今月の進撃の巨人は、なんつうか、普段お約束からは最も遠い漫画が、お約束を素直にそのまま真正面から描いたって感じでした。
漫画というものの「黄金パターン」とか「王道」とかいうものを。
そのあまりのど真ん中ストレートっぷりに圧倒されました。
あとそれと、今月号は一つ一つのシーンを見て思ったことがたくさん湧いてきて、省略せずに全部書きたいので、感想文もそれだけ長くなっちゃいました。
さて。冒頭ではジークが独自の生命観を語ります。ジークというか作者諌山創が抱いてる観念だったりするでしょうか。
この漫画の世界は現実世界でいうなら20世紀初めくらいの文明なので細菌学とか古生物学とかももう発達してるんでしょうかね。
ジークは進化論と独自の生命観を混ぜたような話をアルミンにします。じっくり腰を据えて。外とは時間の流れが違うのでいくらでも話せます。
太古の地球、カンブリア紀とかそのあたり、アノマロカリスとか三葉虫とかみたいな古代生物がふよふよしてる海の底。
こいつは、ハルキゲニア、でしょうか?
かつて始祖ユミルちゃんが巨人になった時のあのアレがまさにこれっぽい形状なわけですが、これがそのままアレだと思っていいんでしょうか?
巨人の素の正体は、地球の古代生物???
アレが何かはともかく、ユミルちゃんは、ジーク言うところの「増える」、「増えたい」「死にたくない」という強い思いで以ってアレと融合して、巨人っていう生き物(?)と、道と呼ばれる「死が存在しない世界」を創造した、と。
ジークは確か最初はユミルちゃんのことを「意志を持たない奴隷」と認識してたんですよね。で、自分が王家だからとフリッツ王と同じように命令して従わせようとしたけど、その土壇場で彼女は自分の意志でジークに背きエレンについた、と。
その後地鳴らしが始まって、ジークはそれからずっとここでユミルちゃんが何を思ってたのか一人反省会で考えてた、と。
もしあの時ジークがユミルちゃんを奴隷扱いせず一人の人間として「力を貸してくれ」と頼んでたらエルディア安楽死のほうに協力してくれてたのでしょうか?
でもあんまりそんな感じもしないかなあー。
何の根拠も無い私の勝手な想像だけど、彼女は地鳴らしを起こしてこの世を滅茶苦茶にしたいと思ってたような気もします。
ま、どっちにしろもう遅い。あとはもう死ねば楽になれるよ。
ジークはアルミンにそう言いますが、アルミンは全く諦めてません。
諦めちゃってるジークになんと言うべきか考えてる時に、ふと足元を見ると、なぜか枯れ葉が一枚砂に埋もれているのを見つけます。
なるほど!
ここで、前回不可解だったアルミンが自分の死体を見下ろすシーンが、どういうことなのか何となく分かった気がしました。
今月号では消えちゃってるあのアルミンの死体。
あれも砂から作られてた物体だったのかって思いました。
この砂からは、ユミルちゃんのみならず、この場所にたどり着いた者はきっと何でも作り出せてしまうんだと思います。思ってる物とか、思ってもなかった物とか。
前回のアルミンは強烈な自己嫌悪が無意識に砂から自分の死体を作り出してしまったのではないかなと。
で、アルミンは枯れ葉を見て思い出した、幼い頃の取り留めもない記憶を急につらつらと語り出します。ジークはぼんやり聞きます。
枯れ葉が待ってる中を、仲間とただ走ってるだけで気持ち良くて、そんな些細な思い出が「このために生まれてきたんじゃないか」ってほどの感動だったと。
ふむ。人間は、もうとんでもない事態に遭って究極の土壇場になると、頭に浮かぶのはこういう些細でかけがえの無い思い出になるもんなのかもしれません。
その話を聞いて、ジークが初めて情動を動かされたような表情になりました。
さらに、アルミンの枯れ葉が彼にはボールに見えているようで。
彼にとっての些細でかけがえの無い思い出は、クサヴァーさんとキャッチボールしたことだったんですね。
そして彼らの背後にそのご本人登場!!!
このページ見た瞬間は「うひょおー!」ってなりました。
まさかこの漫画でこんなお約束展開を拝める日が来るとは。
クライマックスでかつての仲間が全員集合するやつです。王道です!
「けものフレンズ」の最終回みたいな。
クサヴァーさんだけでなく、グリシャと、クルーガーと、ユミルと、ポッコと、マルセル。
逆側からベルトルト。
彼らは一体なんなのか?
