ジャンプ14号で冨樫義博のインタビュー記事が載ってました。
ジャンプ50周年企画でいろんなレジェント作家にインタビューしてて、その第6回が冨樫の記事だったと。
それで「てんで性悪キューピッド」という名前が出てました。
てんで性悪は30年くらい前の冨樫のジャンプ連載デビュー作で、どの一般漫画雑誌にもいつの時代も必ず一つはあるエロラブコメの枠。
今それをジャンプで担ってるのはもちろん「ゆらぎ荘の幽奈さん」。
そういえば昔は冨樫もそのポジションでしたっけ。
桂正和も(ラブコメとは言い切りにくいですが)そんな感じでした。
月刊マガジンでは川原正敏もそうでした。
でもそういう最初はエロラブコメ漫画だった作家が長く活動続けると大抵エロラブコメからは完全に離れちゃいます。
作品自体がなかったことになるのも珍しくありません。
無関係な人からは黒歴史とか揶揄されたりします。
逆に最初はエロとは無縁の作風だったのがエロラブコメ一辺倒になったパターンは、「To LOVEるダークネス」の矢吹健太朗以外に見たことはありません。
チャンピオンの安部真弘は「侵略!イカ娘」ではかわいい女の子が主題の作風なもののエロは皆無で、次作の「あつまれ!ふしぎ研究部」ではエロ度が上がるっていうのはありますが。
でも一般誌のエロラブコメ度を100を上限とした数字で表現するなら安部は「5から25」くらいになったのに対して矢吹の場合は「0から100」だからやっぱりかなりの突然変異だったと思います。
あとは、そういうのの先駆者の永井豪は昔から現代までずっといつでも80くらいな感じ?
エロに限らない万能型なのでしょう。
で、「100から0」というパターン側の冨樫ですが、彼は別にてんで性悪を黒歴史として封印しているわけでもありません。
過去に「ジャンプ流」でも冨樫は少してんで性悪について語ったこともありましたが、彼にとっては黒歴史というより「失敗の記憶」なのでそうです。
これは別にエロラブコメを描いたことが恥ずべき過去という意味では決してなく、ただ富樫にとっては「自分の(当時の)実力以上のことを無理してやろうとしてた」ことが失敗だったということです。
私としては、冨樫がこういう気持ちだった、というかてんで性悪を黒歴史扱いしてないことはちょっとうれしいことです。
やっぱりエロラブコメって世の中に必要不可欠で、決して恥ずべきものではないと思います。
これからもジャンプを含めあらゆる一般漫画雑誌では堂々と胸を張ってエロラブコメを1誌に1本くらいは維持していってほしいものです。
私はもちろん一般誌のエロラブコメが大好きなのですが、だからこそこだわりがあり、世の中にあるその手の漫画の90%以上は「興味が湧かない」「萎える」といった感じで、むしろ気に入らなくて拒否感を覚える作品のほうが圧倒的に多いです。
どういうエロラブコメがよくてどんなのが嫌いかはまさに感覚でとても言葉で説明できるものではありません。
気に入るかどうかは読んでみないと本当に分かりません。
奥が深いです。
一般誌エロラブコメは成人向けアダルトコンテンツとは全く別の次元の良さを持つジャンルです。
てんで性悪キューピッドも、たとえ失敗作であっても、そういう重要なジャンルの作品の一つです。
今の冨樫に「まりあを描いてみてくれ」って頼んでみたいものです。