「ナマコは平気!目・耳・脳がなくてもね! 5億年の生命力」 さくら舎 一橋和義著 って本読みました。
動物の生態を紹介する本はよくありますが、これはなかなかの異色作です。ナマコというチョイスもしぶいしタイトルのセンスも面白いです。そして中身もかなりのものでした。全体的なノリはしょ~もないんですけどそこにほんの少しの面白さと真に迫る感が盛り込まれてるのも、ちょっと長所かも。
動物の本を読むのも結構好きです。何かの動物の専門家が一般人に分かりやすく紹介してくれる本はたまに読みたくなります。今回のテーマはナマコ、と。
まず真面目に感想を言うと、この本はそういう需要はちゃんと満たしてくれます。ナマコとはこういう生き物である、世界にはこんなナマコがいる、ナマコと人類の関わり、などなどの専門家ならではの知識を教えてくれます。
私は別にナマコに特別な関心は無かったのですが、この本はタイトルのセンスにひかれて手に取りました。ナイスセンス。
へ~、目も耳も脳すらも無いのか、ナマコって。
5億年前の古生代からいる結構原始的な棘皮生物。古生物や恐竜はちょっと好きなのでそのへんにもちょっと興味がひかれます。
あとは胴体でまっぷたつに切断したら、頭側と尻側でそれぞれ再生して別の個体になるタイプであることも知りました。プラナリアみたいな系。ちなみにプラナリアは頭、真ん中、尻で三つに切断されても三つの個体に再生するそうですが、ナマコはそれは無理で真ん中のだけは再生できないという。不思議な生物です。
そういうちょっとした知識をいろいろと教えてくれます。魚毒とか吐臓とか。
そして動物の本では欠かせないのが人類の罪悪です、この本でもやっぱり人がナマコの乱獲したり生態系を壊したり、しっかりとそういう負の側面も紹介してくれます。
私はこういうのを読むたびにその生き物に謝りたくなります。正直いたたまれないです。
まー動物本ならそれらは本当に基本的な要素です。しかしこの本はそういうのの中でもちょっと変な個性があります。
この本はちょっとした物語仕立てになってて、人間の男性「ぼっちゃん」が失恋の失意で、海に身を投げた……わけではないか、なんか、心が沈んでいき、なんかよく分からん海底の深層心理の境地かなんかに沈み切ってしまうところから始まります。
そこでぼっちゃんはアルマータ姉さんというマナマコと出会い、彼女からナマコの生態を学び、世界の海のいろんなナマコなどなどの海の生き物を教えてもらい、人間の罪深さを思い知り、最後には広大な海の世界を見聞きして失恋から立ち直って、アルマータ姉さんとは笑顔で歌ってお別れする、というストーリーです。
この全体的なノリがまー、しょ~もないんです。いや、子どもだったら素直に笑って楽しめるのかなあ。
私はこのパートはだいたい流し読みしました。
しかしその部分にも、ほんの若干、「別にそれでいいじゃないか」とか「これはこれで何らかの意義がある」と思わなくもない気がして、悪い印象は持ちませんでした。
作者一橋和義はそういう「ナマコの啓蒙」?のような活動をしてるようで、この本でも、またyoutubeでも「なまこも~ど」という歌を発表してます。
この動画はとても素晴らしかったです。この本のノリが正しく凝縮されてます。いやマジでしょ~もないですけどね。
とま、いろんな意味でちょっと奇妙な本を読めたことに妙な満足感がありました。