ルイス・ダートネル著 東郷えりか訳 「この世界が消えたあとの科学文明の作り方」 河出書房新社
このブログで応援しているジャンプの漫画ドクターストーンの第1巻の巻末に参考文献がいくつか載っていました。
その中の1冊がこのこの世界が消えたあとの科学文明のつくりかた。
興味を引かれて市内の図書館に行ってもし蔵書が存在してたら借りて読もうと思って(いきなり買うのはさすがにちょっとためらう)、行ったらあったので借りてきて読みました!
ドクストの原作者稲垣理一郎はこの本を読んでからドクストの物語を思いついたんでしょうか?
ただドクストの舞台ストーンワールドとこの本で扱っている大破局後の世界とは似ているようで欠片も似ていませんでした。
ストーンワールドは世界崩壊から3700年経ってほとんどの建造物や道具や記録などなど何もかも失われた100%原始的野性世界ですが、この本が想定している世界はかなり楽観的な設定です。
逆に最悪のパターンとして「199X年、世界は核の炎に包まれた」的な核戦争が起こるとか、巨大隕石が衝突するとか、太陽風が地球を襲うとか、こういうレベルの超カタストロフになってしまうと、ほんのわずかな人類が機械も資源も失われた世界にかろうじて生き延びても今の科学文明社会を再建するのは無理だろうとのことでした。
そりゃそうかー。
もうちょっとマシなレベルで、伝染病とかゾンビとかで人間たちはかなり死にまくるけど建物とかはまあまあ残るような感じの世界をこの本は想定していて、そこから科学文明を再建するにはどうするかを思考実験しています。
機械とかガソリンとか保存食とかがある程度の規模で無事に残っていて、生き延びた人類はまず当分はそれで食い繋いでそれが尽きるまでの間に自給自足生活を安定させることを目標としています。
生き残る人間の数も重要で、多すぎたら資源をあっという間に食いつぶして再建までの時間的猶予がなくなるし、少なすぎても単純に人手が圧倒的に足りないのと遺伝的多様性の問題でアウト。
一つの国で1万人の生存者がいるくらいがベストの大破局となるそうです。
だから厳密に言えばこの本が活かせるような状況はかなり限られることになるでしょう。
そんなに都合のいい文明崩壊なんてそうそう起こらないでしょうから(?)。
まーそれはそれとしてもこの本が読んでて「なるほどー!」と思う本であることは間違いないです。
「勉強になるなあー」とすら感じます(役に立つ日が来るのかどうかは全く別問題として)。
まずは「猶予期間」として当面生きるための生活物資の確保の仕方、次に農業の始め方、日用品や医薬品の作り方、水車、発電、動力、印刷、無線、測量、応用化学などなどいろんなものの作り方や再建の仕方を順番に簡単に説明しています。
犁(すき)、機織、鋳造炉、六分儀などなどの図解がありました。
アルミ缶を自分で拾ってきて溶かして再利用しましょう!
って、この本の解説だけでは専門的な設備を作るのは無理そうですが、「何が必要か」はざっと説明してあるので後はそれを頼りに自分で(インターネットは世界からなくなってるので)図書館や専門機関の廃墟から資料を集めて作っていきましょう、みたいなことは示されています。
私はいろんなものを作るのにアルカリが超重要であることを改めて知りました。
(ドクターストーンでも炭酸カルシウム(石灰=アルカリ)の重要性を説いていましたっけ)
この本があればなんだか、文明崩壊後の残された人類だけでも産業革命とか明治維新みたいなのを手っ取り早く再現できそうな気がしてきます。
いろんな物事の原理とかはもうわかってるんですから。
昔の人の努力や奇跡の偶然によって今の科学文明が成り立っているんだなあーってことを実感して「ありがたやありがたや」って気持ちになる本でした。