光文社「誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性」 セス・スティーヴンス=ダヴィドウィッツ著 って本読みました。
今の世の中はネット時代以前では調べようがなかったことが簡単に分かるようになったよってことをいろいろと教えてくれる本でした。
これはたぶん誰もが薄々そう思ってることでしょうが、予想以上でした!
例えば、子どもを持ったことがある親が「子どもを持って後悔してますか?」とアンケートで質問されても、もしそう思ってても「はい後悔してます」と答えることはほぼ不可能でしょう。
匿名のネットアンケートでも。
しかしそんな他人にはそうそう言えない本心を吐露できる場所が今の世の中にはあります。
Google検索です。
アメリカでは「子どもを持って後悔している」とググる回数が年間7000件あるそうです。
如実ですなあー!
そんな言葉そう思ってる人しかググりませんもんね。
ましてやその行為自体が「そんなんググってどうすんの?」ってほぼ無意味な行為であり、それでもする人は、もう告解のような使い方をしてるってことになります。王様の耳はロバの耳だと井戸に叫ぶのと同じ行為です。
ってことは、本当に完全に内心に秘めてる人はもっといるのかもしれません。
この本はそんな赤裸々なデータの実例をかなり多数紹介してくれます。
そして「だから何ができるのか」「何の役に立つのか」「できることとできないこと」「すべきではないこと」などなどを論じてて感心させられる本でした。
とにかく見どころ(読みどころ?)はその超豊富な実例です。
例えば!
ポルノサイトで「レイプもの」を探すユーザーは男性よりも女性のほうが2倍も割合が多いらしいです。
ただこれは母数は男性のほうが圧倒的に多いし、ユーザーの自己申告の性別が本当か分からないし、フィクションって前提だからこそってのも大いにあることでしょうが。
アメリカでは「失業率が上がると児童虐待が増えるのではないか」と思われたけど、公式な虐待件数は増えなかったそうです。
しかし「ママがぼくをぶつ」「パパに殴られた」なんて言葉でググる件数の増加は、失業率の増加とぴったり一致したそうです。
2006年にフェイスブックは「こっちが何もしなくても友人の近況が勝手にどんどん表示される機能」を実装したけど、大大大不評で、廃止しろって活動も活発に起きたほどでしたが、しかし実装してからページビューは毎月100億から200億に跳ね上がって大成功の大儲けしました。
……読んでて面白かった例を挙げたらきりがないです。
「競馬で優秀な馬を徹底的に調べたら成績と心臓の大きさが一致した」とか「名門校にぎりぎり受かった学生とぎりぎり落ちた学生は、その後の人生を調べたら大差無かった」とか「男が自分のペニスの大きさを気にするのと同じくらい女は自分の性器の悪臭を気にしている」とか。
そういう、ネット時代以前では調べようがなかったことが、ネットの「情報量の豊富さ」と「本心の吐露しやすさ」のおかげで、今ではすぐに分かっちゃうんだよって本です。
他にも「どうしてそうなのか理由は分からないけど、実際にそうなんだから有効利用できる」って例も。
アメリカではハリケーンが近づくとタルトがよく売れてて、その理由が明確に分からなくてもハリケーンが近づけばタルトをたくさん仕入れれば儲かるよ、とか。
とあるニュースサイトで同じ記事でも見出しタイトルの文章を少し変えるだけでなぜかクリック率が跳ね上がるので、まず変える見出しと変えない見出しのどっちかを両方表示させるようにして、後から多かったほうに統一すればいいよ、とか。
なるほど。
また、こういうデータを活用しないほうがいい場合も紹介してくれます。
融資会社では、借金をちゃんと返す人がよく使う言葉、踏み倒す人がよく使う言葉、を、データですぐ調べることができてしまいます。
ってことは、融資会社は「NGワード」をよく使う人の借金は審査を落としたほうが効率的になるわけですが、そんな社会になるとヤバいと作者は警鐘を鳴らします。確かにね。
本当に感心するとこばかりな本でした。むしろ感心しかしない!
ただ一点だけちょっとひっかかったことがあって、作者はアメリカの共和党、特にドナルド・トランプが嫌いなことを隠そうともしてなくて、私は別にアメリカの政党や大統領に支持の概念とか特に無いですが、ちょっとトランプ(と支持者側)を悪者に書くのが一面的かなってのはありました。
なにやら「黒人を殺せ」「ユダヤ人を殺せ」とかググる人が多い地域と、トランプが勝った地域が一致するそうです。
それは確かにそうなんでしょうけど、でもそれを言うなら「レイシストを殺せ」「トランプを殺せ」ってググる人が多い地域は反トランプ地域と一致するってだけの話なんじゃないのかなあー、と、ちょっと思いました。