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「獅子の門 4朱雀編 5白虎編」感想 久我重明の謝罪のしかたが素晴らしい!

光文社カッパノベルズ 夢枕獏著「獅子の門4 朱雀編」「獅子の門5 白虎編」って本読みました。

 

全8巻中の5巻まで読みましたが、マジで面白いです。

 

私は久我重明ってキャラが好きで、それ目当てに読み始めたのですが、そこ以外にも見どころや、またこの作品の内容以外の要素でも面白いところがあったりして、飽きません。

 

さてまずは作品内容以外の話。

 

この獅子の門は、3巻から4巻までの間になんと14年も空白がありました。3巻が1988年発行、4巻が2002年発行とのことで。

 

 

そういえばwikipediaにもそう書いてあったっけ。

 

私のように後からまとめて読もうとしてる人間には関係無いことですが、3巻は昭和の香り漂う世界だったのが、4巻では携帯電話が出てくるしバーリトゥード(何でもありの格闘技)の概念が生まれてるし、時代が進んでるのを感じました。

 

でもこの作品は今が西暦何年かを明言しないタイプなので、「そういう世界観」で何もおかしくなく、サザエさん時空の一種だと納得のいくことです。

 

 

で。このあまりにも長い休載期間が生まれてしまったのは、別に作者夢枕獏がさぼっていたからではないそうです。

 

むしろ逆で多忙過ぎて何作も掛け持ち執筆してたので、獅子の門が当時の雑誌「小説宝石」の方針転換で連載枠から外れてしまい、一度外れたら超多忙スケジュールの中に再び組み込むことが困難で、それがズルズル続いたからこうなったと。

 

なるほどなあー。

 

でもそれって過剰に仕事掛け持ちし過ぎってことじゃない?

 

 

 

そしてもう一つの注目点。久我重明が漫画版餓狼伝に登場したことについて言及がありました。

 

 

漫画版の作者板垣惠介から「出していい?」と打診があったそうな。

 

それで快諾したそうな。

 

いやこのやりとりは、そりゃあったに決まってるのですけど、なんか、このやりとり自体が信じられないほど凄いことだと思います。

 

思いついたのも打診するのも、許可するのも凄い。

 

「あんたの原作、根底から世界観変えちゃっていい?」「OK!」ってのとほぼ同じことだと思います。

 

しかしそれで実際面白くなり、それはその後「ゆうえんち」にも広がって繋がって、少なくとも私はそれらのおかげで久我重明ってキャラを知りこうしてファンになったわけですから、これは慧眼ってやつなのかもしれません。

 

 

 

さて。本編の内容についての感想。

 

この作品は、はたして、羽柴彦六が主人公で久我重明がライバルなのか。

 

それとも室戸武志芥菊千代加倉文平志村礼二竹智完の5人も含めた群像劇なのか。

 

私は5巻まで読んで、なんか、「教師もの」って印象が湧きました。学校も教師も全く関係無いのに。

 

彦六と重明が教師、5人が生徒。って印象が。なんか。

 

この二人と5人では明確に師匠と弟子と言えるのは重明と志村だけですが、でも5人の若者は彦六と重明の両方にそれぞれの形でものすご~く影響を受けて奮起して稽古してそして戦います。

 

4巻と5巻は、これまで全国各地で別々にお互いにほぼ知らず生きてきた5人の間に少しずつ因縁が(彦六と重明を中心に)絡み合い、一つの空手大会に出場して戦う様子が描かれました。

 

熱かったです。

 

5人の中で最強は室戸なのかな。でも私は一番感情移入したのは菊千代です。あと志村も意外と良くて3巻までで生まれた拒否感が少し和らぎました。

 

逆に竹智はどうも感情移入しにくいです。

 

こいつの人生観と女性観はどうも分からん。

 

とにかく的場香代が可哀想で、彼女がつらい人生を歩んだのは85%くらい竹智のせいだと思います。

 

 

 

そして久我重明。

 

4巻で英語が話せることが新たに判明しました。強いだけでなく頭もいい。かっこいい。

 

そして14年の空白期間を経て、彼の残虐性の表現にも時代の変化があったような気がします。

 

昭和時代の「子犬を殺せ」と言うような陰惨な残虐性はもう無さそうな印象。

 

逆に、女(香代)に温情をかけるかのような様子を見せたりしてました。昔の重明だったら女だろうが殺したり不幸にしたりおかまいなしだったんじゃないかなって印象です。

 

「ぬるくなった」と言えばそうなのかもしれませんが、でも私はそれはそれでいいかも、と現時点では思っています。

 

その代わりに身についた知性や現代社会への臨機応変な対応力などなどは、非常にスマートな印象ですから。

 

知性と、本気の戦い(殺し合い)や人体破壊を楽しむ残虐性の両立。

 

 

あとものすごく感銘を受けたシーンがありました。

 

重明が謝罪するシーン!ここ最高!

 

彼は今はヤクザ朱雀会の用心棒のような「先生」をやってて、そこの幹部黒滝から「竹智をさらってこい」と指令を受けたのですが、意図的に破って、それが黒滝にばれて叱責されます。

 

そしてめんどくさそうに「もう、かべんしてくれませんか」と、謝罪。

 

さらに「今この久我重明が謝りましたよ」「それで不服がありますか」と続けます。

 

 

こんな謝罪の言葉私は現実でもフィクションでも見たことがありません。

 

これで謝罪が成立してると言い張れるのなんて三千世界に久我重明しかいないんじゃないでしょうか。

 

この小説では重明(&彦六)が最強キャラなので、誰も彼を屈服させることなんてできないからこそできる芸当です。

 

さすがは久我重明。

 

このくだりは本当に大好きです。

 

この小説に期待してたものがここに凝縮されてる気がします。

 

久我重明かっちょいい!

 

 

 

さ。あとは6巻、7巻、8巻。

 

 

 

 

 

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