「増補 へんな毒 すごい毒」 (田中真知著 ちくま文庫)って本読みました。
とにかく「毒」にちなんだいろんなことが書いてある本でした。
科学的な解説とか、人が毒を使った犯罪の事件簿とか、生き物の進化の話とか。
著者の田中真知は名前は「まち」だけど著者近影ではおじさんで、大学教授とか学者じゃなくて、作家らしいです。
毒マニア?
いろいろ勉強になりました。
この世にはいろんな種類の毒薬があって、分類の仕方は主に二つあるそうです。
まずは、自然毒か人口毒か起源で分類する方法があります。
自然毒は、動物毒(ヘビやハチ)、植物毒(トリカブトやキノコ)、微生物毒(O-157やボツリヌス菌)、鉱物毒(カドミウムや水銀)。
人口毒は工業毒(青酸カリや亜ヒ酸)、ガス毒(一酸化炭素やサリン)、その他(農薬や環境ホルモン)。
と、どれも代表格は名だたる猛毒です。
もうひとつは毒が生物に及ぼす作用の仕方によって分類する方法。
神経毒、血液毒、細胞毒。
神経毒は、神経っていうのは例えば筋肉を緊張させる神経物質、逆に弛緩させる物質、またそれらを解除する物質などなどを分泌させて動いてますが、そこに特定の物質が侵入すると、エラーが起きて筋肉がずっと緊張しっぱなしとか逆に弛緩しっぱなしとかで動かなくなって命の危険に至る感じです。
血液毒は、出血毒とも言って、とにかく血液の中に入ったらやばい毒です。
赤血球とか血管とかが物理的に壊れてしまって、その箇所の肉体そのものに深刻なダメージを与えます。
細胞毒は、壊すのが血液毒よりもミクロな感じで細胞膜とかDNAとかを壊しちゃって、ガンとか奇形とかをもたらします。
こわい!
そして例えば鉛は神経毒でもあり血液毒でもあって2属性持ちなのも珍しくありません。
そんな世の中のいろんな毒の科学的解説や犯罪事件などなどがたくさん紹介されてて、こわいもの見たさを満たしてくれる本でした。
中でも「地上最強の毒は何か」って項目が、なんか、漫画のキャラクターの強さランキングみたいで目を引きました。
LD50という毒性の強さを表す指標があって、「半数致死量」という意味なのですが、詳細はややこしいので省略して、とにかくこのLD50の数値が少ないほど強い毒です。
そのランキングの1位が、ボツリヌストキシンAなのだそうです。
LD50は0.0000003。
LD50は低いから脅威だとは限らないものだし、状況や条件で毒の影響なんていろいろ変わるから一概に決められるではないけど、数値があまりにもすごすぎてなんか議論の余地がなく他の毒どもとケタが違う毒性の強さで、最強です!
O-157は0.001で、青酸カリが5っていう。
ボツリヌストキシンAとはA型ボツリヌス菌が吐き出す毒素で、ボツリヌス菌はA型からG型まで7種類いるそうです。
その中でAが最強。
ボツリヌス菌は嫌気性細菌で、酸素がないところで元気になります。
なのでレトルトや缶詰などなどの密封された食品の中にもし混じったときが超やばいと。
対抗策はよく加熱すること。これはO-157やノロウイルスと同じでやっぱり食べ物は加熱処理するのが大事なんですねえー。
体内に侵入したボツリヌス菌がもし毒素を吐き出して(あるいは菌じゃなくて毒素そのものを摂取して)神経細胞に取り込まれてしまうと、超ほんの少しで筋肉が麻痺して呼吸困難になって、致死率もかなり高いです。
1984年のカラシレンコン食中毒事故では被害者47人中11人が死亡しました。
ボツリヌス毒素の恐ろしさがよくわかる本でした!!
この本にはたぶん100種類くらいの毒が紹介されてたけどやっぱり一番目を引いたのは最強の毒ボツリヌスです。