三省堂「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」見坊行徳・三省堂編修所編著 って本読みました。
内容はまさにタイトルそのまま、三省堂が出した1952年~2022年の歴代の国語辞典から消えた言葉(全部で何万語あるのか分かりませんが)のうち1000語を紹介してくれる本。言わば死語の名簿。
なんか逆に「この本に載ることすらできなかった多数の死語」の存在を想像してしまいしみじみしたりもします。そっちのほうこそ本当の死語でしょうね。
でもま、「この本に載れなかった死語」はきっと本当に耳目を引かれることもないぶっちゃけ「つまんない死語」だろうことは容易に察せるので厳選してくれてるのはありがたいことです。
ちなみにひとことで死語と言っても厳密には廃語とか幽霊語とかいうのもあり、辞書から消える理由は様々なんだとか。なるほどねえ。
さて。この本は一般的な書籍ですがかなり辞書の形態をしてて、本当に「あ」~「わ」の五十音順に辞書を読んでるような感じでした。
世の中には「辞書を読むのが好きな奴」ってのがいるらしいです。紙の辞書を調べ物や確認のためではなく読むために読むそうです。
それ自体は私も分からなくはないです。無目的に辞書をパラパラめくって目に入った言葉を興味本位だけで読んで楽しむ感覚は理解します。ただ「あ」から「ん」まで読破したことはないですけど。
この本はちょっとそれをやるような感覚もありました。重度の辞書マニアの世界を垣間見る気分。
「辞書のパロディ」ではなく「本物の辞書」感がかなりあります。そりゃそうだ本物の辞書ネタなんだもん。
本の全体的な感想と言えば、「消えるべくして消えてる」と言った感じで、消えることに納得がいく言葉ばかりでした。
単純に古い言葉だとか、特に三省堂辞書は他社の辞書と比べ新語を載せることが多いらしくそのぶん一度採録した言葉を消すことも多いそうで、その移り変わりを観察できるのは楽しいです。
私自身昔は使ってた言葉も、生まれる前の時代の全く知らない言葉も、どちらも感慨深いです。
意義がよく分からない言葉も多いですけどね。「【先蹴】さきにけること」とか。だからなんだよって感じたりもするのですが、それもまた辞書というのはそういうものだって印象もします。
全く初耳の言葉で面白いと思ったのは「敵本主義」。敵は本能寺にありを略して敵本。日常生活で使う機会があったら使ってみたい言葉です。
他にも「女護が島」とか「ルイセンコ学説」とか。いろいろ面白かったです。
あとは挿絵もいい感じでした。
これは「萌える国語辞典。」といういかにもSNSアカウント名って感じのペンネームのイラストレーターによるもの。素敵でした。
そういや関係無いけど「萌える」ってもう死語になってるでしょうか???