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「シンデレラの謎」感想 シンデレラの元ネタは古代エジプトなんだって

シンデレラの謎 なぜ時代を超えて世界中に拡がったのか」 浜本隆志 河出ブックス って本読みました。

 

私別にシンデレラそのものは特に全く好きでもないんですけど、なんか興味を引かれて。

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まずこの本が図書館で「新しく入った本」コーナーにあって、綺麗で新品で表紙が目立ってたのと、この本は世界中に伝播している「シンデレラ譚」を民俗学とか文化人類学みたいな感じで研究してて、そういうのは好きだから読んでみたくなりました。

 

 

えーそもそも、シンデレラの作者って誰?

 

っていうと漠然と「グリム兄弟」、あるいは極端に「ディズニー」ってなりそうなものですが、実は全然違うんだそうです。

 

シンデレラ譚は、まず、そもそも昔の全人類が普遍的に好む物語であって、世界中で似たような話がシンクロニシティとかアーキタイプってな感じで世界各地で偶然同時発生で誕生しました。

 

それに加えて、ホモサピエンスがアフリカで誕生して世界各地に移動していったルートとかシルクロードとか古代の人々の流通経路を通じて広く伝播していった民話もあったんだそうです。

 

それが紀元前6世紀くらいのエジプトの「ロドピスの靴」って民話。超古い。世界最古のシンデレラ。

 

で、世界各地に同時発生してた民話と、伝聞で伝わってきた「ロドピスの靴」とがミックス&アレンジされて、シンデレラ的な民話が世界中でさらにめっちゃ増殖しました。

 

それをまずまとめたのが1695年ペロー童話集「サンドリヨン」、そして世界中で一番有名なシンデレラが1812年グリム童話集。グリム兄弟は生涯かけて第7版までアレンジしまくりました。

 

そして決定的にしたのが1950年ディズニーらしいです。

 

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いやあー、こんなのよく調べたものです。

 

もちろん筆者浜本の単独の成果ではなく、こういう研究はずっと昔から世界中の学者がやってたそうで。

 

 

というわけで、世界中には「シンデレラっぽい物語」が独自に大量に存在することとなりました。

 

その定義は。

 

  1. 主人公の美少女が、家族からのいじめとかで苦境に立たされる
  2. 魔法の力を持った何かが主人公に救いの手を差し伸べてくれて、豪華な衣装に変身
  3. その土地のお祭りで美しい主人公が注目を浴びて、王子様的ポジションの権力者に惚れられるが、変身が解けちゃうので主人公は逃げる
  4. 靴とかの遺留品を残して、王子様はそれを手がかりに花嫁テストを開催し主人公だけが合格する
  5. 主人公は王子様と結婚してハッピーエンド

 

以上5つ全部当てはまるのがシンデレラ譚となり、当てはまるのが3つか4つくらいでもかなり「シンデレラ感」強いです。ハピエンは絶対。

 

さらに時代や場所でいろいろとアレンジされます。

 

 

最初の「ロドピスの靴」では主人公は奴隷とか娼婦とかいうかなり厳しい状態でしたし、中世ではラストで意地悪な継母は惨殺処刑されてかなり残酷な勧善懲悪主義が強かったり、そもそも継母じゃなくて実母だったり、あるいは実父が「美しい妻が死んだので妻に瓜二つな実娘と強引に再婚しようとする(そして娘は逃げる)」話だったり。

 

これも昔の王族が実の娘と結婚(再婚)することはそうありえないことではなかったからです。

 

そういうエロくて残酷な民話は昔の庶民には人気でした。

 

しかしそういう価値観や背景はグリム兄弟とかディズニーにアレンジされて、民話から童話へと変化していきます。

 

さらにディズニーでは「玉の輿」「サクセスストーリー」「アメリカンドリーム」の要素がより重視されて、さらにディズニーランドのシンデレラ城ができて人々はそこへ仮想体験しに行き、童話からVRへと変遷していった気がします。

 

 

そして、日本ではどうかというと、「ロドピスの靴」がシルクロード経由でアレンジされまくり「糠福と米福」(優しい美少女ヒロインぬかふくちゃんと意地悪ブサイク義妹こめふくちゃん)という民話になります。

 

「優しいAさんと意地悪なBさん」の対比は「花さか爺さん」とか「かちかち山」とか日本で好まれるアレンジなんでしょうかね?

 

そして明治になってグリム童話が輸入され、南方熊楠が「あれ?糠福とシンダレラ物語って源流は同じなんじゃね?」って気づいて、そんな感じで学者がシンデレラ譚を研究することが世界各地で始まって、今ではこういろいろと分かってきたと。

 

分かるまでは「シンデレラはグリム童話が元祖」ってことになってて、そのイメージは今でも根強いです。

 

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日本に輸入されたグリム童話版シンダレラ物語は日本の風習に合わせてアレンジされて、そのタイトルが「おしん物語」(by坪内逍遥)。

 

主人公の名前はおしん、魔法使いは弁天様、王子様は若殿、舞踏会は園遊会、ガラスの靴は扇。

 

おしんなんだ。おシン?

 

「おしん」というと、昔のNHKドラマが有名ですけど、あれとは無関係?

 

 

 

さて、以下はこの本にはなかった話なんですが、ディズニーって「アナ雪」でシンデレラストーリーから卒業しようとしてるんでしょうかね?

 

それにジェンダー界隈ではシンデレラは結構槍玉にあがる題材になってる印象です。

 

また、王子様がシンデレラの見た目だけに恋をすることを嫌う人も世の中にちょくちょくいます。

 

(実際には昔のシンデレラは舞踏会は3日間開催されて、王子様はシンデレラが毎回逃げたり素性を明かしてくれない謎にも惹かていくのですが)

 

グリムやディスニーのシンデレラももう今の時代にそぐわなくなってきてるような気もします。

 

もうシンデレラ譚は人類から必要がなくなって廃れてしまうのか?

 

あるいは、かつてシンデレラ原話からエロや残酷が削除されたように、ジェンダーや家父長制も削除された新しいシンデレラ譚アレンジが誕生して受け入れられるようになるのか。

 

それがアナ雪なのか???

 

シンデレラ譚の「これまで」はこの本でよく分かったけど、「これから」はどうなるのか、本当世の中どうなるかわかんねーよなーってことを、この本を読んで強く感じてしまったのでした。

 

シンデレラの謎 (なぜ時代を超えて世界中に拡がったのか)

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