進撃の巨人はいつも読んでて「マジかよ」と驚くことが毎月どこかにありますが、今月号は珍しく、前から「こんな展開もあるんじゃないか」と薄々思ってたことがその通り起こってて、それは予想通りだったのに実際に目の当たりにしたらやっぱり「マジかよ」と思ってしまいました。
ヒストリア!
さてまずは、冒頭は先月号の直接の続きでした。
ここ、ものすごく計算されてる演出で、本当すごいです。
地下牢のエレンの独り言を、ハンジがたまたま聞いていて「今の独り言なに?」と執拗に食い下がってきます。
これは89話の天丼ネタなわけですが、前回と構図は同じでも二人の意識は全く違います。
89話ではエレンは自分が思春期らしい感覚でかっこつけてやってて気まずい思いをしていましたが、今の大人エレンはハンジにいくらつっつかれても全く痛くもかゆくもなさそうな様子に見えます。
(89話のエレン氏)
「何しにきたんですか」ってセリフも全く同じなのに。
ハンジもハンジで前回は「エレンをおちょくろう」なんて意識はなく天然でエレンの奇行に興味を示していましたが、今回は違います。
これ、意図的にエレンを揶揄してますよね。
あとエレンの長髪も挑発してます。
「君その髪型かっこよく見せようとしてて必死だね(笑)」と。
彼女がエレンに少なからぬ業を煮やしてることが伝わってきて、前回は笑えるギャグシーンだったのに、今回は胃が痛くなるような険悪なやりとりです。
作者諌山創が、シリアスシーンの落差をよりつけるために得意の「諌山流ギャグ」をも演出の材料に利用してて、本当にすごいセンスです。
ハンジは何に怒っているのか?
いろいろあるのでしょうが、最たる理由は「ヒストリアを犠牲にしたこと」のようです。
嗚呼、ヒストリア…!
そこから回想に繋がりますが、回想内のヒストリアはむしろ素の笑顔をエレンとミカサに見せてて、すごい心を開いてる様子なのがまた悲しいです。
イェレナやオニャンコポン達の反マーレ派義勇兵がパラディ島と接触するようになって約一年が過ぎ、前回言ってた港も完成しついに外国との「外交」が始まりました。
義勇兵の仲介でやってきたのはヒィズル国の特使、キヨミ・アズマビト!
ここで出てきましたヒィズル国。
先のレベリオ区の開戦でマーレやタイバー家を出し抜いたのはやっぱりヒィズル国の力添えもあったからのようです。
そしてミカサのルーツ。
家紋のこととか私すっかり忘れてました。
あと、145代フリッツ王がパラディ島を完全鎖国して壁内の国民の記憶を操作したのがつい100年前という比較的最近であることもつい忘れてしまいます。
ミカサとキヨミの血縁がそう遠くないものであることも一瞬「え!?」と思いましたが、じゅうぶんありえることでした。
ミカサはヒィズル国将軍一族とアッカーマン一族のハイブリッド。
この漫画特別な生まれのキャラは何人かいますが、「特別さ」においてはミカサが今んとこダントツですね。
そしてそのことを喜んでいるのがヒストリアでした。
笑顔で「自分と同じような重い生まれの仲間がいて頼もしくて嬉しい」と言う彼女の言葉は、逆説的にミカサを励まして寄り添う思いやりの発言です。
「唐突に自分の特別すぎる出自を知って戸惑うだろうけど、私も同じようなものだしあなたは孤独ではないよ」と。
ヒストリア優しいです。
特別な出自はエレンにもあてはまることで、彼女の言葉はエレンにも思いやりを向けてます。
キヨミはジークと対談したことをヒストリア達に伝えます。
私は先月号の感想ブログでジーク達義勇軍はグリシャ達のエルディア復権派と何が違うのか疑問だと書きましたが、今回そのへんも明かされました。
ジークはグリシャが足元にも及ばないくらい本気のエルディア復権派だったと。
同志である両親や調査兵団を殺してでも、自分の大儀を果たそうとしてたと。
犠牲を出してでも自分の手を汚してでも大勢の同志を救いたいっていうものの考え方は、フクロウこと先々代の進撃の巨人エレン・クルーガーにも、そしてエレンにも共通してるかもしれません。
これがジークの本心であればの話ですけど。
