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「オリジン」感想 私はウィンストン欲しいなあ~

「オリジン上下」角川書店 ダン・ブラウン著 越前敏弥訳 って本読みました。

 

この本でまず良かったのは単位がメートル法になってたことです。これまでのラングドンシリーズの和訳は単位がずっとなぜかヤーポン法のままでした。5作目にしてやっと画期的な変更がなされました。

 

ラングドンの身長は6フィートとか言われても全然わかんねえっての。ヤーポン滅ぶべし。ちなみに182cmだそうです。

 

私はこの夏はダンブラウンのラングドンシリーズを全部読んでネトフリで視聴できる映画も全部視聴するぞと計画を立てて、これで小説5作と映画3作を制覇できました。夏はまだまだ暑いのにちょっと早く完了してしまいました。

 

私は普段読書のペースは遅いほうなのですが、小説5作上下計10冊を自分の予想以上に早く読み終えてしまい、理由は「面白かったから」に尽きると思います。ページターナーってやつですね。

 

ダ・ヴィンチ・コード→天使と悪魔→ロスト・シンボル→インフェルノ→オリジンの順で一気に読み続け、ダヴィと天使とロストは映画も視聴。オリジンは映画は無いので今回のブログは純粋に読書の感想です。一応ネタバレあり感想です。

 

 

 

オリジンを読み始める前に気になってたのは、前作インフェルノの結末で起こってしまった全人類が不妊ウイルスに感染しちゃった世界観になってるのだろうか、でした。結局本作中にあの事件のことは全く触れられてないのでどうやら起こってない設定っぽいです。

 

どうやらこのシリーズはそういう、過去作で起きたことや設定は一部は引き継いでたり一部はリセットしたりみたいな感じのノリで構成されてるようです。読んでて薄っすら思ってましたがようやく確信できました。

 

ラングドンの年齢もそうですもんね。第一作天使と悪魔が2009年ごろの話ですが彼はそのころから45歳のままのようです。

 

時代も移ろい持ち物もガラケーからスマホに替わり、でも永遠の独身天才閉所恐怖症ミッキー腕時計45歳。

 

そういうのは私は「そういうものだ」と意識的に受け入れてから受け入れます。

 

無造作に受け入れるのはちょっと苦手です。例えばのび太は元々1964年8月7日生まれなのですが、今は生年はぼかされてて、ドラえもんが派遣される22世紀に50年も近づいてしまいいくつかの年代設定が苦しくなってきてるのとかが、私はどうも気になってしまうタイプです。

 

いやラングドンの場合は別に永遠の45歳でも特に何も困らないですね。都合の悪い設定はリセットすればいいんです。

 

冒頭でラングドンは「聖職者が危害を加えたりするものか」って言うのですが、これこそまさに天使と悪魔の事件の設定の一部が都合よく彼の脳内からリセットされてる証拠です。

 

 

 

ただリセットできない、というかしてはいけない設定もあり、そのことが今作では結構印象的な要素でもありました。

 

それは彼が宗教象徴学の専門家であり、古い宗教や古い芸術を愛してるってこと。今作では彼が新しい芸術や価値観を「肌が合わない」みたいに感じてる場面がちょいちょいあり、なかなかの「じじい」「老害」感がありました。初期作にはなかった感覚です。

 

今作もまさに古い宗教と最新テクノロジーとの戦いが描かれました。天使と悪魔以上の。ラングドンは毎度それに巻き込まれる中立者なのですが、今回の彼は結構古いほうよりに立ってるよな~、と。

 

 

 

さて。そういや天使と悪魔の「反物質」もそうでしたが今回の「超すごいAI」も、まだちょっと現実には無いSFテクノロジーです。2024年時点のAIもかなりすごいんですが、ウィンストンみたいなのはまだ無理です。

 

でも私含む多くの読者はたぶん、ラングドンが戸惑うのとは裏腹に、ウィンストンの存在がす~っと馴染んだと思います。なんたって日本人にはドラえもんがいますし、アメリカ人だってナイトライダーのキットとかで「喋るAI」はお馴染みでしょうし。

 

ですがウィンストンはドラえもんやキットなどなどの優しい人工知能とは大きく違い、なんと殺人を辞さない思考のAIでした。主人であるカーシュを殺すほどの。

 

シリーズ恒例の「導師」とか「ヤヌス」とかの謎の黒幕が、今作は二人いて、ネットニュースサイトに次々と内部情報を暴露する謎のリーカー「monte@igsia.org」と、暗殺者アビラに殺人指令を出す「宰輔」、その二人ともが実はウィンストンだったという。

 

これ、私は読んでて、すっごく予想できました。上巻のうちから「黒幕はウィンストンじゃないの?」って思って、私は普段は犯人予想は下手なのですがそれでも分かるってことはかなりみえみえだったのでしょうね。

 

「AIが実は黒幕」ってのも、手塚治虫やターミネーターなどなどで世界的に定番ネタですもんね。どうしてもそういうのを連想してしまいます。

 

 

予想と違ってたのはウィンストンは別に「人類は愚か!滅ぶべし!」とかいうタイプのAIじゃなくて、あくまでも主人カーシュの意向に寄り添うことを最優先とした非常~~~に主人思いのAIだったことです。

 

カーシュはスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクみたいなテクノリバタリアンの人物像を凝縮したような人物で、ご丁寧にジョブズと同じくすい臓がんにかかってしまい余命いくばくもない身で、自分の死についてすらもウィンストンと「その要素を自分の発表にどう生かすべきか」を相談し合うほどで、ウィンストンは彼の願いを汲んで、病死ではなく他殺にさせて、なおかつカーシュが憎むキリスト教保守派に濡れ衣を着せて、ご主人様の望むことを全て叶えました。

 

ラングドンは結末でその真相に戦慄するのですが、私は自分がカーシュだったら、つまり末期がん患者だったら、ウィンストンの判断は嬉しいと思います。最高に意に沿うものだと思います。私はウィンストンのやったことは支持します。

 

そして私がラングドンだったら、ウィンストンが入ってた(過去形)スマホを破壊することはしませんね~。正直欲しいですあの高性能スマホ。

 

 

 

あとは、カーシュの発表「我々はどこから来て、どこへ行くのか」も印象的でした。特にどこへ行くのかのほうは、彼の予想する「テクニウム」は、ユヴァル・ノア・ハラリが言ってた「ホモ・デウス」まさにそのものですね。

 

ホモデウスでは貧富の格差拡大が非常に強く懸念されてましたが、テクニウムでもきっとそれはあるのでしょうが、それでも地球上の底辺の人々が救われることが多いと唱えられてて、そこは私も一理あると思いました。そうなったら本当にいいよね、と。

 

生まれながらの疾患や障害を抱えて生きる底辺の人のつらさは、遺伝子治療でもともと堅強に産まれるよう改造される社会懸念とは比較にならないほどつらいことだと思います。

 

そういうことも読んでてしみじみと感じました。

 

 

 

と、読んでて今作もとても楽しめました。

 

これでラングドンシリーズは現行読破!

 

どれも楽しめました。 インフェルノ>オリジン>ダヴィンチコード>天使と悪魔>ロストシンボル の順で良かったです。

 

シリーズ新作もいつか出るんでしょうかね?

 

 

银

  • fleydoii
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