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高校生家族感想 数多の無茶を押し通す一点の輝き

週刊少年ジャンプ仲間りょうが連載している「高校生家族」。

 

本当に何から何まで支離滅裂で無茶な漫画です。

 

しかしただ一点だけ、掛け値なしに「ここは本当に素晴らしい」と言える点があり、その一点だけで数々の無茶が「まーいっか」と思えるようになる独特な個性があると思います。

 

11ページのショートコメディ漫画という「気楽な箸休めポジション」であることを差し引いても。

 

それは、中卒のおっさん家谷一郎の「高校生になりたい」という限りなくひたむきで前向きな情熱と行動力です。

 

 

本当マジで「がんばれ一郎」と、応援というか彼の行動を支持したくなります。

 

ただ、私の抱いたこの印象は、私自身もおっさんだから彼に感情移入してるのであって、本来の少年ジャンプのターゲット層である少年の読者には、息子の光太郎のほうの、家庭と学校の距離感の狂いと「変なおっさん」でしかない父の奇行に苦悩する姿のほうに意識がいくのかもしれません。

 

これはもしかしたら、若者の読者には幸太郎に、おっさんおばさんの読者には一郎に感情移入できるように計算されて執筆されてる?

 

もしそうだとしたらかなりのセンスだと思います。

 

気のせいかもしれませんけどネー。

 

 

 

さて。この漫画を真面目に見て無茶なところを挙げてみたいです。

 

まず、世の中、一般的には、中卒だった大人が高校卒業資格を取りたいなら定時制通信制の高校に入学します。仕事を続けながら。

 

しかし一郎は全日制の高校に通うために仕事を完全に辞めてしまいます。

 

かなりいい仕事をです。

 

彼は中卒でありながら、どこかの会社のマーケティング部に勤めていて、尋常ではないほど稼いでいました。

 

都内の一戸建てに住めるほどの。

 

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舞台である目出鯛高校は都立高。

 

私は東京の不動産には疎いですが、賃貸だろうがマイホームだろうがありえないほどの稼ぎでないと成立しないことくらいは分かります。中卒のおっさんが。

 

 

 

そして妹の春香

 

飛び級のシステムは日本には存在しないことは、この際いったん置いておきます。

 

勉強苦手な中卒の両親から天才児が生まれたことも、まー絶対ありえないってことではないです。

 

そういえば天才女子小学生が飛び級で高校に行くというのは、かつて「あずまんが大王」にもありました。

 

しかし春香は「より高度な勉強をしたい」という目的で飛び級をするわけではありません。

 

ただ「高校生をやってみたい」という気持ちで決行してしまいます。

 

同級生の友達を振り切ってまで。

 

そんなん、君、普通に生きてたら高校生になれるやん。同級生と同じ歩みでええやん。

 

それに8歳の女の子から見たら小学校高学年だって中学生だって「大人」に見える筈なのに、春香は高学年も中学生もすっ飛ばして全く意に介してなくて「なんで中学生には一点たりとも憧れも持ってないの?」とか思ってしまいます。

 

 

 

母の静香は、おかしい点はありません。比較的。

 

彼女が中卒だった理由は、単純に勉強が壊滅的に駄目だったからというのは若干不自然ですが、父と娘の変さに比べたら微々たるものです。

 

 

あと他に思い浮かぶおかしな点は、が高校入学できることとか、血縁者が全員同じクラスになることとか(例えば双子が同じクラスになることはありえません)、家族3人が入学式の日まで自分達が高校入学することを光太郎に秘密にしてたこととか。

 

……以上挙げてみましたが、私は今しょうもない指摘をしています。

 

魔法が出てくる漫画に「魔法なんてこの世に存在しない」と言ってるようなものなのかもしれません。

 

ショートコメディ漫画につまらんつっこみすんなよって話です。

 

でも、なんか、なんつうか、日常の中の非日常系ショートコメディにしたって、限度やバランスってあるじゃないですかあー。

 

 

他の作品で比較すると、「ギャルと恐竜」なら日常生活の中の非日常な要素は「現代社会に恐竜が存在する」の一点だけです。

 

スナックバス江」なら登場人物ほぼ全員が奇人変人で、逆に日常の皮を被った非日常系のレベルにまで振り切れてます。

 

この「高校生家族」の非日常性(無茶な)要素は、一点か二点に絞ってもいなく、徹底的に突き抜けているわけでもなく、例えるなら、わずかなスパイスを効かせた料理でもなく、たくさんのスパイスを調合した料理でもなく、ゲテモノ料理のレベルまで突き抜けているわけでもなく、なんか3,4種類のスパイスを振りかけて微妙に味がとっ散らかってる料理のような変さがある。と思います。

 

しかし、です。

 

ここでやっと冒頭の話に戻るのですが、この漫画はそれでも、読んでて肯定的な印象を抱かせそして楽しめる作品だと感じています。

 

決してまずい料理ではないんです。

 

一郎のそして静香のひたむきでポジティブで紳士的な「高校生になりたい」「人生の過去の後悔をいくつになったとしても取り返したい」「いろんなことに挑戦したい」という姿勢が、なーんか、胸を打っちゃうんです。

 

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「偉い」「立派だ」「なかなかできることじゃない」と思っちゃうんです。

 

二人は夢を叶えるためにマジで並々ならぬ努力をしています。

 

二人の馴れ初めはどんなんだったんでしょうね。中卒で「高校生になりたかった」と思ってる同士で意気投合したんでしょうか。

 

それで自分の家庭がひと段落した頃から、(勉強苦手なのに)こつこつと受験勉強して、仕事辞めても大丈夫なように3年間分の生活の基盤を築いて、そして誰からどんな目でみられようとも高校の制服を着て、定時制ではなく全日制の高校に通って高校生活を送るという夢を叶えた、と。

 

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このへんの経緯いつか本編で描かれるのをちょっと期待してます。

 

二人の夢は高校卒業資格を取ることというより、高校生活を送ることなんですよね。

 

 それをおそらくは10年や20年の年月をかけてこつこつと努力して実現させたという。

 

 

この、マジでリスペクトに値する二人の立派な姿勢が、非常に強い好感を呼び、この漫画のいくつものおかしなところが気にならなくなって、それを前提にした世界観でのショートコメディを素直に受け入れて、そして楽しく読んでしまっています。私。

 

 

 

最新話の15話でもまたそういう印象を強く感じました。

 

一郎はバレーボール部に入部したがり、なぜか同じ一年生新入部員の洲崎に声をかけます。

 

洲崎はすごい身体能力の持ち主で、目出鯛高のバレー部のレベルの低さに拍子抜けしていたところでした。

 

そこへ、変なおっさんが、自分に匹敵するほどの身体能力を見せつけながら、「入部したい」と訴えてくるという。

 

洲崎は入部テストが終わり新入部員受付の期間がとっくに過ぎたことを告げて去ります。

 

しかし一郎は憧れのバレー部入部を諦めず、選手でなくていいから入部させてくれと懇願し、雑用係(マネージャーじゃないのかよ)として入部。

 

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洲崎は、身体能力すごいのに「一からはじめる!」という一郎の姿勢に、なんか心が動いたのでした……って話。

 

ちょっとマジで「ちょっといい話」じゃんかよちょっと。

 

 

 

この漫画は大人気になりそうな感じはあんまりしませんが、ひょっとしたら、結構可能性を秘めてるのかもしれません。

 

私もこれからは、おかしなところはあんまり気にしないようにして気軽に読んでいきたいと思います。

 

 

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