彼の言葉は信じていいのか全然分かりません。
それとキヨミはお家復興よりも島の資源「氷爆石」がお目当てのようでお金大好きおばさんの一面が見えました。
立体軌道装置のガスの原料でもある氷爆石は、要するに化石燃料でいつかは尽きる有限のものであるか、あるいは巨人が作れるものなら巨人には存在し続けてもらわないといけないものなわけで、そんなに魅力的な資源でもなさそうですけど、独占できるならでかいのかなあー。
でももし独占したらしたでヒィズル国はかつてのマーレのように「最強だけど世界中の嫌われ国」になっちゃいそうですが。不安。
あとこのジークの出した立体軌道装置はミケのものですね…。
キヨミがジークから聞いた本題、エルディアが生き残るための条件の一つはヒストリアにとっては結構苦いものでした。
とにかく子どもを産んで増やせという。
かつてのレイス家のように。家畜のように。
しかし全世界からここにいるみんなを今守るためには避けられないことも頭では理解できるので承諾しようとする彼女をいったん止めたのが、エレンでした。
「その前にあらゆる模索するべき」と。
エレンすっごいヒストリアを思いやってます。
ヒストリア涙ぐんでますよ。
回想の中のエレンは確かにヒストリアを思いやってて、ハンジもそんなエレンに感嘆の意をもっていたようでした。
しかしその後2年間現実はどうかというと、他の解決策はなーんにも見つかりませんでした。
そしてエレンは独断で「ジークプレゼンツ地ならし大作戦プロローグ」を決行。
そしてマーレのレベリオ区を大虐殺、ヒストリアは結局家畜コース、サシャも失うという、悲しい結果に(作戦は成功してますが)。
ヒストリアは家畜コース。大事なことなので二度言いました。
このシーンを読んでて私は、ハンジがエレンに失望したくもなる気持ちはわかるけど、同時に、やっぱり、誰もエレンを責めることなんてできないんじゃないのかって思いました。
だって、エレンのやったことは、そうしなきゃ自分らが滅亡するわけだし、他の解決策がないわけだし。
先月号のアルミンの泣き言も先々月号のリヴァイの顔面キックもそうでしたが、ハンジもやり場のない怒りをエレンに責任転嫁でぶつけてるだけな印象が強いです。
でもエレンが強行策を決断したのは唐突にも見えるので、なんかきっかけとか理由とかあったんでしょうかね?
いずれ「エレンに何があったのか」も明かされる日がくるでしょうか?
エレンにびびって逃げるハンジの捨て台詞が独特でした。
エレンとハンジの諍いのあとは、他のいろんな人物の現在の様子が一気に少しずつ明かされました。
サシャの墓標の前の、ミカサ、ジャン、コニー、ニコロ、そしてサシャの家族。
ピクシス司令とイェレナの高度に剣呑な会話。
ジークを軟禁するリヴァイ。
ガビとファルコの脱走!
ガビは本当に愚かです。
「このままだと殺される」って…悪魔どもがそのつもりだったら飛行船でサシャを撃った時点で殺されていたことに気付いていません。
ライナーとポッコとピークはなんとか無事でしたが、ポッコは酒に溺れてる様子。
メンタル弱そう。
そして今月号のラストが「マジかよ」のシーンでした。
家畜と化したヒストリア。
いや本当、王家の血筋って話が出たときからこういう可能性は頭の片隅にはありました。
しかしその通りになってしまうとは…。
身重のヒストリアは回想の中の笑顔や泣き顔とは打って変わって、これでもかっていうくらいの無表情で背筋が冷えます。
心閉ざしてそうだなあー。
声をかけてる男が父親なのか!?
誰?
今月号も読み応えありすぎで感想ブログも軽く3000文字を越えてしまいましたが、まだ他に気になったのがアルミンでした。
今月号回想にも現在にもどこにも1コマも登場しませんでした。
先月号の水晶体のアニの前で愚痴ってたシーンから、すぐ次号でその後を見せろだなんて思いませんが、彼の様子が今月号で全く出なかったのは予想外でした。
そのへんめっちゃ気になるのになあー。
でもヒストリアのインパクトで吹っ飛んだ感もあります。