんだろう。不思議です。

 

マジで彼は悪くないです。一番悪いのはミッチです。子ども達が助からなかったのは半分はミッチのせいです。そしてそもそもの実行犯ゲイブリエルには心情的に同情する余地があります。だから半々って印象です。

 

母親の元妻のテリーもちょっとひどい。彼女がしゃしゃり出てこなかったらこの事態は防げた筈です。

 

ゲイブリエルの義父母ジェフリーとダイナもかなり悪いです。彼らが養子にやったことは完全に虐待でありこの小説の中で一番嫌悪感が湧きました。

 

本当にチャンドラーって何も悪くない筈です。10年前の2002年の事件のときだって悪いことは一つもしてません。

 

なのに、私は彼の子どもたちが殺されてしまっても、「まーそうなるかもなあー」と納得感すら湧いてます。

 

なんでなんでしょうね???

 

この小説は巻末の訳者あとがきにもある通りかなり粗削りです。ミッチの犯行内容や自ら警察に捕まろうとするところとか行動はあまりにも突飛だと思ったし、悪いことが重なり続けることにもサイコロを10回投げて全部1が出たような都合の良さを感じます。

 

それにチャンドラーは、過去でも現在でも本筋でも脇道でも常に、百点満点とはいかないものの彼なりに毎回最善を尽くそうとしてたのに、その都度微妙に悪い結果になってしまい、それが積もり積もって最悪中の最悪の結果を招いたような話でした。こっちもサイコロでした。

 

チャンドラーはそんな感じで徹底的に理不尽な扱いを受けたんですけどね。

 

 

なぜ彼にいまいち同情する気持ちがわかないのか。それは、ゲイブリエルが地獄の生活を送らされて彼の地獄論に(彼がそう思うようになるのもやむない)一定の説得力があったことと、チャンドラーが粗油外において日和見の八方美人だったからでしょうかね。

 

10年前のチャンドラーがゲイブリエルことディヴィッドをもう少し気にかけてれば彼が義父母に虐待されるのを防げました。

 

また今も仕事にかまけず我が子二人をもう少し気にかけてればきっともっと意思の疎通や事前予防もできててゲイブリエルに誘拐されることも防げました。サラが9歳でもうスマホ中毒になってるのは、ちょっとねえ。

 

彼は人生の随所で毎回自分の立場を言い訳に誰かにちょっと薄情な選択をし続けてて、それでいて内心ではいっちょまえに罪悪感を感じてる描写がいちいちあることが、言い訳がましい八方美人野郎に見えたんでしょうかねえ?

 

いやあー、それでも割に合わない筈なんですけどねえ?

 

ミッチやテリーのほうがよっぽど傲慢だし、街の人々にも自分勝手な馬鹿がちらほらいるし、マスコミは相変わらずマスゴミだし、チャンドラーはやっぱり悪くない筈です。

 

でも。今回の事件が世間に明るみになったらミッチやテリーや義父母夫妻の罪深さも世間に知られるわけだから、彼らもそうとうな社会的制裁を受けるし、チャンドラーはほとんど悪くないことも知れ渡ることでしょう。

 

チャンドラーはこれから社会的には救われます。でもそれは彼にとっては何の救いにもならなくて、それこそがこの物語の肝であり、あ、なんかここまで書いてきて今やっと私はチャンドラーを気の毒だと思えるようになってきたかもしれません。

 

うん。やっぱ彼はなんも悪くないです。

 

彼が可哀想な小説でした!

 

あとついでに冤罪をかけられたヒースも気の毒でした。彼は事件後に警察の横暴を存分に訴えればいいと思います。

 

 

ところで感想とはちょっと話がずれるのですが、私は子どもが殺される結末のミステリー小説に今回ちょっと驚きました。子どもが殺されるのは不謹慎だからそういうのは自粛されると思ってました。

 

でも今回この小説はチャンドラーにとっては我が子が殺されるというのは最悪のバッドエンドなわけで、それを描き切ったことはお見事だと感嘆しました。

 

 

 

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