「サメ映画大全」 知的風ハット著 左右社 って本読みました。
サメ映画ガイドブックの最高峰だと思います。他にサメ映画本があるのかは知りませんけど。
この本ではお薦め度が5段階評価されてて、星5の映画が6作、星1が5作あり、それらにすごく興味を引かれました。詳しくは後述します。
さて。もはやジャンルとして定着しているサメ映画。イコールB級映画って固定観念もあります。
どこからどこまでがサメ映画なのかを定義づけることは困難です。
またいつごろからジャンルの一つとして定着したのかも謎です。
それに「吸血鬼映画」とか「イカ映画」とかはあんまり言わないのにサメだけは「サメ映画」と言うことに何の違和感も無くなってるのもまた不思議な状態です。
あ、でもゾンビだと「ゾンビ映画」って言いますね。それくらいの定番の題材ってことでしょうか。
そう言えば「定義が困難」で言うなら日本での「魔法少女もの」も同じような状態になってるってふと連想しました。
どこからどこまでが魔法少女なのか、何歳までが少女なのか、プリキュアみたいなのは魔法少女と言っていいのか、男が魔法少女になるのはありなのか、みたいな。
サメ映画もそんな感じで、サメもしくはサメっぽい何かがちょっとでも出たらサメ映画と言ってしまっていいのか、って問題があります。
(映画会社がサメ要素皆無の映画をサメ映画だと騙して売ろうとするサメサメ詐欺も深刻な問題の一つ)
著者はこの本では独自の定義を決めて、1962年から2020年までの94作を該当せしめて、その全部を各2,3ページかけて映画評論しています。
ちなみに著者は「知的風ハット」という変な名前のサメ映画ライター&動画配信者。つうかサメ映画ライターなのか!
そんなライターが存在していたとは。というか逆説的にこの人はこの本を出したことで初めて堂々とサメ映画ライターを名乗ってよくなったのだと思います。
で、この本が定めるサメ映画とは。
- サメの存在をメインテーマもしくはサブテーマに含む、あるいは含もうとしている、長編の実写創作物
- 映画配給会社の手を経た上で、劇場公開、テレビ放送、ソフト化の少なくとも一点を満たした映像作品
だそうで。なるほどね。
サメがちょっとしか出ないとか、サメの出番が多くても本題がもっと他にある作品とか、ドキュメンタリーやアニメとか、アマチュア作品とか、一般的日本人が鑑賞する手段が無い作品とかは、除外するという現実的な線引きであり、著者個人の主義は極力排除しようとする姿勢に誠実さを感じます。
そういうののいくつかは別途コラムに短く評論されてて、数えたらなんと54作もありました。
著者からしたら「グリズリー」という熊映画や「ファインディング・ニモ」もサメ映画を語る上では外せないらしいのが笑えます。
あと左手を失ったサーファーの感動映画「ソウル・サーファー」やニコラス・ケイジの「パシフィック・ウォー」もサメ映画ではないけど、準サメ映画!
それらをメイン94作に足したら合計148作のサメ映画&準サメ映画&サメ映画もどきが網羅されててまさにサメ映画本の決定版です。
つまり著者はこの本を著すために、94作どころか、148作の映画を視聴したわけです。
執筆期間は1年5ヶ月で、その間のプライベート時間はサメ映画を見る以外のことはしなかったらしいです。
マジですごい。これは文句無しのサメ映画ライターですわ!
で。メイン94作は、著者が独自に評点をつけてて、恐怖度、オススメ度、トンデモ度の3項目がありました。
ぶっちゃけ恐怖度とトンデモ度は優劣ではないですよね。怖いのも笑えるのも、真面目なのもバカなのも、どっちにも良さがあるわけで。
しかしオススメ度は純粋に優劣です。良作もあれば駄作もあるのは世の摂理!
著者はサメ映画の出来や映画そのものとしてどうなのかとかを、かなり理性的に評してて、また良作の中にある欠点や駄作の中にもある美点を拾おうとしてることに好感が持てます。知的風ハットというこの変な名前の人がどんな人なのか全く知りませんがサメ映画マニアとして極めて真摯です。
なので紹介作の大半はオススメ度2点か3点。
となるとやっぱりそんな中でつけられた星5点や星1点の映画が気になってきます。
この本にあった5点の名作一覧!
- ジョーズ(1975)
- ディープ・ブルー(1999)
- オープン・ウォーター(2003)
- シャークネード カテゴリー2(2014)
- ロスト・バケーション(2016)
- 海底47m(2017)
逆に1点の駄作一覧!!!
- ジョーズ・イン・ジャパン(2009)
- スノーシャーク 悪魔のフカヒレ(2012)
- ジュラシック・シャーク(2012)
- ロスト・ジョーズ(2015)
- デビルシャーク(2015)
まず名作一覧を見てみますと、私も見たことあるの多いですし、我らがバカ映画「シャークネード」も入ってる一方で超真面目で普通に名作な「ロストバケーション」も入ってて非常に幅広い6作であり、それだけに結局「名作サメ映画はサメに関係無く純粋に映画として名作なのでは」という印象になっちゃって、「一体サメ映画とは」と定義に再び悩む結果になってる気もしてそれはそれで面白いです。
そして駄作一覧を見ると、まずタイトルがどこかの有名映画タイトルのエピゴーネン丸出しであることが情けないです。
またその年代が2009年以降から急に頻出してて、つまりこのあたりが、サメ映画が「サメ映画」というジャンルになり、同時にB級映画と同義になったってことなのだと思います。
志の低い貧乏映画会社が「とりあえず作っとけ」で作った粗製乱造。
いや、だからこそ玉石混淆となり、名作も生まれたのでしょう。たぶん。
あとそれ以外でこの本で面白かったのは、「ダブルヘッド・ジョーズ」です。
私は初めて知ったかも。
人を襲うサメには二種類あり、現実にいるサメ(ホホジロザメとか)か、非現実な架空の生命体かだったりするのですが、これはかなり後者寄りで、その名の通り頭が二つあるサメ。双頭鮫。
笑ったのはその続編です。「トリプルヘッド・ジョーズ」です。頭が三つになった新種です!
さらにその続編は「ファイブヘッド・ジョーズ」。最初頭が四つだけど映画の途中で五つに増えるそうで。
現在は「シックスヘッド・ジョーズ」まで公開されてて、「セブンヘッド・ジョーズ」はまだ存在しないようです。アホや。
特にダブル、トリプルの続きがファイブ、シックスなところがアホ。クインティプル、セクスタブルにせんのかい。
面白い本でした。
マジでサメ映画の楽しい勉強になります。
世界最古のサメ映画は何かとか、昔の映画会社と今の映画会社のそれぞれの節操の無さとか、サメ映画が時代とともに名作も駄作も増えていく様子とかいろいろ読み取れました。
ところで余談。星1点の作品「ジョーズ・イン・ジャパン」の主演は当時のグラドル滝沢乃南で、彼女はカメラマンの男性と肉体関係にあってイメビDVDに全裸の彼が映り込んでたことが発覚し、炎上して引退した人として有名です。(つまり彼女はホテルだかの風呂で全裸の男性と極めてプライベートな着エロ撮影してて、その映像がDVD作品として販売された)
本人は男性を夫だと言い枕営業を否定してましたが、真相は藪の中です。いや、腹の中と言うべきでしょうかね。何かのサメの。