「インテリ系清純ガール」「低糖質系ロカボガール」「味王」そして「ラブ探偵チカ」と数々の異名をほしいままにする藤原ですが、そのことごとくが名折れであるという悲しい生き物です。彼女は。
ちなみに関係無いですが「ほしいまま」は「縦」あるいは「恣」と漢字一文字で書けます。どっちも一発変換できますよ。
週刊ヤングジャンプ18号 赤坂アカ かぐや様は告らせたい212話 「四宮かぐやの無理難題「蓬莱の玉の枝」編」
あ、サブタイが無理難題シリーズです。
これまでに「燕の子安貝」編と「仏の御石の鉢」編があり、これで3つ目。
この漫画で「竹取物語の無理難題」にちなんだ名前をつけられてるキャラとかぐやが絡むとき、このシリーズになる感じです。
竹取物語でかぐや姫に求婚した5人の貴公子。そのうち4人に課された難題が、難題女子に名前がつけられてますね。子安つばめ、大仏こばち、龍珠桃、不知火ころも。
そして残り一人の求婚者が「車持皇子」で天皇家つまり藤原氏の皇子と。なるほど。ぐぐって調べました。
かぐやと藤原の絡みなんて今更だけど、今更だからこそ、このサブタイをつけたことに集大成っぽさをなんとなく感じたりもします。
そして、今後「竜の頸の珠」編と「火鼠の皮衣」編もあるのでしょう。
龍珠はともかく、不知火なんてかぐやとどう絡むのかまだまださっぱりです。
さて。今週号は予想通りのほっこり回。
これに関しては藤原というキャラは今作のヒロインであり、意地汚さや無軌道さはあっても闇や毒はあってはならないからこれぞ最適解です。「粗にして野だが卑ではない」です。
そして二人の出会いのエピソードも明かされました。むしろそっちが本題ですね。かつて氷かぐやは昔の藤原の苦しみを救ってあげてました。「逃げるは恥だが役に立つ」です。
かぐやから「大事な話がある」と生徒会室で対面する藤原。今週の登場人物はこの二人のみ。
かぐやは、自分に彼氏ができたこと、その相手が白銀であることを今更ながら自ら報告するわけですが、なんで今更になっちゃったのか改めて自問します。
最大の理由は「そうしたほうが面白いから」ですが、それは作品上の理由。かぐや本人はなぜ話さなかったのか。
それはラストで明かされました。かぐやにとって藤原は白銀に匹敵するほど特別で大事だから。
言い淀むかぐやに藤原が昔の思い出話を振ります。
なんと中学時代、氷かぐやは、ひたすらピアノの練習に明け暮れる藤原に「貴方ピアノやめた方がいいんじゃない」と言い放ったと。
それをきっかけに藤原は本当にピアノの練習をやめちゃったと。
かつて藤原がまだ藤原ではなかったころ。リボンもつけてなかったころ。「天才ピアニスト」という名折れではないマジで立派な異名を持ってたころ。
彼女はその重圧に潰されかけていて、でもやめることもできずに毎日毎日毎日毎日練習を続けていました。
そんなときに、それを偶然見かけた氷かぐやは、なんとなしに、おそらくは藤原の悲痛な表情を見て「そんなにつらいならやめちゃえば?」と、本当にふと思ったことを軽く言葉にしただけのようです。今のかぐや本人にその記憶はないほどの。
しかしそれこそが当時の藤原にとって誰かから言ってほしかった言葉。
どれほど心が救われたか。
誰かを喜ばせるために頑張るのもいいけど、それが本当に苦痛なら、つらいなら、やめちゃってもいいんだよ。逃げ出してもいいんだよ。ってのは本当にその通りの事です。
ついでに言うと、やめても家族は温かくそれを認めてくれたのですから、藤原は非常に恵まれています。
しかしまーなんですな。白銀も昔は凡庸な混院生徒だったのが、氷かぐやを見て生徒会長になる決意を固めたように、藤原も、氷かぐやが今の自分を形成するきっかけだったんですね。
当時の氷かぐやのカリスマというか存在感がどれほど凄かったかが想像できます。
で、話は回想から「大事な話」に戻り、かぐやは特別なそして初めての友達である藤原にようやく報告します。白銀と付き合ってることを。
藤原のリアクションは百点満点の藤原です。
彼女は全くなんにも勘付いてもいませんでした。案の定。
(かぐやが必死に隠してたとは言え)2年近くの間片思いをしてたのに。
ラブ探偵の見事な名折れです。
あの帽子はもうかぶるな。
あ、あの帽子はもう石上にあげちゃったんでしたっけ?
しかし藤原はこの醜態を直後に見事に挽回します。
知らん間に親友が既に男と(しかも身近な友達の男と)神っていたという驚天動地を味わったにもかかわらず、すぐに親友の幸せを一緒に喜んであげるという素晴らしい対応ができました。
そこは偉いぞ藤原。光の藤原。
彼女の異名の一つ「今作のヒロイン」が名折れにならずに済みました!
というわけで藤原が輝いてる回でした。次回以降はどうなるかは知りませんけど。