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「目的に合わない進化」感想 途中までは面白かった

原書房 アダム・ハート著 柴田譲治訳「目的に合わない進化 進化と心身のミスマッチはなぜ起こる 上下」って本読みました。

 

あんまりいい本だとは思いませんでした。

 

私は普段は読書してて途中で「ん?」と引っかかるようになったら読むのやめちゃうこともあるのですが、この本は長い上下巻で、「ん?」と思ったのが下巻の真ん中あたりだったので、75%まで読んだ以上はもう最後まで読み切ろうと決意して、読了したところやっぱり「ん~……」という感想でした。

 

私は読書のペースが遅くて、長い本だと途中まで読むのも結構時間がかかるので、ここで読むのやめたらそれまでの時間が無駄になるなあ~と思って読了したのでした。そうでなかったら読むの途中でやめてたかも。

 

ま!「ん~……」と思うこともまた読書で得る収穫の一つです。

 

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えーまずこの本を初めて見て手に取って、タイトルや目次や冒頭をペラペラ見て、私は「この本は、我々ホモサピエンスが現代いろんな問題を抱えてるのは、テクノロジーや社会の急速な変化に、肉体や脳が全然追いつけてないからで、それを説明してくれる本なのだろうな」と予想しました。

 

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その予想自体はだいたい外れてませんでした。

 

実際に上巻は素直に感心しながら読みました。

 

例えば、現代では全世界に肥満の人がめっちゃ増えてて、それは「我々ホモサピは本来は原始時代の粗食に最適化してるから現代の高カロリーの食事ではどうしても太ってしまうのだ」って理屈で、それはよく言われてるから誰でも聞いたことがあると思うし、腑に落ちるものです。

 

でもそれだと、同じ食事をとってても太る人と太らない人がいるのは理屈に合いません。肥満率は国によってかなり差があります。

 

じゃあなんでかというと、作者は「浮動遺伝子仮説」ってのを挙げています。

 

これはつまり、乱暴な要約ですが「人や民族によって体質が違うのは結局ただランダムなだけ」みたいな身も蓋もない理論です。

 

いや本ではもっとちゃんと論理的に説明してます。

 

でもそれで説明がつくのだとか。

 

他にも「牛乳(乳糖)を分解できる人とできない人がいる理屈」とか「原始時代では不可欠だったストレスが現代では心身に害を及ぼしてる」とか、読んでて「なるほどね」「だよね」と思いました。

 

そして上巻を何日もかけて読み終えて下巻に。

 

下巻ではまず「SNS」、次に「暴力」と「ドラッグ」を扱ってました。

 

そこでちょっとなんか「ん?」ってなりました。

 

書いてることそのものに納得いかないとか反対だとかいう感じじゃないんですけど、作者が暴力とドラッグに思ってる姿勢が妙に偏ってるように見えました。

 

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作者は暴力について語る際に「バイオレンス映画」「暴力的なゲーム」「メディアが流す暴力」なんていうものの言い方をします。

 

そしてそれが「子どもに悪影響を与える」と(断言はしてないけど)示唆してて一面的な論調でした。

 

この違和感伝わりますでしょうか?

 

 

 

続いてドラッグの話になると、今度は作者はこの世の全ての薬物をひとくくりにせずに、ヘロインだとか大麻だとか、有害度にはそれぞれ差があるってことを、結構ページを割いて説明しようとしてきます。

 

まるで「ドラッグへの偏見を正そう」としてるかのよう。

 

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ドラッグにはそれぞれ依存性に差があるのは確かにその通りです。それはこの本読む前から私も知ってました。

 

でもねー、なんかねー、ドラッグの細かい違いを伝えるのには熱心な癖に、「暴力を扱うメディア」について作者はかなり乱暴に偏見的にひとくくりにして論じてるのが、めっちゃ偏ってると思いました。

 

ゲームとか嫌いなんでしょうかね、この作者。

 

はっきり言いますがかなりの無理解で、私でも知ってる学者やゲームの業界が取り組んでる実態を伝えることが、この本ではすっぽり抜け落ちています。ドラッグには研究熱心だったのに。

 

「暴力的なゲーム」とやらの定義も不明。

 

なんか作者の思想がアレな感じでにじみ出てると思いました。

 

 

 

 

でもまー、書いてあることの一つ一つで見たらおかしなことは本当に無いんですけどね。

 

ただ、最後の結論も、そこもちょっと私にはいまいちでした。

 

そもそもこの本では、ホモサピは事程左様に「肥満」「アレルギー」「依存症」「ドラッグ」「SNS」「暴力」「フェイクニュース」などなどに振り回されているわけですが、肝心の「だからどうしたらいいのか」は書かれてません。

 

そして現在進行形でヤバイ環境破壊問題については「我々は心を入れ替えてつつましやかになりましょう」みたいな感じのふんわりしたありきたりな結論でしめて本は終わってます。

 

急にグレタ・トゥーンベリ。

 

 

 

うーむ。私個人は、幸いにも、重大な病気やアレルギーや依存症は一つも無く、そしてSNSやフェイクニュースに振り回されお金や時間や健康を削られずに済んで生きてます。ゲームは好きでニンテンドースイッチをよく遊んでます。

 

そして長々とした活字の本をたまに読むという奇特な趣味を持ってます。

 

この本に書いてあるようなことで現代社会で苦しんでるタイプの人は、こういう本を読まないだろうなあーとも思いました。

 

救うべき人に届いてなさそうな虚しさもちょっとありました。

 

 

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