アルミンとジークが砂から作った存在なのかもしれません。
でもアルミンの死体とは違って魂が宿って動いてるやつです。
ベルトルトが逆側から歩いて来たのは、135話でアルミンがすでに作ってたからなのかも。
でも何であれ二人の意識が彼らを呼んだのだとしたら、クルーガーがいるのは変ですね。
アルミンはエレン・クルーガーをグリシャの手記で読んで存在だけは知ってるけど、知り合いでも何でもないです。
でもここで思い出すのはクルーガーの「ミカサやアルミン みんなを救いたいなら 使命を全うしろ」です。
(89話)
これ、何かが繋がってるんでしょうかね。何がなのかは分かりませんけど。でも私は「繋がった!」と思ってなんか納得したわけです。クルーガーの登場に。
で、場面は現実世界のほうに切り替わります。
反地鳴らしチームは風前の灯火。
ピークはそろそろ限界。ジャンが彼女を守ります。
そういえばこの二人は根深い因縁がありました。
昔ジャンは仕留められた筈のライナーをピークに奪われるという大失態を犯し、その4年後にピークはジャンに雷槍を食らいパンツァー隊を殺されています。
恨み恨まれ支え合う二人です。
ジャンの顎髭はピークの好みでしょうか?
ライナーも、そしてアニも、ユミルちゃんがニュッと出したモブ巨人軍団になす術がなくなり、絶体絶命となった彼女らを救ったのは、ニュッと出てきた側である筈のベルトルトの超大型巨人!
熱いです。
傀儡だった巨人に本人の魂が宿って動き出しました。
ちなみにここ、もしユミルちゃんがニュッと出してたのがベルトルト以外の過去の超大型巨人だったら、こうはならなかったってことになりますね。
九つの巨人はこの2000年間で13年ごとに継承されたわけだから、えーと、総勢1384人くらいいることになります。
うち歴代超大型巨人は153人もいるのに、召喚したのがよりによってベルトルト。
これはつまり、たぶん、ユミルちゃんがこの場にニュッと出せる巨人は、新しく死んだ順ってルールだったんじゃないかと思います。
あと超大型は召喚コストがめっちゃかかるからそうそうニュッと出せないとか。
なので、ポッコもユミルもマルセルも、グリシャもクサヴァーさんもクルーガーも、その巨人がちょうどこの場に召喚済みだったからそこに彼らの魂が宿ることができたのかな。なんて思いました。勝手な想像です。
で、戦局は好転しアルミン救出のチャンス。
ガビの対巨人砲がオカピ巨人に命中。ガビは本当に一発射撃の腕が凄過ぎます。
彼女はこれまでにも、ロボツ元師団長、サシャ、エレン、元ナイルの無垢の巨人、フロックを撃って、外したことは一度も無し。
そして「カツオ」とふざけた擬音を出して崩れるオカピを倒し、アニがアルミンをキャッチ。
二人はやっと、なんとか無事に生きて再会できました。
良かったねアニ。そういえばアニの義父達がいる要塞のドンパチはどうなったんだろう?
そして、そんな光景を眺めていたリヴァイが、信じられないものを目撃します。
というかジークのほうから声を出してリヴァイを呼んでます。
そうか。これが彼の結論なわけね。
そしてこの大逆転劇は彼の功績だとアルミンが言います。
ジークとアルミンはかつて死んだ7人の巨人と道の中で再会したわけですが、彼らは別に仲間だったわけでもなくむしろ殺し合った敵同士だったりもしたわけですが、それでも彼らはジーク達に力を貸してくれました。
「地鳴らしを止めたい」「止めるのに協力してもいい」という気持ちだけは一致してそうです。
というか、歴代1384人の中でそう思ってるのがこの7人だけなのかもね。
その光景をユミルちゃんも眺めています。
(「ユミル」と「始祖ユミル・フリッツちゃん」が同じ場所に立ってるシーンを見れるとは)
ユミルちゃんはたぶん地鳴らし賛成派だけど、この光景を見て何か心が動いたのでしょうか?
この7人は、アルミンとジークの言葉を、一言も喋らないままほとんど無表情で聞いてます。
このシーンがアニメになるときも、かつて彼らを演じた声優の出番も無しになっちゃうかなあー?
