週刊少年サンデーで大柿ロクロウが連載している「シノビノ」。
実在の歴史上の人物、沢村甚三郎(沢村保祐)を主人公とした幕末時代の歴史もの忍者漫画です。
この漫画で「これめっちゃ新鮮だ」と思ったのが、坂本龍馬を罪のない人を平気で殺すようなかなりの悪人という設定にしてるところです。
坂本龍馬って、もうあらゆる作品で徹底的に使い古されているキャラですが、龍馬が登場するどんな作品でも、ほぼ100%、なんか、粋で優しくて器が大きい快男児って人物像になってます。
そうじゃない作品は、(なくはないのでしょうが)少なくとも私は見た覚えがありません。
そのことについて私はこれまで「坂本龍馬っていっつも善人キャラだよなあー」などと意識したことすらありませんでした。
だからこのシノビノで悪役の龍馬が登場したときに、自分がそういう固定観念を持っていたことに初めて気付いて、それがひっくり返されて非常に感心しました!
「龍馬はヒーローでないといけない」みたいな不文律というか司馬遼太郎へのそんたくというか、そういう聖域の壁をぶっ壊した!…とまで言うと言いすぎか???
織田信長とか徳川家康だったら作品によって善人になったり悪人になったりするから、坂本龍馬だってたまには悪役になってもいいじゃんみたいな。
さて、主人公の甚三郎は幕末にいた「最後の忍者」らしくて、この漫画で初めてその存在を知りました。
忍者が活躍してた戦乱の時代が終わって江戸時代の平和な世界でも忍者の技術を代々継承してきたじいさんです。
そして週刊少年漫画には珍しく、甚三郎自身が任務のために敵と戦う際には、殺すときはきっちり殺す殺陣がありました。
この漫画はその「主人公がじいさん」「ガチの殺陣」が売りな感じで、私もその点がそのへんの少年漫画とはちょっと違うと感じてこの漫画読んでました。
でもこれらのことは確かにこの作品の個性だとは思うけど、「すごい!」と特別に感心するほどではなくて、私はこれまでは軽く読んでる程度でした。
最近登場した龍馬の配役のほうが100倍驚きました!
こっちのほうがこの漫画の最大の個性かもしれません。
私は日本史に疎くて、この漫画でこれまで登場した、ペリー、勝海舟、シーボルト、葛飾応為(葛飾北斎の娘)、河上万斎、若き日の新撰組、そして坂本龍馬などなどの歴史上人物の物語が史実とどれくらい違うのかあまりよく分かってません。
でもまー少なからぬ脚色とか創作が入っていることはさすがになんとなく分かります。
そしてその最大の創作が龍馬を悪人にしているところなのだと思います。
この作品での龍馬は何をしようとしているのかはまだ詳細は不明なのですが、ここ数回だけで、テロリストで自分の研究や娯楽のために人の命を弄ぶことが好きなマジの悪人であることは判明しています。
例えば「どれだけ最小限の手間で人々に戦乱を起こさせるか」を実験するためだけに、平和だった農村に争いの火種を蒔いて村人同士で殺し合いをさせて楽しんだりしてます。
頭脳明晰で悪のカリスマがある人物なようで、忍術というこの幕末時代でのロストテクノロジーを駆使する甚三郎と渡り合っていくようです。
私はこの龍馬には是非極悪非道を貫いていってほしいです!
さすがにもう「実は善人だった」とかいうのはないとは思いますが、彼の悪役度を「実は悪に堕ちてやむない悲しい出来事があった」みたいな同情とか斟酌とかで薄めず根っからの悪人で通していって、そして最後は寺田屋事件をこの漫画なりに大いに脚色して、「龍馬を殺したのは実は甚三郎だった!」というのをやって、華々しく散っていってほしいです!竜馬!
(あ、主人公はじいさんだから今1853年で寺田屋事件が起きる1866年まで現役でいるのは無理か)
(いや、どうせ脚色の歴史だからいつ誰が死ぬ事件を起こしたってOKでしょう)
頑張れ!龍馬!悪として!
そういえば吉田松陰もけっこうなマッドサイエンティストに描かれてましたっけ。