横溝正史の「犬神家の一族」読みました。
映画やドラマであまりにも有名な作品の原作小説です。
なので私もあらすじを概ね知ったうえで読んだのですが、それでも面白かった!
ネタバレあり感想。
いやあー、横溝正史って面白いです。
ここ最近ちょくちょく読んでます。
最初はなんとなく「八つ墓村」を気まぐれで読んだだけなんですけど、金田一耕助シリーズどんどん読みたくなってます。
文庫本は不気味なおばさんの絵が表紙でした。
松子おばさまなんでしょうかね。
で、「犬神家」は「八つ墓」と並んで、映像版で有名な作品なわけで、これまで私はどっちもいくつか視聴しました。
(ずっと前のことなのでその記憶はおぼろげですが)
「八つ墓」の原作小説を読んだときは、原作と映像版が全然別物であったことに驚きました。
でも「犬神家」のほうは、原作と数々の映像版はそんなに大きな違いはなかったように思いました。
こっちは結構原作に忠実に映像化されてたのね。
ただ、あの有名な「水面に足だけ出た逆さまの死体」は原作では湖面が凍ったからああなったのであって、映像版の「どうやって逆さまに突き刺さってんの?」感満載なあのビジュアルよりは若干説得力がありました。
ヒロイン(というか主人公)は野々宮珠世!26歳!絶世の美女!
本当にすごい美女らしいですが、作中ではやたらと処女だってことが随所で強調されてます。「純潔」とか「処女の芳香」とか。
というのも彼女は3人(4人)の男達から誰を婿にするかという争奪戦の当事者になるわけで、どうやらそういう「誰のものでもない女」のイメージをより強くするためっぽいです。
「八つ墓」が主人公の男が3人のヒロインに囲まれてたから、ちょうどその逆で乙女ゲーみたいなもんでしょうか。
でもまーこの作品では佐清(すけきよ)以外の男はみんな全然魅力のかけらもないからそんなのに求婚されても珠世さんはちっとも嬉しくありません。
物語そのものは映像版とほぼ同じだったと思います。
それでも退屈せずに楽しめたのは映像版で省略されてた細かい部分が濃密で読み応えがあったからかと。
結末も映像版と同じでした。
真犯人は松子おばさまで、金田一に全てを明らかにされて彼女は服毒自害してしまうと。
で、私がそこで「ん?」となったのが、読む前最初に見た目次です。
エピローグのタイトルは「大団円」とあります。
これって、「八つ墓」もEPタイトルが「大団円」だったんです。
それでその通り(映像版と大きく違い)文句なしのハッピーエンドでした。
だから私はこの「犬神家」でも「大団円とあるからには原作の結末もそれなりのハッピーエンドなのかな」と、読む前に思ったわけです。
でもやっぱり松子おばさま自害しちゃうし「その後」とか何もなくそこでプッツリ完結するし、ちっとも大団円だとは思いませんでした。
うーん、珠世さんは佐清と結ばれるだろうから、ハッピーエンドと言えばそうなのかなあー。
でもかなり苦いものを残した結末でした。
そもそも「大団円」という言葉は、私は「ハッピーエンド」という意味だと解釈してて、もしかしてそれが勘違い?と思って調べてみたのですが、どうも辞書によって違ってて、ハッピーエンドと記してるのもあれば、単に「最後の部分」に過ぎないものと記してるのもあります。
ってことは、タイトルに「大団円」とつけても決しておかしくない、んでしょうかね。
「どこが大団円なんだよ!」と一瞬思いましたが、大団円で間違いないようです。
ひょっとしたら昭和前期ごろでは大団円って単語は単に結末ってニュアンスが大きかったとか。
そういえば「ライバル」という言葉は今は「良き競争相手」みたいな意味合いですが、本来の英語とか昔は単に「敵」ってニュアンスだったって見聞きした記憶があります。
まーそれはどうでもいいとして、犬神家もなかなか満足できた小説でした。
次は何読もうかな!