河出書房新社 ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳 「ホモ・デウス」の下巻やっと読み終わりました!
読むのが大変な本でした。
難しくてゆっくり少しずつ読まないと頭に入ってきませんでした。
上巻や前作「サピエンス全史」はそんなに「難しい!」「読むの大変!」と思わなかったのですが、この下巻はなんでか難しく感じました。
言葉や文章のひとつひとつは分かりやすくて丁寧なのは変わらないのに、なんでだろ?分かりません。
さて。この本は大まかに言うと、現代の人間社会は「人間至上主義(ヒューマニズム)」の時代であり、そしてその時代はもう終わりつつあって今後は「データ至上主義」の世界になるだろうっていうことが書いてありました。
上巻の感想ブログでも似たようなこと書きましたが、そのときは「人類すごいな」って思ったのが、下巻では「人類たいしたことないな」って印象に逆転してしまいました。
人類、ホモサピエンスはこれまでの歴史で何段階かの革命を起こしてきました。
7万年前の認知革命。これは「サピエンス全史」で詳しく解説されてました。
言葉を話す動物はイルカとかもいますが、ホモサピが彼らと違うのは想像力とか物語とか虚構の概念を持つところ。
1万年前の農業革命。これでホモサピは人口が増えて世界中に進出。
5千年前の文字と通貨の発明。これでホモサピは自分の脳で暗記しきれない情報の処理が可能になりました。
2千年前の(本格的)宗教の始まり。ホモサピは神様(神様を騙る権力者)の奴隷になります。
500年前の科学革命と200年前の産業革命。世界から「神のみぞ知る」ことが無くなっていきます。
そして20世紀ごろに人間至上主義革命。
ホモサピはこれまで「誰と結婚すべきか」とか「戦争を始めるべきか」とかを聖書の教えに従って決めてたのをやめて、自分の心と経済を基準に決めるようになりました。
あー「これこそが人類のあるべき姿だ」、と思いきや。
21世紀にテクノロジーが発達しまくってしまい、まず、「人間に心などない」ということが明らかになってしまいました。
心とか魂なんてものは人体や脳みそのどこを探しても存在せず、あるのはアルゴリズム、脳波のパターンのみ。
そしてもう一つ、コンピューターとネットが処理できる情報の範囲が、文字とか本とかいうレベルをはるかに超越したものすごい状態になってしまいました。
このために、世界から人間の心(人間至上主義)すらも必要なくなりつつあります。
コンピューターが人類を支配するって世界は昔のSFでは超ありきたりな空想の世界です。
手塚治虫の火の鳥とかでも、マザーコンピューターが人類を支配してて結婚相手とかも決めてる世界がありましたし。
でも現在のデータ至上主義はそんなレベルではありません。
この本はめっちゃ説得力のある説明をいろいろとしてくれます。
キンドルが電子書籍の購入履歴から「おすすめの本」を提案してくるみたいな感じで「おすすめの結婚相手」「おすすめの就職先」をすごい精度で最適なのをおすすめしてくれる世界になると。
火の鳥の世界と違うのは、今のコンピューターは脳波を測定すれば「あなたは今喜んでいますね?」とかの感情が筒抜けで、それどころか自分自身が気づいてない趣味嗜好すら正確に測定できてしまうところ。そしてそれらも考慮した上での完璧なおすすめをしてくるところ。
もう個人の内心すらもコンピューターの掌の上です。
しかもそれが全人類、全会社、乗り物、店、動植物……全部何もかもがネットで繋がってる社会になります。
Aさんが起床して出勤時間になるとグーグルの無人の自動運転車が家の前に来てて職場まで送ってくれて、車はそれが終わると次はBさんのところへ行く。
Aさんは体に端末をつけておくと、CさんとセックスしたときとDさんとセックスしたときでは、どっちが気持ちよかったかを正確に数字で評価を示してもらえる。
Aさんの町の人々のツイートに「頭痛」「熱」って単語が増えると「インフルエンザに注意!」と警告してくれる。
Aさんがフェイスブックで何かに「いいね」を押すたびに、Aさんが何を好むか傾向がどんどん正確に把握されていく。
こんな世界、きてますね!今きてます!
それでこの本読んでてちょっと思い出したのが「ゆたぼん」です。
ユーチューバーかなんかのネット活動してる小学生で、「不登校の自由」を主張し行使し、「学校なんか行きたくなければ行かなくていい」「漢字はググればいい」「計算は電卓でやればいい」って言ってる子です。
私はこの子は好きではないし、あまりに極端でまだ当分の間はこういう生き方だと(特に日本では)不幸になる気しかしませんが、でもいつかは全ホモサピこんな感じになっていきそうな気もします。
というか今実際になってます。私も漢字はスマホの変換で調べてばかりだし、計算も電卓ばかりですし。
じゃあもう人類はネット依存のバカになっていくだけなのか?人類たいしたことないのか?
そうでなくする方法は簡単です。
改造しちゃえばいい。
脳波を正確に測定できるってことは、いじくることもできるってことで、特注ヘルメットを被れば頭の特定の位置を電気刺激してくれて、人はその間賢くなったり、うつ病が消えたりします。
「賢くなる薬」「賢くなる手術」「賢くなる遺伝子操作」ならヘルメットすら必要ないです。
それこそがホモ・サピエンスに次ぐ新たなる人類ホモ・デウス!
でもホモデウスになれるのは一部の大金持ちだけです。
99.99%のホモサピはホモデウスに駆逐される運命です。
車の発明で馬車が用済みになったように。
かつてホモサピがネアンデルタール人を絶滅させたように。
で、この本は、「こういう未来になることは避けられないよ」「だから覚悟を決めておきなよ」「避けられないにしてもできることは何かあるかもよ」ってことを全ホモサピに訴えるための本でした。
実際全世界でベストセラーになってて、ホモサピの未来はちょっとは明るくなるかもしれません。
私自身はテクノロジーは進歩しまくってほしいです。
そして再生医療が一般的になって、自分の金属だらけの歯が再生されることが夢です。
そんな程度のしょぼいホモサピです。私は。
あと余談。この本は分かりやすい文章で書いててくれるけど、ひとつだけ全然読めない知らない単語がありました。
掩蔽壕。
えんぺいごう。
防空壕や塹壕の「壕」と、前後の文章から、なんかシェルター的な穴のことかと推測はできるのですが、だったら「シェルター」でいいじゃん!って思いました。
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