「姑獲鳥の夏」 京極夏彦著 講談社文庫 って本読みました。
京極夏彦の本読んだの初めてです。
いやこれはすごいな。超面白かったです。

今回読んだのは上下巻になってる文庫分冊版です。持ちやすくていいですね。
さて。私が京極夏彦について知ってることは、超有名作家であること、和服にグローブ、水木しげるリスペクトの人、本が分厚い、くらいです。
別に好きでも嫌いでもなく興味があるわけでも無いわけでもなく特別意識したことのない作家。そういう作家無数にいます。
なのですが、経験上、そういう作家って、実際に何か読んでみればすごい面白いんですよね。ダン・ブラウンとか湊かなえとかもそうだったし。
今回も、猛暑の季節に普段読んだことのない作家に挑戦してみようという気になって、なんとなくこの本を選んでみて、読む前から「きっと面白いんだろう」ってことは分かってた本です。
しかし……予想以上でした。これは、すごいわー。では以下一応ネタバレあり感想。
これは1994年の本だそうで。ってことはつまり、もしかして。
私が人生でこれまでに鑑賞した怪異ミステリー系の漫画ゲームアニメ小説などなどって、もしかしてみんなこの作品に影響を受けたものだったの?私はずっとそれを知らなかったの?
というくらいに衝撃でした。
これ本当に1994年の作品?マジで?
そんな前からこんな完成度の作品がこの世に存在してたとは。
例えば、読んでるとき、榎木津というキャラを初めて知って、私は、この前遊んだゲーム「都市伝説解体センター」のあざみみたいだな、とか思ってしまったわけです。
順序が逆じゃん。榎木津こそがそういう異能探偵のパイオニアだったんじゃないの!?
ああ、古い名作を読むと時折こういうことが起きます。前にもカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読んだとき「約束のネバーランド」みたいだなと思ったことがありました。
自分がいかにこの世の名作達を知らないかを痛感します。
しかし。そういう感覚こそが古い名作を読む醍醐味であるとも言えるんじゃないでしょうか。
自分の無知が恥ずかしいけど、別に他人の前で恥を晒したわけでもありません。自室で一人で「うひゃ~」って身もだえするだけです。
そんな身もだえ自体を一人でこっそり楽しんでしまえばいいんです。
きっと誰だってその人がたまたま接してこなかった古い名作を鑑賞したらそういう感覚になることはあると思います。この世に名作は無数にあるんだから全部網羅できるわけないですしね。
それにこういう感覚って「点と点が繋がって線になる」という気持ちいい感覚でもあると思います。うん。こういうのってきっといいことなんですよ。
で。姑獲鳥の夏の作品そのものの感想としては。
事件のトリック、キャラクターの魅力、「この世には不思議なことなどないのだよ」って価値観、いろんなことに感嘆しました。
冒頭の関口と京極堂の長々とした雑談も、最初に読み始めたときは何の意味があるのか分からないのに何となく引き付けられるものがあって、そして京極堂の語る様々な理論は2026年でも「なるほど確かに」と唸るものがありました。
そして読んでくうちに京極堂が中禅寺って名前だったり、関口がどんな人物か分かったり、今が昭和27年だったり、自然と少しずつ判明していくようになってるのも見事な導入だったと思います。私はこの「百鬼夜行シリーズ」の世界観設定とかを本当に全く知らないまま読み始めたので。
無知なまま読み始めて良かったとすら思いました。全部が初見で新鮮でした。
そして「妊娠20カ月事件」の調査が始まり、梗子の妊娠は呪いだとしか思えないし、榎木津の能力も超能力にしか見えないのに、でも京極堂はそれらをついつい超常現象だと思ってしまう関口(と私)を馬鹿だと言ってきます。そんな~。
じゃあ何なんだよ~、と気になって読み進めたら今度は関口のほうもおかしくなっていき、困惑の極みです。
お前は一体何なんだ関口。
彼はミステリーのセオリーのワトソン役であることは明白であり、探偵役の言葉をなかなか理解できないわりには軽視したり、時に恥をかい(たと異様に気にし)たり、ずいぶん愚図なワトソンだなと思いきや、どうやら何かが狂っててむしろこの物語の中心にいる存在らしいことをじわじわ匂わせてきます。
もう物語のどこを見回しても「何なんだよ~」だらけです。
ついに梗子も久遠寺家も関口も限界に達したときに、やっと京極堂が動き出してくれます。祓い屋という名の探偵。かっこいい!
そこからの謎解きは怒涛の一言。彼が物語の全てを解きほぐしてくれて、もう見事なんてもんじゃありませんでした。
まー、事件の真相は、超常現象ではなかったものの、いろんな不幸や因習や偶然や病気や悪意や偏執が集合して起きたもので、ちょっと都合よく集合し過ぎだろと思わなくもないし、京極堂や榎木津は自分だけが分かったことを最後までもったいぶり過ぎだろと思ったりもしたのですが、しかし、これほど深淵にねじくれまくった事件を矛盾なく解きほぐいてくれたことにはそれ以上に感嘆しまくりでした。
一方で涼子が幼いころから受けた性的虐待や母親からの異常な仕打ちはあまりにもあまりにも気の毒過ぎて、見事な謎解きを無邪気に喜ぶことは全くできる気分ではなくなりましたが。梗子も可哀想でした。牧朗も少し哀れでした。
みんな可哀想でした。
しかし関口だけは無事。
彼はいろいろ苦しんできたらしい割りには、今生活できてるし、結婚して美人の嫁さんがいるし、今回もちゃっかり生き延びたし、ちょっと、なんだかなあと思いました。
関口もこれからのシリーズのレギュラーになるんでしょうかね。なんだかなあ。
それはシリーズを読み続ければ理解できていくでしょうか。ぜひともゆっくりゆっくり追いかけていきたいものです。
というわけで今は「魍魎の匣」を読み始めてます。
続刊はどんどん分厚くなってくみたいです。