呼吸音や巨人の叫び声だけでもいいから出演してほしいですが。
そういえば今放送中のアニメFinal seasonはきっと分割2期になるのでしょうね
Final seasonと銘打ってるわけですから原作の最終回まできっちりアニメ化するってことなのでしょうが、このシーンがアニメで見れるのは来年か再来年か、かなりの先になりそうです。でも楽しみ。
話を戻して、無言の彼らですが、二人の要請に快く応じてくれました。
アルミンがベルトルトに「僕は君から全てを奪った」と言うのが印象的です。
「アニへの想い」もここに含まれてるってことかな。
そして、自らの首をリヴァイの前に晒すジーク。
自分ごと自分の民族をまるごと安楽死させたい人生だったけど、最後の最後で、そうじゃない人生もあったとアルミンに気づかされて、クサヴァーさんや父と再会できて、そうする気持ちになれたようです。
この行動はある意味自殺なんですけど、地鳴らしを止めるには死ななきゃいけないし、けじめでもある、と。
自らを「いっぱい殺しといて」と評します。
確かにそうですが、この漫画では「罪の無い人を殺した数」ではもっと上の奴が何人もいます。
その一人はアルミンです。マーレの軍港を爆破したときに万単位で殺してます。
アルミンもその罪を清算する日が来るのかな、とちょっと思いました。
リヴァイがジークの首を刎ねます。満身創痍でボロボロだけど左手一本で見事な一閃で。
リヴァイの「ジークを殺したい」という願いはようやく叶ったわけですが、それは戦って殺すとかではなく、彼のけじめの介錯人の役って形になりました。奇しくも。
これは結果論かもしれませんが。この漫画では「どうしようもない状況で憎み憎まれ殺し合う」が長い歴史で徹底的にこじれたから今こう地鳴らしなんて事態になっちゃったのだと描かれてるわけで、そういう殺し方をやるのはもう駄目なわけです。ガビもマガトもキヨミもモブ達もそういう過ちに気づいて悔いてました。
リヴァイの「ジーク殺す!」はそんな過ちの繰り返しになる危険があったのですが、奇しくもそれが、両者合意の介錯という形で達成となったのは、若干都合がいいですが、これで良かったのかもねと思いました私は。
そして地鳴らしは止まりました。
要塞の数百メートルくらい手前の超ギリギリでライナーの母カリナ達は助かりました。
で、次はジャンがエレンの首を爆破しようと走ります。
ライナー、ピーク、そしてユミル、ポッコ、マルセルに援護されながら。
うーん。地鳴らしは止まったんだからエレンを殺す必要はもう無いのではないかとも思うのですが、そうもいかないんでしょうかね。
エレンを生かしておくと、ジークが「一度」死んだくらいでは、また何らかの方法で地鳴らしが再開されてしまうかもしれないから、やっぱり殺すしかない。とかでしょうか。
「この……死に急ぎクソバカ野郎があああ」と叫びながら起爆するジャン。ちょっと泣いてます。そしてこのセリフがあまりにもピッタリで皮肉が効きすぎてて読んでるこっちも泣けます。
ジャンはほんの数日前に仲間に「俺は実はエレンをかっこいいと思ってて妬んでいた」と素の本心を晒してたのですが、なのにこんな、彼を殺す引き金を引く役をやらされて、その胸中を思うと斟酌に堪えません。
(118話)
エレンの首を落とすことに成功しました。そしてニュニュニュッと出てくる巨人の素。超大型ハルキゲニア。
それがエレンを再接合しようとするのを止めるのは鎧の巨人!
ライナーの最大の見せ場ですね。
今回のこのラストバトル、鎧の巨人の名に恥じない大活躍だったと思います。
生きてて良かったじゃないか。ライナー。
ライナーとそしてアルミンを残し、全員がファルコに乗って脱出に成功。
これで勝負あり。のようです。
この場にいる全巨人の動きが止まったように見えます。
クサヴァーさんがインしてる羊の頭をした獣の巨人の手の上で、「ありがとう」とアルミン。
私はいまだに、地鳴らしを止めることが本当に良かったのか、少し疑問に思っています。
この後の世界がどうなるのか、明るい未来はあんまり見えません。
でも彼らは、アルミン達は、止めることに命を懸けてまで信念を持って行動したんですね。
万感の爆発です。
ミカサの表情がこれまた切ないです。
ジークを殺し地鳴らしを止め、エレンの首を飛ばし、巨人の素を露出させてからの爆発という、徹底的に完膚なきまでに念入りな「エレンを殺す」です。
エレンはこれで死ぬのかなあー。
次回でアルミン達がエレンと少しでも話せる機会があればいいんですけど。あの砂漠で。
エレンは自分がこうやって倒される未来をも見ていたのでしょうか???
あとユミルちゃんも何か喋ってほしいです。
唯一神ユミルちゃんは伝えたいこととか無いのかな。正しいサウナの入り方とか。
まーあと2話、何が描かれても取り乱さないように心を平静に保って完結を見届けたいものです。
今回の感想ブログは5500文字超えました。ブログ始めて4年くらいですが最長かも。